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基本メンテナンスで100年間! HEツーリッター・スポーツ(2) 1924年を感じさせない製造品質

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基本メンテナンスで100年間! HEツーリッター・スポーツ(2) 1924年を感じさせない製造品質

基本的なメンテナンスで100年間維持

1923年頃から、HE社は経営が悪化。トラックやバスを製造していたソーニークロフト社によって、工場の一部が買収される。

【画像】100年前を感じさせない製造品質 HEツーリッター・スポーツ 同時期のクラシックたち 全127枚

一時的にクルマの生産はストップするが、新たな資金を得て1925年に再開。しかし、6気筒エンジンの新モデルを開発していた1929年に、事業の清算へ追い込まれた。

アメリカの株価暴落、ウォール街大暴落の影響は大きく、ソーニークロフト社が別の工場も取得。HE社は1931年に廃業し、創業者のマートンは1950年にこの世を去った。

短命に終わったブランドだったが、HEツーリッターは生き証人として21世紀の道を走っている。現存する4気筒エンジンのHEは、7台だけだと考えられている。

基本的なメンテナンスだけで、100年も状態を保ててきたという事実は、歴代オーナーがクルマを良く理解していたことの証だろう。可能な限り優れた操縦性を得ようという、過去の努力も見られる。

新車で購入したケネス・ベイリー氏は、ダンパーだけでなく、四輪ブレーキへのアップグレードも要求している。当時は安定性を乱すと考えられていた技術だったが、ブレーキペダルを踏むと、前後のドラムが制動力を生むシステムを備える。

しかし現代のものと異なり、ドラムの直径はリアの方が大きい。フロント側のドラム内では、ロッドとギアを介してシューが動く。開発初期の技術といえるだろう。

1924年とほぼ変わらぬ姿 アクセルは中央

2代目のオーナーは、ジョン・ミルナー氏。1947年に購入し、1959年から1960年にかけて、エンジンのオーバーホールが実施されている。メインベアリングとクランクジャーナルの補修や、フライホイールの軽量化などが実施されたようだ。

ボディは25年前にブラックで再塗装されたが、それ以外、ミルナーは1924年当時の見た目を保った。その後、ツーリッターを購入したのがニール・ゴフ氏。驚くことに、彼が歴代で3オーナー目らしい。

スポーツツーリング 3シーターというボディスタイルの通り、定員は2+1の3名。フォルムはリアへ向けて細く絞られ、フロントシートの後方に、荷室にも使える空間が用意されている。

ハンドブレーキ・レバーがボディ側面にあるため、乗り降りしやすいのは助手席側。フロアの位置はかなり高く、中央がアクセルのペダルは目視できない。

ステアリングホイールは、大径で4スポーク。その中央に、点火タイミングとスロットルの凝った調整機構が組まれている。

木製のダッシュボードには、時速80マイル(約128km/h)までの速度と、3000rpmまでの回転、油圧、水温、充電量のメーター。時計もある。2枚貼られたプレートの1枚は、3030という製造番号。もう一方は、新車で販売したディーラーの銘版だ。

年式を感じさせない製造品質と滑らかさ

イグニッションをオンにし、スターターのボタンを押す。エンジンはすぐに目覚め、太いエグゾーストパイプから低い燃焼音が響き出す。ベントレー 3リッターのサウンドに、近いといえなくもない。

トランスミッションは、100年前の機械だと考えれば操作が楽しい。クラッチペダルは信じられないほど軽く、ミートポイントを掴みにくいが、ダブルクラッチを挟めば変速は滑らか。シフトレバーの位置が悪く、3速と4速では内装に手が挟まれそうになる。

当時のHE社は、ツーリッターを「羽ばたく鳥のように素早い」と表現した。現代の水準では速いといえないものの、80km/hでの巡航は予想以上に快適。トルクは太く、勾配に差し掛かっても速度を保てる。

エンジンは、回転を引っ張ると心地良いサウンドを放ち始める。だが、トランスミッションのギアノイズが隠しがち。ブレーキは効きが弱い。かなり踏み込まないと、満足できる制動力は得られない。この辺りは、当時のベントレーに及ばないだろう。

ステアリングホイールは軽く回せる。旧式なウォーム&ナット式のラックは、適度なレシオで、遊びは大きいが予測しやすい。フロントアクスルの安定性は低いとはいえ、1世紀も前のクラシックカーを運転することは大きな喜びだ。

製造品質の高さや、滑らかな各部の動きなどは、むしろ年式を感じさせないほど。5年間保証というサービスも、HE社にとっては無理のある内容ではなかったのかもしれない。技術力の高さに、唸ってしまった。

HEツーリッター・スポーツ(1922~1925年/英国仕様)

英国価格:595ポンド(新車時)/12万5000ポンド(約2438万円/現在)以下
生産数:−台
全長:4114mm
全幅:1626mm
全高:−mm
最高速度:104km/h(予想)
0-97km/h加速:−秒
燃費:7.8-8.5km/L(予想)
CO2排出量:−g/km
車両重量:−kg
パワートレイン:直列4気筒1982cc 自然吸気サイドバルブ
使用燃料:ガソリン
最高出力:13ps
最大トルク:−kg-m
ギアボックス:4速マニュアル(後輪駆動)

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みんなのコメント

1件
  • mayrin0103
    馬車にエンジンを積んだような車だよね。軽いし走りも期待できるんだろうが、安全性に懸念が残る。それに高すぎる。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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