アルピーヌA110の登場で注目度が上昇
text:John Evans(ジョン・エバンス)
【画像】フレンチスポーツ アルピーヌGTA(V6ターボ)とA610 最新のA110も 全50枚
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
アルピーヌGTA(V6ターボ)と、後継モデルのA610をご記憶の読者はいるだろうか。悪くないスポーツ・クーペだったが、アルピーヌというブランドは当時充分に浸透していなかった。1995年にA610の生産を終えると、アルピーヌも静かに明かりを消した。
しかし、強い輝きを放つアルピーヌA110が2017年に登場。今ではルーノーF1チームの名称になるほど、アルピーヌは存在感を強めている。
そんな背景もあって、クルマ好きは再び古いアルピーヌにも目を向け始めた。かつての高性能クーペが、再び話題に登るようになってきた。
アルピーヌGTA、日本ではV6ターボと呼ばれたクーペが産声を上げたのは1984年。英国へは1986年にやってきた。アウトリガー付きのスチール製バックボーン・シャシーに、プラスティックとグラスファイバー製のボディが載っている。
車重は1140kgと軽量で、V6エンジンをリアにマウント。エンジンは、欧州では160psの自然吸気2.9Lと、200psの2.5Lターボが選択できた。
ターボユニットなら、0-100km/h加速は7.0秒。トランスミッションは5速MTだったが、ターボのギア比は4速と5速でわずかに高められている。
ちなみに2.9Lのキャブレターは、複雑な構造のソレックス。滑らかに燃料供給を行なうには、バキュームホースの難しい調整が必要となる。そのため、ホーリー社製キャブに載せ替えられるケースも多かった。
珍しいル・マンと後継モデルのA610
巧みなフロントノーズの処理で、GTAの空気抵抗は非常に優秀。一方でプラスティック製のカウルを介してラジエターに空気を送る構造は、少々冷却効率が悪い。
一部のオーナーはカウルの重要性に気づかず、破損したまま走行しオーバーヒートを招くこともあったようだ。中古車を探す場合、カウルがちゃんと残っているか確認したい。
1990年には、ターボ版をベースに特別仕様のル・マンが登場。ワイドなボディにBBS風のメッシュホイールを履き、スポーティさを高めている。右ハンドル車が製造されたのは26台のみで、近年では特に人気が高い。
英国の場合、レストアが必要な状態でも1万5000ポンド(225万円)位はする。状態が良ければ3万5000ポンド(525万円)近くに達するが、そもそもなかなか出てこない。
GTAの後継モデルとして1991年に登場したのがA610。デザインはGTAと似ているものの、同じ形状なのは窓ガラスのみだった。
メカニズム的にはキャリーオーバーで、エンジンはGTAと同じ2.9LのV6自然吸気ユニットがベース。排気量を3.0Lに拡大し、ターボをドッキングすることで250psを獲得した。おかげで0-100km/h加速時間は5.9秒を刻んでいる。
英国の場合、熱心なファンはA610よりGTAの方を支持する傾向が高い。車重は重く、ABSや電動パワーステアリングなどを備え、構造も複雑だからだろう。ただし作りは良く、洗練性も高められており、快適に運転できる。
ボディや内装の部品は入手困難
A610は欧州で多く売れるかと思いきや、英国のドライバーへ渡った右ハンドル車は68台だけ。GTA以上に希少性が高いクルマといえる。
魅力的に感じられるアルピーヌGTAとA610だが、部品供給が悩みのタネ。メカニズム関係はルノー製のモデルと共有しておりパーツも比較的見つけやすいが、ボディや内装関係は難しい。
テールライトは部品が出てこないと考えた方が良いだろう。仮にあっても、驚くほど高いようだ。
もし中古車を探すなら、状態の良いGTAかA610を選ぶべき理由でもある。ボディがくたびれた掘り出し物を見つけても、結局は修理や部品交換で同等以上のコストが必要になってしまう。
不具合を起こしやすいポイント
ボディとシャシー
シャシーのサビは深刻な問題になりがちだが、グラスファイバー製のボディでわかりにくい。サブフレームやアウトリガー、サイドシル、クロスメンバーなどは確認ポイント。シャシーにはカーボンファイバー製のパネルが接着され、修理や溶接に手間がかかる。
GTAの場合はドアを開いてゆすり、ガタがないか確かめる。良ければヒンジピンの交換で済むが、ひどい場合はスチール製のAピラーが傷んでいることも。ガラス製のテールゲートは、熱でヒビが入ることがある。
エンジン
2.5Lのターボでは、排気ガスに白煙が混ざっていないか、ディストリビューターの動作が正常かを確かめたい。デスビは、ボッシュ社製のローターアームとキャップに交換するのも一手。
V6エンジンはウェットライナーやシール系の問題を抱えやすい。その結果、深刻なヘッドガスケットの不具合につながることも。A610では、冷間時にピストンの動作音を確認する。過度にうるさい場合はリビルドの必要性が出てくる。
冷却系
バックボーン・フレーム内を走るクーラントパイプは、両端が錆びやすい。ラジエター中間にあるパイプは詰まる場合がある。ラジエターに空気を送るスクープの位置が正しく、電動ファンが正常に動作するかも確認したい。
トランスミッション
ルノー製のUN1と呼ばれる5速MTは堅牢ながら、エンジンと同等にフルード交換が求められている。英国では1万9000km毎か、1年毎の指定だ。
シフトフィールが冴えない場合、ナイロンブッシュの摩耗が原因かも。A610の純正クラッチは絶版。英国のヘリックス・オートスポーツが、500ポンド(8万円)で代替パーツを売っている。
インテリア
GTAのスピードメーターは故障しがち。表示されている走行距離が正確ではないことも。ドアノブやパワーウインドウの動きも確かめたい。
専門家の意見を聞いてみる
スティーブン・デル:ルノー・アルピーヌ・オーナーズクラブ会長
「高性能モデルを以前から所有してきましたが、20年前に白のGTAを目にして、特別なデザインに強い感銘を受けたことは今でも忘れられません。当時ポルシェ968を所有していましたが、944など似たモデルがあったこととは対照的です」
「GTAのように珍しいクルマなら、もっとエキサイティングだろうと思って購入を決めました。述べ30台近いGTAやA610を所有することになる、きっかけになりました」
「パフォーマンスやハンドリングだけでなく、高い快適性も気に入っています。彼らは現代のクルマのように感じられますし、毎日乗っても問題ありません」
「今まで過小評価されてきたことが残念ですね。かつての高性能クーペとして、バーゲンプライスだと思いますよ」
英国ではいくら払うべき?
ルノー・アルピーヌGTA 2.9
修理が必要な状態:5000ポンド(75万円)
平均的な状態:1万ポンド(150万円)
極上車:1万5000ポンド(225万円)
ルノー・アルピーヌGTA 2.5ターボ(V6ターボ)
修理が必要な状態:7000ポンド(105万円)
平均的な状態:1万4000ポンド(210万円)
極上車:2万ポンド(300万円)
ルノー・アルピーヌA610 3.0ターボ
修理が必要な状態:1万2000ポンド(180万円)
平均的な状態:2万ポンド(300万円)
極上車:3万ポンド(450万円)
知っておくべきこと
アルピーヌGTAやA610に詳しいガレージは少ないものの、なくはない。英国なら各所に点在している。自宅から現実的な距離にあるか、事前に確かめておきたい。
英国で掘り出し物を発見
ルノー・アルピーヌGTA 2.9 登録:1988年 走行:5万7900km 価格:1万3995ポンド(209万円)
ボディの状態はかなりきれい。スチール製シャシーの状態は確かめられないが、売り手によれば状態は良いという。整備履歴は残っているようだが、トランスミッション・フルードが交換されてきたかどうかは不明。
ベロア素材のインテリアは、経年劣化が進んでいる様子。売り手の情報が正しければ、妥当な金額といえるだろう。
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みんなのコメント
足回りは煮詰められていたのでオーバーステアは相当に高い次元でしか顔を出しません。
でも、『ターボ・ル・マン』は別次元でカッコ良かったなぁ。
但し、Ⅴ6ターボは床から生えたペダル配置にクセが有って、慣れないと飛ばすのは無理です。
610がかっこよくみえるときがいつくるのか今はさっぱりわからないw