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松田次生との接近戦、真後ろでクラッシュを目撃した山本尚貴「目に焼き付いていて、レース後は震えていました」

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松田次生との接近戦、真後ろでクラッシュを目撃した山本尚貴「目に焼き付いていて、レース後は震えていました」

 スーパーGT第3戦鈴鹿、予選3番手からスタートした100号車STANLEY NSX-GTはレース序盤はピックアップなどの影響でペースが上がらず順位を下げたが、中盤以降にペースが戻り、4位~6位を争う展開に。レース終盤にステアリングを握った山本尚貴は、前を行く23号車MOTUL AUTECH Zの松田次生と1秒を切る接戦に。そして60周目のシケインでアクシデントは起きた。23号車のクラッシュを、真後ろで目撃し続けた山本。レース後に話を聞いた。

「ピットに入って出るたびに順位を下げていた状況でした。タイミングが悪くて、前のクルマの後ろに入ってしまった理していましたね」と、レース中盤戦を振り返る100号車山本尚貴。それでも、第3スティントで装着したソフトタイヤが奏功してペースがよくなると、4番手の1号車MARELLI IMPUL Z、そして5番手の23号車松田次生をプッシュし始めた。

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「前の2台はペース的にキツそうだったので、タラレバになりますが、ペースだけで言ったら前に出られるチャンスは十分にあったと思いますし、後半は一番速かったんじゃないかなと思います」

 57周目から23号車松田と100号車山本は1秒を切る接近戦となった。

「前の松田選手はかなり焦っている感じがありました。毎周ヘアピンでブレーキロックしていましたし、それを続けているのだったら、そのうち刺せるだろうとは思っていました」

 そして接近戦が続いた60周目、アクシデントが発生してしまった。

「松田選手はキツそうだったので、僕が後ろからプレッシャーをかけ続けていれば何か起こるだろうなとは思っていましたけど……それがああいう結果に繋がったと思うと、自分の予感が変に的中してしまった。もちろんあんな結果を臨んでいたわけではないので……。ただ、後ろから見ていて、かなり焦っているようには見えていました」

 クラッシュした時の状況をさらに詳しく聞いた。

「アクシデントの状況は真後ろから見えていました。87号車Bamboo Airways Lamborghini GT3と30号車apr GR86 GTが2台で争っているなかで、130Rを立ち上がったところで真ん中に30号車、右側に87号車で並走していました。松田選手は130Rのイン側、シケインの外側から追い抜こうとしていて、左にまだ余裕があるように見えた中で、右側に寄った感じがあるのと、GT300の2台はどこにも逃げ場がない状態でした」

「そこでGT500の方が加速がいいので、その2台のGT300の前に出たところで23号車のリヤと30号車のフロントが引っかかった形になりました。いろいろ不運が重なって、タイミングが悪くてクラッシュしてしまって……本当、目の前でその一部始終が目に焼き付いていて、ショックが大きいです。改めて危険な中でレースという仕事をしているのだなと思いました」

 ベテランの山本にとっても、衝撃的なクラッシュだった。

「すべてがコマ送りで全部記憶に残っていて、レースが終わった直後は体が震えていました。自分が今まで見てきたアクシデントの中でも大きなインパクトでした」

 それでも、クラッシュの瞬間は冷静に状況が見え、その中でいくつもの選択を考えながら山本は自分のマシンをなんとかコントロールした。

「クラッシュがあった瞬間、自分が急減速するのも逆に危ないなと。後ろからもクルマは来ていたので、自分がわかって減速したところで後ろから突っ込まれる可能性がある」

「そう考えながら、ずっと23号車だけを見ている状態で、ゆっくりと飛んでいくのを見ていて、このままキャッチフェンスにぶつかって跳ね返ってきたら、そのあとどこに戻って来るのかなと考えると、逆に減速しちゃうと自分の方に落ちてくる可能性があるから、申し訳ないけど先に行くしかないと思って行ったら、クルマには当たらなかったんですけど、クルマから外れたタイヤが前の方の自分の方に飛んできました」

「そのタイヤが自分のどこに当たるのかずっと見続けて、そして87号車も目の前でスピンして来たので、その両方を見ながら、自分のエンジンだけは守りたいと思って、自分のルーフに当たりました。その判断が少し遅かったら、ボンネットのエンジンに当たっていたかもしれないし、早すぎたらリヤウイングに当たっていたかもしれない。結果として一番最小限のダメージとのところに当たりました。あれが自分の精一杯でしたし、あの程度で済んで良かったなと思います」

 一難をくぐり抜けた山本だったが、辛かったのは翌周だった。

「バラバラになっていたのは途中まで見ていたので、次の周は同じところを通りたくなかったです。でも、修復とか懸命に救護している姿が見えてしまって、無傷でいるのは難しいと思える状況だったので、命だけは助かってほしいと思いました。松田選手の傷がどの程度なのかわかりませんが、意識があるとのことですので、それが救いですね」

 今回のクラッシュを受けて、山本は新ためて自分に言い聞かせるように話した。

「クルマが速くなっている割には、サーキットが広くなっているわけではないですし、クルマの速度を落としたから安全になるかというと、そういうわけでもない。ドライバーの意識だけで変えられるわけではないですけど、いくらクルマの安全性が高くなったからと言って、事故が起こらないわけではないので、そこは改めてドライバーがひとりひとり意識し合って、安全を心がけてやっていくしかないのかなと思います」

 100号車STANLEY NSX-GTは5位でチェッカーを受けたが、山本に笑顔はなかった。ドクターヘリで病院に運ばれた松田次生は精密検査でも外傷が見られず、意識もしっかりしていることがニスモのSNSで伝えられた。

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