流麗でスタイリッシュ、スポーツカーを思わせるメリハリのある造形――。先日発表された、トヨタのクーペ風クロスオーバーSUV「新型ハリアー」。
今後は、RAV4と並び、トヨタ製SUVの2枚看板の一つとして、間違いなくヒットするだろう。
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クーペ風SUVといえば、日産に「ムラーノ」というクルマがあったのを覚えているだろうか。国内市場では2015年に2代目で終了となってしまったが、現在も3代目ムラーノが北米にて販売継続されている。
高級クロスオーバーSUVジャンルにおいて、ハリアーに対抗できる日本車は、このムラーノしかない。
新型ハリアーが注目を集め、クーペ風クロスオーバーSUV界が盛り上がっているこのタイミングで、もし、ムラーノが国内に再投入されたら、エクストレイルと共に、トヨタの強靭な2枚看板に一矢報いることができるのではないだろうか。
文:吉川賢一、写真:日産、トヨタ
【画像ギャラリー】北米にて発売している3代目ムラーノをみる
なぜムラーノは2代目で終了となったのか?
初代ムラーノ(2004年)
「ムラーノ」は、ティアナにも使われていたFF-Lプラットフォームを使用した高級SUVだ。2002年から主戦場の北米で販売されていたが、そのデザインの良さに、国内市場から販売熱望の声が上がり、2004年に日本でも発売となった。
伸びやかな「モダンアートデザイン」のコンセプトは、2代目「Z51ムラーノ」(2008年~2015年)、3代目「Z52ムラーノ」(2015~)へも引き継がれている。
現行ムラーノ(2020年・北米モデル)
現行であるZ52型は、北米のみならず中国やロシアなどで、「NISSANのスタイリッシュなSUV」として、世界的に認知されており、今なお好評を得ている。
初代ムラーノが北米市場でヒットしたことから、2代目では、北米での需要により合わせるため、ボディサイズが一回り大きくされた。
背高のSUVだったが、フロントのデザインがスラント形状であったため、クルマの4隅の見切りが悪く、狭い日本国内の道路事情では、若干運転がしづらく、万人向けではなかった。
表1.ムラーノとハリアーのボディサイズ
それに加えて、燃費の悪さも致命的であった。ムラーノは当初、北米向けのみのSUVであったため、アメリカ人が求める、ピックアップ(加速)の良い大排気量エンジンが必要で、パワフルな3.5リットルV6ガソリンエンジンが搭載された。
日本市場には、2.5リットル直4ガソリンエンジンも導入されたが、1.6トンを超えるムラーノのエンジンとしてはやや非力で、その分アクセルを踏み込んでしまうため、燃費はよろしくなかった。
ちなみにハリアーは2005年からハイブリッドモデルを導入しており、2トン近い車重を感じさせない動力性能と、低燃費(10・15モード燃費17.8km/L)を両立していた。
2代目ムラーノ(2008年)。2015年、国内生産終了した。
ボディサイズと燃費、この2つが影響し、販売台数は徐々に伸び悩んでいった。そして、2015年、2代目「ムラーノ」生産終了をもって、国内市場からは姿を消すことになってしまったのだ。
3代目ムラーノを国内導入したらいけるのか?
日産デザインの特徴であるVグリルを採用。ド派手なフロントデザインである。
現在北米で販売されている、Z52型ムラーノのエクステリアデザインは、LEDのデイライトを仕込んだブーメラン型ヘッドライトや、大きなVシェイプのグリルなどによって、ド派手なフェイスとなっており、サイドも流麗なウィンドウグラフィックが功を奏しており、なかなかスタイリッシュでかっこいい。
バンパー下部から、サイド、リアにまで回り込むアルミ調の加飾や、18インチもしくは20インチの大径タイヤホイールも、ムラーノの厳つさとシャープさを、一層引き立てている。
インテリアも豪華だ。木目調パネルの採用や、本革シートを備え、大き目のシートに座るだけでおおらかな気分になるだろう。車幅が1900ミリを超えているおかげで、左右席の間の余裕もあり、後席も非常に広い。
落ち着きのあるインテリアが特徴。(写真は現行ムラーノ/2019年モデル)
ナビゲーションシステムのサイズやデザインは多少時代遅れを感じるが、Apple Car playやAndroid Autoは標準装備となる。エンジンはパワフルな3.5L V6エンジンで、FFと4WDが選択できる。
これまでの日産SUVの中でもトップクラスの美しいデザインを持つ3代目ムラーノは、「日本市場でもいける!!」と言いたいところなのだが、2代目の敗退理由となった「ボディサイズ」「燃費」のいずれか1つでも解消されないことには、デザイン一本勝負だけでは、どうにもならない。
■まとめ
ハリアーが3代目(60系)へとモデルチェンジした際、海外市場からの需要で大型化が望まれていたRXと決別し、国内向けにサイズ縮小したことは、ハリアーが国内市場で生き残れた理由のひとつだと筆者は考えている。
クルマは肥大化すれば万事良いわけでは全くない。4代目となる新型ハリアーのボディサイズも、国内市場のことを優先的に考え、全幅1855ミリ程度に抑えており、さすがはトヨタと言わざるを得ない。
2020年4月、トヨタは新型(4代目)ハリアーが発表した。
トヨタほどリソースがない日産の場合、北米市場に向けたムラーノと、国内向けのムラーノのボディを作り変えることは、到底できないだろう。
もし、このデザインのままで全体スケールを5パーセントほど小さくし、全幅が1850ミリ程度になれば、ムラーノが国内でもヒットする可能性は、十分にあったのではないか、と考えると残念でならない。
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