マクラーレン、新風洞建設の効果は空力だけに非ず！ 効率向上で「人員獲得もできた」と明かす

　マクラーレンF1は自社で保有する風洞設備の建設を進め、今年ようやく完成に至った。まだ本格的な稼働は始まっていないものの、彼らはこの設備投資によって長期的には費用対効果が高まると考えている。

　これまでマクラーレンはドイツ・ケルンに位置するToyota Gazoo Racingの風洞施設をレンタルする形で空力テストを実施してきた。しかしイギリスに拠点を置くマクラーレンとしては、ドイツへのテスト部品の搬入という手間がかかることで、マシンの開発速度に影響が及んでしまうこともあった。

　そして上位への返り咲きを狙うマクラーレンは、2019年に前代表アンドレアス・ザイドルのもと、最新の風洞設備やシミュレータ、新しい製造設備などを導入することを決断。前述の通り、風洞は今年になりようやく完成したところだ。

　なおマクラーレンは今年、そうした設備投資以外にも技術部門を刷新。レッドブルのロブ・マーシャル、フェラーリのデビッド・サンチェスといった有力なエンジニアを筆頭に、人材面でも多額の投資を行なった。

　マクラーレンのザク・ブラウンCEOはこういった投資について、F1の予算制限内に収めるために“厳しい決断”を迫られたことを認めつつも、長期的にはチームの新施設が費用対効果をより高めてくれるだろうと語った。

「我々の支出にはいくつか非効率なモノがあった」

　ブラウンCEOは最近の組織に対する投資について訊かれた際、そう答えた。

「我々は自前の風洞を運用していないため、設備を借りて使用していた。そのため、自分たちで運用するよりも多くのコストを支払っていた」

「いくつか厳しい決断を下さねばならなかったが、いくつかの新しいテクノロジーが稼働を開始することで、実際にコスト効率が向上し、非効率だった支出の一部を追加の人員獲得に充てることができた」

　なお前述のようにこれらの設備は本格稼働しておらず、投資の効果はまだマシンにあらわれていない。しかしオーストリアGPから大型アップデートを投入し始めたマクラーレンは、一気に戦闘力を向上させ、続くイギリスGPではランド・ノリスが2位を獲得する好結果を持ち帰った。

　今週末行なわれるハンガリーGPでもさらなるアップデートが行なわれる予定だが、ブラウンCEOはチームの技術部門の刷新を行なったアンドレア・ステラ現代表の手腕を称賛している。

「素晴らしい人材だ」と、ブラウンCEOはSky Sports F1に語った。

「彼は今年始めに代表を継ぐと、我々が抱えている問題を認識し、技術部門の再構築を行ない、内部で人材を登用してきた」

「なぜならまだ我々の雇った大物はまだ加入できていないからだ。そのため、これはアンドレアのリーダーシップのもとで行なわれてきた仕事なんだ」