タイトルを見て「ん? スバルにはもうハイブリッドあるでしょ?」と思った方はクルマ好きなはずだ。しかし今回ここで自社開発中止と取り上げているのは、従来のスバル車に搭載されてきた、いわゆるマイルド型のハイブリッドではなく、トヨタやホンダのようなストロング型のもの。
マイルドハイブリッドがあくまでエンジンを動力源とし、停止時や発進時などにモーターでエンジンをアシストするのに対し、走っている状況に応じてエンジンとモーターを使い分け、大幅な燃費向上を図るのがストロングハイブリッドだ。
スバルはこのストロングハイブリッドの独自開発を進めてきたが、最近はまったく話題にのぼらなくなった。ひょっとして、自社開発を中断してしまったのか!? スバル直撃取材も含め、この噂の真相に迫る。
文・写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』2018年6月10日号
2015年東京モーターショー以来、音沙汰なし
2013年にスバルは初のハイブリッドモデルとしてXVハイブリッドを発売。その後、インプレッサスポーツハイブリッドにも搭載されたこのハイブリッドはスバル独自のシステムである。
このシステムはコンパクトなシングルモーターとバッテリーを使った、いわゆるマイルドハイブリッドだった(編集部註:マイルドハイブリッドの詳細についてはこちら)。
そして、今年6月にもデビューする次期型フォレスターにも4月の北京モーターショーで公開されたモーターアシスト仕様が設定される。このハイブリッドシステムもまた、先代XVなどに搭載された2Lマイルドハイブリッドの発展形である見通し。
新型フォレスター
そうなると見えてこないのが、スバル新開発の次世代ハイブリッドの姿だ。
スバルはこれまでモーターショーでは独自の次世代ハイブリッドシステムを搭載したコンセプトカーを披露してきている。しかし、新型フォレスターのハイブリッドまで従来の改良型となると、まったく新しいハイブリッドの開発が進んでいないのでは? という気配さえある。
そのため、最近噂されているのが「スバルはハイブリッドの自社開発を中断してしまった」という説。実際のところ、どうなのか?
2015年東京モーターショーのコンセプトカー「ヴィジヴフューチャーコンセプト」。
次世代ハイブリッドをアピールしていたが、その後新システムの噂は聞かない
「どのようなシステムか? といった細かいことまではお答えできませんが、ハイブリッドの自社開発は今も続けています」とは、スバル広報部。
スバルはハイブリッドの自社開発をやめてはいないという。ただ、気になるのはそのハイブリッドがどのような特徴で、どんなシステムなのか? という点だが、別のスバル関係者は次のように話す。
「以前にトヨタからハイブリッド技術を学ばせてもらった時期がありましたが、現在は社内で基礎技術や研究をさらに進めています。では、スバルはトヨタ式の燃費性能を追求したストロングハイブリッドを今後出してくるのか? というと、そうではなく、やはりスバルらしい走りの楽しさなどを追求する方向で開発は進んでいます」。
新開発ハイブリッド市販化は難しい!?
今後もスバルのハイブリッドは低燃費を狙ったシステムにはならないというが、独自に新開発するハイブリッドの可能性はあるのか? 自動車評論家の鈴木直也氏は経営的な側面から見えてくるものがあるという。
「もしスバルが独自のハイブリッドシステムを開発しても、売れるのは年産100万台メーカーのスバルのなかだけ。それでは、絶対的にコスト面で他メーカーに太刀打ちできない。だから、まともな経営者だったらまずやらない。
でも、今後ますます世界的に燃費規制は強化されるから、電動化は絶対に必要。だからこれからもスバルはハイブリッド車を発売する。これまでのマイルドハイブリッドより燃費もいいハイブリッドが必要だろうね。
そうなると、考えられるのが提携関係にあるトヨタからコンポーネンツを供給してもらうという方法。それと、日産のe-POWERみたいな徹底的にコストをかけないハイブリッドを作るかだ。
少なくとも経営的な側面から考えたら、自社開発のハイブリッドは絶対にうまくいかないだろうね」。
スバルは今のところ独自開発のハイブリッドを断念してはいない。しかし、コスト面と性能面の両方で他メーカーと渡り合えるような競争力のあるハイブリッドをスバルが作るのは難しい状況にある。そこがカギになりそうだ。
噂の真相…
独自開発は続けているが、コストの問題あり
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