あまり知られていないようだが、日産ルノー連合は、2010年から2022年頃まで、メルセデスベンツ(当時はダイムラー)と共同で車両開発をしていた。エンジンの共用(初期の頃のV37スカイラインに搭載された2.0L直4ターボエンジンはメルセデス製M275エンジンだった)や、ピックアップトラックの共同開発などが主であったが、なかにはプラットフォームをそのまま共用したクルマを販売したこともあった。「ルノー・トゥインゴ」と「メルセデスベンツ・スマート」もそのひとつだが、先代メルセデスベンツGLAクラスのインフィニティ版、というモデルもあった。
文:吉川賢一
写真:INFINITI、Mercedes-BENZ
日産とベンツが兄弟車を…メルセデスGLAのインフィニティ版が日本に入っていれば…天下が獲れたかも!!!?
ブランド価値を欧州市場で高めるための「苦肉の策」だった
メルセデスベンツ(当時はダイムラー)とパートナーシップを結ぶ2010年以前、日産ブランドは、初代キャシュカイ(日本名デュアリス)のクリティカルヒットにより、欧州においても一躍有名となっていた。ただインフィニティは、北米市場ではそれなりに知名度を上げていたものの、欧州では知名度が上げられておらず、収益性の高い高級ブランドのインフィニティ車を欧州市場で増販していくことは、日産(インフィニティ)の課題となっていた。
しかしながら、欧州に向けて独自にプレミアムカーを開発することは、コスト的にも体力的にも割に合わない。日産がインフィニティのブランド価値を欧州市場で高めるための苦肉の策として考えたのが、ダイムラーとパートナーシップを結ぶことだった。実際には、ルノーからの指示だったのかもしれないが、ルノー日産、ダイムラーの双方がメリットを得られる良策であったと思う。
そのパートナーシップによって生まれたインフィニティQX30は、プレミアムアクティブクロスオーバーとして、2015年のジュネーブ国際モーターショーで初披露、同年にロサンゼルスモーターショーと広州モーターショーでも公開され、2016年より欧州、米国、中国で販売された。リフトアップしていないQ30というCセグメントのコンパクトカーもあったが(メルセデスベンツAクラスと同サイズ)、当時はオーソドックスなコンパクトカーよりも「クロスオーバー」というキーワードが目新しいこともあり、QX30のほうをより推していたように思う。
初代メルセデスベンツGLAとの姉妹車だが、デザインは全面的に変更されており、インフィニティ独自のデザインにまとめられている
こちらがメルセデスベンツのGLA。QX30とはまったく別のクルマにみえる
インフィニティらしい、エレガントなクロスオーバーSUV
メルセデスベンツGLAクラスをベースとしているものの、内外装は全て変更されており、QX30にGLAらしき面影は一切残っていない。強いてあげれば、スマートキーがメルセデスベンツの形状にインフィニティバッヂを付けただけのものだったり、ドアに付いたシートアジャスターのスイッチがGLAクラスとまったく同じだった程度だが、知らなければ全くの別車だ。
インフィニティらしさを感じさせるフレームワークのフロントグリルやつり目のヘッドライト、滑らかな曲線のボンネットラインやボディサイドのキャラクターライン、テールランプなどは、他のインフィニティ車と同じく、エレガントな雰囲気のデザインにまとめられていた。GLAと同様にややリフトアップされた車高も、当時は新しさを感じられ、オシャレ度の高いクロスオーバーSUVという雰囲気だった。
エンジンはダイムラー製で、排気量2.0Lの直4ガソリンターボと、2.2Lの直4ディーゼルターボの2種類。これに7速DCTが組み合わせられていた。プラットフォームもダイムラー製だが、開発の最終段階では、走りの味付けを日産側が担当し、車両製造はイギリスにある日産のサンダーランド工場にて行われていた。
日本でも販売していたら、インフィニティのブランド力向上に繋がったかも
現行V37スカイラインの初期型モデルがインフィニティバッヂを付けて登場したことは、皆さんも記憶にあるだろう。当時日産は、インフィニティブランドをどうすれば有効活用できるか検討している最中だと説明していたが、もしもこのQX30を日本で(日産ブランドから)販売していたら、日産ブランドで売るインフィニティ車の礎として、役に立ったかもしれない。日本国内で乗ってみたかった一台だ。
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みんなのコメント
>日産ブランドで売るインフィニティ車の礎として、役に立ったかもしれない
全く違うことが一つの記事に入っているみたいで。
日産が、日産ブランドの限界を感じたから、1989年に新たに導入したのがインフィニティブランド。
インフィニティブランドの車は、インフィニティとして売らないと、購入者は財布を開いてくれない。国内に、日産ブランドで入れたら、世界中のインフィニティ購入者に失礼だろう。
日産も、それが分かっているから、今更インフィニティ車を日産ブランドで、国内では売れないのだろう。