パリダカで世界一の4WD性能とタフさを発揮
世界一過酷なパリダカラリーで世界一の4WD性能とタフさを発揮した三菱パジェロだが、2019年8月を最後に日本での販売を終了する。そのパジェロの最後を飾る特別仕様車「FINAL EDITION」が700台限定で販売された。価格は453万600円(消費税込み)。
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「コロコロ」とも言われる南米の山岳地帯に生息する猫の別名が「PAJERO(パジェロ)」である。岩場の山岳地帯を自在に走り回るその「コロコロ=PAJERO」の様は、まさにパリ-ダカール・ラリーで砂漠や荒野を自在に走り回って何度となく優勝を飾った「三菱パジェロ」と重ね合わせることができる。1980年代に湧き上がった日本でのRVブームの火付け役ともいえる三菱パジェロが、2019年夏を持って日本国内の販売を終了する。平成を彩った「砂漠の王者」の異名を持つRVの元祖「三菱パジェロ」を振り返ってみたい。
パジェロの名をひときわ世界中に知らしめたのは、「世界一過酷なモータースポーツ」といわれた1979年から始まった「パリダカール・ラリー」だ。かつてはフランスのパリを元旦にスタートし、スペインからアフリカにわたり、サハラ砂漠を走りセネガルのダカールでゴールするというラリーレイド競技だ。出場車両のおよそ半分がリタイヤし、怪我人が続出。1986年大会では6人もの死亡事故が起きるほどの過激で過酷なコースレイアウトだったが、それでも世界中から自動車メーカーや冒険家が集い覇を競ったのだ。
三菱が初代パジェロを世に出したのは1982年だったが、実は1973年の東京モーターショーに「ジープ・パジェロ」というネーミングですでに出展されている。1953年からアメリカのウィリス社とライセンス契約し、JEEPの生産をしてオフロード4WD車両のノウハウを得ていた三菱が来たるべくモータリゼーションの開花に向けて作り上げたショーカーだ。
JEEPの雰囲気を残しながらバギーの雰囲気を取り入れカジュアルにしたオフロードモデルに仕上げたが、ネックとなったのはJEEPの名がある以上はウィリス社との契約で「アジア以外の国への輸出禁止」という 足枷(あしかせ)だった。
それでも三菱自動車は諦めることなく、世界を見据えた本格的オフロードモデルの開発に勤しんだ。今度はJEEPをベースにするではなく、ラダーフレームで頑丈なシャシーとボディを持つ小型ボンネットトラックの「フォルテ」をベースにより軽快に仕立てた「PAJEROII」というショーカーを1979年の東京モーターショーに出展させた。そのデザインフォルムは、それから3年後に世に出てくる初代パジェロにかなり近い出で立ちとなっていた。
日本の本格派オフロード車は社員ドライバーで世界一過酷なパリダカへ
満を辞してついに1982年5月に初代パジェロが登場すると、すぐに三菱は「世界一過酷なラリー」であるパリダカール・ラリーの市販車改造クラスに参戦するべくマシンを仕立てた。初参加となる1983年のパリダカール・ラリーでは望外とも言える結果を残した。「市販車無改造T1クラス」で見事にクラス優勝を飾り、総合でも11位という好結果だったのだ。 翌1984年にはクラスを「市販車改造T2クラス」にアップして挑んだが、この年により改造範囲の広い「プロトT3クラス」に参戦したポルシェ911に総合優勝を持ち去られる。そして臨んだリベンジ戦となる85年ではさらに「プロトT3クラス」へとマシンを改造した。
このリベンジ戦は見事に成功し、三菱にとっては総合での1-2フィニッシュ、市販車改造クラス、マラソンクラスの各クラスでもパジェロが優勝する快挙となった。「世界一過酷なラリー」で優勝を飾ったパジェロは「世界一の砂漠走行性能を持つ王者」として世界中にその名を轟かせることとなった。
この結果に気を良くした三菱自動車は、社員ドライバーだった篠塚建次郎を1986年のパリダカ「市販車無改造クラス」にパジェロドライバーとして起用。それに応えて篠塚もクラス3位となり、日本人が乗る日本車パジェロでのパリダカの活躍で「パジェロブーム」が一気に花開く形となった。その篠塚が、「日本人による日本車の総合優勝」を飾ったのは1997年のことだった。そして、もう一人、パジェロには素晴らしい社員ドライバーがいた。
「1982年に22歳で三菱自動車に入社して小僧だった頃からパジェロに携わり、まさに家族や子供のような存在のクルマ」というのは、2002年と2003年にパジェロに乗りダカール・ラリーで総合2連覇の偉業を成し遂げた社員ドライバーの増岡浩さんである。現在は、三菱自動車工業株式会社 経営企画本部/広報部/開発本部/技術管理部チーフエキスパート。
2001年にバギーで出場していたJ・L・シュレッサーの後塵を拝した増岡とパジェロは、リベンジを誓い車両レギュレーションが目まぐるしく変わる難しい状況の中でマシンを作り上げた。増岡とパジェロはスタート間もない序盤から他を圧倒する走りでリードし、盤石の体制で優勝を果たしている。結局、パジェロは「世界一過酷なラリー」であるパリダカール・ラリーで7連覇を遂げ、圧倒的4WD性能とそのタフさを世界中に見せしめた。
「初優勝の時は終盤でミスコースしてその差を縮められて少し焦りましたけど、結果的にはまったく問題ありませんでした」と当時を振り返ってくれた。また日本での販売を終了してしまうパジェロに対しては「パジェロがデビューした当時の日本の道も世界の道もまだ悪い道が多く、乗用車のような乗り心地で快適でありながら本格的な悪路走破性を持つパジェロだから皆さんに可愛がっていただいたのだと思います。もちろんパジェロが日本の道から姿を消すのは寂しいですが、三菱自動車はさらに技術を磨きデリカD5やアウトランダー、エクリプス・クロスなどで最新の技術を感じていただけるようなクルマ作りを続けていきます」と語ってくれた。
三菱自動車が長年JEEPで培った本格的4WD技術を苦悩の末に商品化した「パジェロ」は、その名に恥じない猫のようなしなやかなかつタフな足回りで「コロコロ」と世界中を走り愛された。平成時代を象徴する「砂漠の王者=パジェロ」は、増岡さんがいうように静かにその役目を終えて次代のクルマに引き継がれようとしている。
特別仕様車「FINAL EDITION」はベースモデルより20万円以上お得な価格設定
37年の歴史の幕を閉じるパジェロの最後を飾る特別仕様車「FINAL EDITION(453万600円)」。ベースモデルは、3.2リッター直4ターボディゼルエンジンを搭載するEXCEED(428万2200円)。これにSRSサイドエアバッグ&カーテンエアバッグ、運転席と助手席はパワーシートタイプの本革シート、電動ロングサンルーフ、ルーフレールを標準装備する。
じつは、FINAL EDITIONに追加された装備はメーカーオプションで選ぶことができるパッケージンググで、その金額は43万920円。つまり、特別仕様車FINAL EDITIONとベース車の価格差24万8400円を余裕で超えるお買い得なモデルというわけだ。
さらにFINAL EDITIONには、寒冷地仕様、リヤデフロックと過酷な環境にも対応できる装備も標準化。ボディカラーは、モノトーンのウォームホワイトパール(有料色)、ブラックマイカ、スターリングシルバーメタリック、3way2toneのスターリングシルバーメタリック/アイガーグレーメタリック(有料色)の全4色を設定する。インテリアでは、FINAL EDITIONのロゴ&シリアルナンバーを刻印したイルミネーション付きスカッフプレート、シリアルナンバー入りオリジナルウォッチ、オリジナルステッカーとプレミアム感を高めるアイテムを装備する。
リヤデフレクター(ルーフスポイラー)、スペアタイヤカバー(メッキ)、マッドフラップをセットにした専用ディーラーオプションパッケージも用意。価格は10万7784円(税込み)。これも、通常なら3点で15万2128円と、さらにお得感を出しているのだ。
昭和から平成へと日本を代表するオフローダー「パジェロ」の最後の特別仕様車は、まさにファンの期待を裏切らない充実の内容となっている。ちなみに販売台数は700台だ。
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