一部改良を受けたスバルの「BRZ」に、小川フミオが乗った。誰でも乗りこなせるスポーツカーの最新版とは。
とにかく乗りやすい
“技術による先進”の今──アウディe-tronの可能性を考える
スバルが手がけるBRZは、心躍る操縦性能を、比較的手頃な価格帯で手にいれられるモデルだ。2024年7月に発売された改良版は、スポーツカーとしての性能がより向上。しかもマニュアル変速機が得意なら、たいへんシアワセな気分にしてくれるはず。
BRZは、2387cc水平対向4気筒エンジンに後輪駆動方式を組み合わせ、しかも6段マニュアル変速機(MT)が選べるというオーソドクスな成り立ちを特徴としたスポーツカーだ。初代が2012年に登場して、2021年に現行型にフルモデルチェンジした。
今回のマイナーチェンジの眼目は以下の通りとなる。
・MT車専用SPORTモード追加
・AT車マニュアルダウンシフト制御の許容回転数拡大
・サスペンションダンパーの減衰力特性の最適化(STI Sportを除く)
・電動パワーステアリングのアシスト特性最適化
・アクティブサウンドコントロール音量切替機能の追加(MT車)
・デイタイムランニングライトの採用(Cup Car Basicを除く)
・ウインカーレバーの操作方式変更(ロック式)
「誰もが愉しめる究極のFR(後輪駆動)ピュアスポーツカーを実現」とは、スバルの弁。7月にプロトタイプをサーキットで乗った時、まさにその通りの出来! と、感心したのを、今も鮮烈におぼえている。
今回は、初めて公道で乗った。それで分かったのは、BRZを楽しむには場所を選ばないということだ。乗りやすい。その気になれば、スピードを楽しめる。たいへんフレキシブルで、ドライブフィールは大人っぽい。
やっぱりMT車はイイ!大きな魅力は、ドライブトレインだ。250Nmの最大トルクが3700rpmで発生と、昨今のエンジンにみられる2000rpm以下から4000rpmにわたる広い範囲で最大トルクがでるような設定とは異なり、明確なピークを上のほうの回転域に設定している。つまり、エンジン回転を上げていくと、3700rpmに向かって、トルクがどんどん積み増されていくような加速感が味わえるのだ。
それでいて、MT車に乗って、アイドリングでクラッチをつないでも、ギクシャクもせずクルマはスッーと発進する。そこからゆっくりアクセルペダルを踏んでいくと、息継ぎのようなものもなく、エンジンはレッドゾーン近くまでスムーズに回っていく。素晴らしい感覚だ。
スポーツモデルだけあって、マニュアル変速機のギヤ比は接近しているので、シフトワークは楽。短いトラベルのギヤを操作してシフトアップ、あるいはシフトダウンするとき、やっぱりMT車はイイ! と、嬉しくて声が出そうになる。
今回、改良の眼目のスポーツモードは、センターコンソールのボタンで操作する。オンにすると、エンジン回転が上がり気味になり、トルクバンドの太いところを使って、アクセルペダルの踏み込みに対して、よりすばやい加速をするようになる。破裂するような小気味よい排気音というオマケがついてくるのもよい。
2.4リッターエンジンのトルクが太いので、ギヤチェンジは多少さぼっても、ギクシャクしない。それもあって、市街地でも扱いやすい。私は個人的に、トルクが細いエンジンとMTの組合せ(による運転しにくさ)が好みだが、BRZは万人に受け入れられる上手な設定だ。
今回試乗したSTIスポーツは、サスペンションダンパーに変更はないとのことだが、基本的に良いセッティングだ。高速道路での揺れは抑えられているし、カーブを曲がるときの車体の安定性も高い。スプリングは硬めで、そこはスポーツカーだが、突き上げなどで不快感をおぼえることはなかった。
ボディは、誰がみてもスポーツカーとわかるクーペスタイルで、そこはいいけれど、惜しいのは内装のデザインだ。シートを含めて機能性は高いのだけれど、“味”にやや乏しいと感じてしまう。
¥3,322,000から買えるクルマであまり贅沢は言えないけれど(試乗したSTIスポーツは¥3,784,000)、あるいは、もっとレースカーのように機能的なデザインに徹してみるとか、独自の質感の追求をしてほしかった。大人が乗れるスポーツカーだけに、そこだけが残念だと、夜の東京を走っていて、私はそう思った。
文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)
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みんなのコメント
↑変更があるグレードを何故選ばない?
MC前後の違いを伝える気が無いのね
せめてレンタカーでも良いから乗ってみたいです。