かつては憧れの象徴だった「ナナハン」も今では中間排気量、ミドルクラスとなってしまった。それでも、ミドルクラスの良さを徹底的に伸ばしたモデルがある。それがNC750シリーズ!
※月刊オートバイ2019年9月号掲載「現行車再検証」より
ツーリングを最優先にしたNCのパッケージ
ちょっと仕事もひと段落、お父さんは天気もよくなりそうな次の日曜に、ちょっとゆっくりツーリングでもしてこようか、とコソコソ準備を始めている。
【250ccスポーツバイク比較検証】Ninja ZX-25R・CBR250RR・YZF-R25・Ninja250・GSX250R
「あれ? どこ行くの」
ヤバい、カミさんだ。——ち、ちょっと日曜に出かけてこようかな、って。だ…だめ?
「ふーん、いいんじゃない?」
これがコワい。きちんとナニナニがあるから出かけないでよ、って言われたほうがどれだけマシか。さりとて、一緒に行く? と水を向けても、そうそうタンデムは好きじゃないし。
「日曜は買い物いかなきゃだし、マーくんのおむつだってなくなるから買い足してこないと。いいよねー、パパはバイクで出かけるだってさー」
マーくん1歳、まだ言葉わからんだろうに、わりと大きな声で、こちらにしっかり聞こえる声量で言ってくれる。ここは父の威厳でビシッと言わねば!
「ま、ツーリングはいつでもいいよ。日曜、買い物どこ行く?ヨーカドーにする? おむつはアカチャン本舗かな」
よ、ヨワい。これはフィクションです。私の妻はそんなこと言わない……んじゃないかな。
けれど、こんな危険性は、どこの誰でも持っているんじゃないかな、と思う。なにも妻の無言の圧力でなくとも、子どもの遊びに行こうよ攻撃かもしれないし、町内会の清掃日かも、行きたくもない付き合いゴルフかもしれない、たまの休みにはゆっくり体を休めたいかもしれない。
少なくとも妻や家族の怒りを収めるのはおみやげだ。妻は、家族は、特に食べ物にヨワい。せっかく出かけるんだから地元の名物でも買ってくるか、って言ったって、ナントカ銘菓とか、なんとか饅頭なんてハコ詰めのおみやげは、なかなか人気がない。
とはいえ海沿いの町で美味しそうな干物があったって、これデイパックにしまって帰るわけにもいかないしなぁ。サービスエリアでリアシートにくくりつけやすいのもハコものだし。
次の日曜は、北関東のほうでもぐるっと回ってこようと思ってたんだよなぁ。茨城、群馬は今の時期スイカが美味いんだけど、スイカなんか、バイクに積めない最たるものじゃないか。
スクーターだったらメットインスペースがあるけど、スズキアクロス250はもう古いし、アプリリア・マーナ850ももう売ってない、ホンダNS1って原付だったし……。
そんなお父さん、NC750シリーズがありますよ! 現行モデル唯一の、メットインスペースを備えたスポーツバイク。もちろん、メットインだけじゃなくても、いまNC750シリーズの「目標設定」が再確認されているのだ。
エンジン、車体とも徹底的にツーリングに振ったパッケージ、スポーツ性よりも快適さを最優先し、荷物の積みやすさ、そして驚異の好燃費! おサイフにも優しいとは、うちの山の神も納得してくれるに違いない!
「今度の日曜、ちょっと伊豆いってサカナでも買ってくるよ」
そんなツーリング、いいなぁ。
10年後のバイクづくりが、10年たってわかり始めた
NC750Xの前身のNC700Xは、ホンダのオートバイづくりの中でも、かなり「異質」なモデルだった。
ホンダのスポーツバイクと言えば、大なり小なり、まずは「スポーツ性」ありき。けれどNCは、登場時の2010年に、当時の10年後のモデル作りを提言する「2020年ビジョン」を発表。
それが「いい商品をより早く、安価で省エネルギーでお届けする」というもの。もちろん、スポーツ性をないがしろにするわけではなく、こっちの方向性もあるんじゃない、というトライだった。
ヨーロッパを中心にミドルクラス以上のユーザーの用途を調査してみると「速度域は140km/hが90%、回転数は6000回転が80%」というものだった。これを日本で当てはめれば「100km/hが90%、回転数は使っても6000回転」といったところだろう。
それがNC700シリーズ。その2年後に発売されたNC750シリーズは670ccだった排気量を745ccに拡大し、出力こそ4PSアップにとどまったが、NC700よりも常用回転数が少し上がって、すごく好ましいエンジンに仕上がっていた。
排気量アップの分だけ低回転域のトルクも厚くなって、アクセルの開け方ひとつできびきび走っても、のんびり走るにも気持ちがいい。
今回はDCT仕様に乗ったんだけれど、「普通走り」のDモードだと、どのギアでもいつも2000回転台を使っていて、3000回転を境にシフトアップする感じ。6速3000回転でちょうど100km/hでクルージングできる。
高速道路を100km/h目安に走るのがこんなに気持ちのいいオートバイ、そうはない!
もっとほかのモデルにも収納スペースが欲しい!
NC750Xの並列2気筒エンジンは、低回転域からドロドロッと回るフィーリングがあって、特に今回のDCT仕様は、キビキビ走りたいときはスロットルを開度を大きめに早く操作、のんびり走りたいときにはゆっくり開けるように走ると、その通りにパワーを取り出すことができる。
ハンドリングは安定性をベースにしたもので、決してクイックじゃない、もちろん鈍重でもない。サスペンションの動きもしっとり穏やかで、路面に張り付くように走る——やっぱりツーリングが楽しい!
そしてNCには、圧倒的な魅力がひとつ。それが、通常のタンクの位置にある収納スペース、俗にいうメットインだ。
ちょいとデイパックを背負ってのお出かけでも、走っているときは荷物を放り込んでおけるし、目的地に着いたら荷物を出して、かわりにヘルメットをしまう——こんなにストレスフリーなお出かけができる!
さらにライバルを圧倒的にリードする好燃費は、ライバルの範疇に入るVツイン650の2割増し、並列ツイン700の5割増し、並列3気筒900の4割増し——このライバルたちだって決して燃費悪くないのに、NCは歴代750ccモデルでも明らかに燃費がいい!
決して目立たないけれど、長く付き合えそうな、オトナのオートバイ。10年前にホンダが語った「近未来のバイク」は、なんとも好ましいものだった。
文:中村浩史/写真:島村栄二
ホンダ「NC750X Dual Clutch Transmission」「NC750X」主なスペックと価格
[全長×全幅×全高]2215×845×1320mm
[ホイールベース]1520mm
[シート高]800mm
[車両重量]231kg/221kg(MT)
[エンジン]水冷4ストローク並列2気筒SOHC4バルブ
[ボア×ストローク]77×80mm
[排気量]745cc
[最高出力]54PS/6250rpm
[最大トルク]6.9kg-m/4750rpm
[燃料タンク容量]14L
[変速機形式]電子式DCT/6速リターン(MT)
[キャスター角]27°
[トレール量]110mm
[タイヤ前・後]120/70ZR17・160/60ZR17
[価格(消費税10%込)]96万8000円(DCT)/90万900円(MT)
ホンダ「NC750X Dual Clutch Transmission」の各部をチェック
クロスオーバーXとスポーツS、さらに現行X-ADVの元祖ともいえるインテグラと共同開発で誕生したNCシリーズ。「ニューミッドコンセプト」と称した、シティーランやツーリングをターゲットにしたモデルで、シリーズ専用設計の水冷パラツインエンジンを搭載。特徴的なエンジン、ヘルメット収納機能も備えた、イマ風スタンダードモデルだ。
DCT車は右にD/Sモードとマニュアル切替スイッチ、左にマニュアル変速の+/-ボタンがある。左ミラー根本のスイッチはトラクションコントロール用スイッチ。
### 今回の試乗距離は、約500km。平均燃費は31.5km/Lでした!
今回の取材では、一般道、高速道路を組み合わせた約500kmを走行。燃料補給は2回、走行約500kmでレギュラーガソリンを約16Lでした。
750ccで、さして燃費走行もしていないケースで、この好燃費はなかなか経験がありません! 先代の700ccエンジン時代は、省燃費のコンパクトカー、ホンダ・フィットと同じ73×80mmのボア×ストロークを採用していたのです。
文:中村浩史/写真:島村栄二
[ アルバム : ホンダ NC750X はオリジナルサイトでご覧ください ]
中村浩史の長距離試乗インプレ【現行車再検証】
複数社の査定額を比較して愛車の最高額を調べよう!
愛車を賢く売却して、購入資金にしませんか?
複数社の査定額を比較して愛車の最高額を調べよう!
愛車を賢く売却して、購入資金にしませんか?
愛車管理はマイカーページで!
登録してお得なクーポンを獲得しよう
日産「新型スカイライン」今夏発売! 史上最強でレトロ風デザイン採用!? 匠“手組みエンジン”搭載した特別仕様、947万円から
トヨタ「新型ミニランクル」まもなく登場!? カクカク斬新デザイン採用? 噂の「ランドクルーザーFJ」 期待されるコトとは
約230万円! トヨタ新型「スポーツコンパクトカー」発表! 6速MTのみの「“ガチガチ”モデル」に販売店でも反響アリ
新車価格は衝撃の63万円!!! 気分は[日本一速い男] 日産チェリーの正体とは?
京都~奈良~和歌山直結「京奈和道」最後の”ブツ切れ区間”どうなった!? 橋桁ニョキニョキ進行中&壮大な「地下トンネル」の計画とは
みんなのコメント