10月23~24日にブランズハッチ”GPレイアウト”で争われた2021年のBTCCイギリス・ツーリングカー選手権最終戦は、5名のタイトル候補者たちによるマッチアップが実現。予選ではセナ・プロクター(FK8型ホンダ・シビック・タイプR/BTCレーシング)以下、ホンダ陣営がワン・ツー・スリー・フォーでグリッドを占拠し、日曜はその僚友であるジョシュ・クックが連勝を飾るも、2戦連続6位フィニッシュの選手権リーダー、アシュリー・サットン(インフィニティQ50BTCC/レーザー・ツールズ・レーシング)がここで自身3度目のドライバーズチャンピオンを確定。その喜びを表現するかのように今季最終ヒートを勝利で締めくくったサットンが、戴冠に華を添えるシーズンフィナーレを飾っている。
古豪ウエスト・サリー・レーシング(WSR)の4冠王者コリン・ターキントン(BMW330i Mスポーツ/WSR)を筆頭に、移籍初年度からタイトル戦線に加わって来た実力者トム・イングラム(ヒュンダイi30ファストバック Nパフォーマンス/ギンスターズ・エクセラー8・ウィズ・トレードプライスカーズ・ドットコム)、そしてフォードのジェイク・ヒル(フォード・フォーカスST/MBモータースポーツ・アクセラレーテッド・バイ・ブルースクエア)にホンダのクックとFFハッチバックを操るドライバーを含め、伝統的な2.43マイル(約3.9km)のグランプリ・サーキットに5名がタイトル獲得の権利を有して乗り込んできた。
予選レコード更新のシェドンが復活の連勝劇で通算50勝。ターキントンも60勝到達/BTCC第9戦
その第10戦の公式練習から速さを見せたのはホンダ勢で、ダニエル・ロウボトムとその”メンター”として今季から名門チーム・ダイナミクスに復帰を果たした3冠王者ゴードン・シェドン(FK8型ホンダ・シビック・タイプR)が、それぞれFP1、FP2でともに最速タイムを刻むと、今度は予選でTOCA共通エンジン搭載組のFK8シビック、プロクターとクックが最前列をロックアウト。セカンドロウ2列目にはそのチーム・ダイナミクスの2台が並ぶなど、シビックが驚異的なリザルトを残した。
「セッションの大半でジョシュ(・クック)が最速の座にいたから、僕は可能な限りタイトル候補の彼に近づこうと思っていただけで、逆転できるなんて考えていなかった。アタックラップに入ると『これはいい感じ、彼に近づけそうだ』と思ったけど、まさかの結果さ」と、4つのセクターで4人のドライバーが最速、1秒以内に23台が入り、上位12台がレコード更新の超接近戦クオリファイを制したプロクター。
「ありがたいことに最速タイムを刻めたが、重要な点はBTCレーシングのFK8がワン・ツーを確保したこと。僕らは競争力があり、ジョシュは選手権トップ5の一角を占めている。その輪の中にいられて光栄だし、自分の役割は心得ているよ」
■6シーズンで自身3度目、インフィニティ駆るサットンが戴冠
その言葉どおり、日曜のオープニングレースではクックが早々にポールシッターの前に出ると、その後は比較的静かな展開でフィニッシュ。途中、セーフティカー(SC)が導入されギャップが消失する場面はあったものの、3番手にシェドンを従えホンダ勢が表彰台を独占する結果となり、クックはわずかに残っていた数字上のタイトル挑戦への望みは絶たれたものの、今季4勝目をマークした。
その後方では、2周目に4番手へと浮上していたダン・ロイド(ヴォクスホール・アストラBTCC/エイドリアン・フラックス・ウィズ・パワーマックスド・レーシング)と、ホンダのロウボトムを挟み、選手権首位のサットンが6位でフィニッシュ。宿敵ターキントンを7位に抑え、ここでさらにチャンピオンへ近づく形となった。
その逆境を跳ね返したいWSR不動のエースは、続くレース2のオープニングラップで、前方のマシンにドアを閉ざされ失速したサットンの動きを見逃さず、“パドックヒル・ベンド”で前に出ることに成功。その後も前方集団の追走体制に入っていく。
ふたたび終盤のSCで仕切り直しが入ったものの、ターキントンは連勝のクック、ロイド、シェドンのFF勢を捉えることはできず4位でフィニッシュ。ロウボトムを挟みふたたび6位となったサットンがわずか6シーズンで自身3度目、この時点での2021年ドライバーズチャンピオン獲得を決めた。
「つねに重圧を抱えながらレースの週末に臨む日々が続いてきたし、フィニッシュラインを越えても越えても勝負は終わらず、その苦しさの中でドライブを続けてきた」と、その計り知れないプレッシャーとの戦いを明かしたサットン。
「このタイトル獲得は過去の2回とはおそらく逆で、ウエットではなくドライ勝負で成し遂げた。さらに僕らはハンターでなく、いつも狙われる側の獲物だった。それでもインフィニティは驚異的な完成度で、僕はいつも望むとおりのドライビングができたんだ」
「不調だったオールトンパークを除けば素晴らしいシーズンで、第2戦からずっと選手権を牽引してきた。これは年間を通じて最大のサクセスバラストを積んで戦ったことを意味するけど、それを克服する素晴らしい仕事を成し遂げたんだ!」
その新チャンピオンは2021年最終レースをリバースグリッド4番手からスタートすると、3周目の“クリアウェイズ”出口で首位浮上に成功。そのままロウボトム、イングラムを従え自身の戴冠を祝福する勝利を飾り、今季5勝目とBTCC通算50回目の表彰台でシーズンを終えている。
「今季初めて、最終レースのためにリラックスして自分自身に帰ることができた。そこで早めにトップへ浮上して優勝できるなんて、思い描いた以上のエンディングになったよ」と喜びを語った27歳のサットン。
この結果、ランキング2位には「チームとして懸命に頑張ってきたが、毎年勝つのは難しい。来季こそは5回目の王座を狙いに行くよ」と語るターキントンが続き、3位クック、4位イングラム、5位ヒルのトップ5となっている。
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