ドライバーの意図を若干上まわるディーゼルの特性が最高!
華がないのが個性のはずのVWだが、ハッキリ言えば最近はお洒落である。正当派のパサートもそうだし、もちろんアルテオンは最初からスタイリッシュクーペとして華々しくデビューした。
【試乗】操縦安定性はバランスの極み! 非の打ち所がない8代目ゴルフに感動
その2モデルがフェイスリフトを受けると同時に、アルテオンにはシューティングブレークが誕生。日本的にはデザイン・コンシャス・ワゴンで、個人的にはVW”シロッコ”のルーフラインとウインドグラフィックスが蘇るスポーティハッチバックの印象である。
前後フェイスリフトは、フロントグリルのデザインや配色とライトまわり、デイライトの配光など。リヤは新たな書体のVWエンブレムの下にモデル名が配置されて、新型ゴルフも含めてVWすべてのモデルが統一される。そこはVWエンブレムも含めて画像で確認して頂きたい……。
試乗はまず、マイナーチェンジしたパサート・セダン。4グレードあるうちの最上位、パサートTDI Elegance Advanceに乗る。
本国ドイツを含む欧州で減少傾向にあるディーゼルエンジンを、VWグループは日本に導入している。個人的にハイブリッドでなければディーゼルを好むたちだが、それはゼロ発進加速がストレスなく軽快に盛り上がる力強さと、燃料満タンでの脚の長さ、航続距離の伸びと燃料コストも、ガソリンとの差が少なくなったとはいえ、やはり魅力だ。
いかにもドイツ流に整然とした室内に入る。シートの硬い座り心地、床に足を着いた時の硬さと張りの強さ、ドアを閉めた時の気密性など、国民のための大衆車というより、ここまで質感が高いともはやプレミアムクラスの印象が強い。
走りはレールにハマったかのような直進性。ステア操作の動きに正確だが軽快に動くコーナリング。速度を足の裏で抑え込む感覚のブレーキングは、ペダルを抜く動作、減速Gを滑らかに消すまで正確に車速をコントロールできる。と、どれをとっても操作に対して自然な手応え”足応え”として伝わる点が素晴らしい。
アクセルを軽く踏む、加速が始まると同時に低回転からモリモリと400N・mのディーゼルターボ特有の力強いトルクで盛り上がる2リッターTDIは、大柄なボディをコンパクトカー並に軽快に引っ張る。
6速から多段化して7速になったDSGはツインクラッチ式。まるでトルコンのようなスムースな発進と変速と瞬時に適確なギヤ選びが嬉しい。アクセルを深く踏み込まなくても必要な時に期待値を”若干上まわる”!! 動力性能を得られることは、ひとの感性として「素直」と感じられるものだ。
この軽快で急激に盛り上がる加速Gは、回転すると同時に最大トルクを発生するEVの加速フィールにも似ている。が、無音のモーター加速に対して、ディーゼルは3000rpm付近の燃焼音の盛り上がりがやや耳障り。ただそこを越えると滑らかで整った静かなサウンドに変化しつつ4500rpmで回転リミットを向かえるエンジンとしてのトルクとパワーの関係が、モーターにはない躍動感として心地いい。実用は2~3000rpmも回せば十分過ぎる性能が引出せる。
室内空間の広がりといい、トランクは幅も奥行きも驚きの広さである事も含めて、正統派セダンとしての基本、ひとつの指針がパサートである。今回はセダンとワゴンであるバリアントのボディバリエーションだが、ヴァリアントをベースに車高を高めてSUV感覚にした4WD(2リッターTDIのみ)、オールトラックも用意。
エンジンは2リッターディーゼルのほか、従来の1.4リッターTSIに代わって新世代の4気筒ターボ、1.5リッターTSIが搭載された。ソレに乗るべきかと迷ったが、試乗予定のアルテオンが2リッター直4ガソリンなので同じ2リッターのディーゼルが比較しやすいだろう、と言う意味で2リッターTDIを選んだ。
見た目は美麗なワゴンだが走りは骨太スポーツ!
アルテオン・シューティングブレークは2リッターTSI 4MOTION R-Line Advanceとこれも最上位グレード。流麗という単語はクーペにこそだが、シューティングブレークは弧を描くロングルーフにハッチゲートの流れが美しく、これはこれで流麗でお洒落なプレミアムスポーツワゴンである。
スタートした瞬間からスポーティな事は、エンジンを含むクルマ全体が引き締まったシャープな動きからもわかる。
まずはエンジンが存在を主張する。アクセルを踏み込むと272馬力/350N・mの2リッターTSIガソリンターボは、出足の一瞬は眠い。つまりはターボラグだが、直後に急激に盛り上がるまさにターボトルクで乗員はシートに押し付けられる。そのまま強い加速Gを維持しながら高回転まで伸びていく気持ち良さはスポーツユニットそのもので、まさにそこがディーゼルとの違い。
シャシーはパサートと基本は同じだが、ホイールベースはアルテオンが2870mmと45mm長い。クルマ全体が長く見えるのは目の錯覚ではなく全長が4870mmと、パサート・バリアントの4785mmに対して85mmも長い。走行性能でもクルマ全体の姿勢変化が少なく、フラットな乗り味に感じられるのはこの効果もあるだろう。
操縦性と安定性はパサートと同様、スポーツワゴンの手本である。245/35R20のピレリP ZEROのタイヤ特性も手伝って、ステア操作に対する動きは早くて正確に曲がる。高速の直進安定性の高さと乗り味に35偏平の硬さや轍の取られなど皆無。シャーシとサスペンション、タイヤすべてが高剛性でまとめられている。高速道への合流ランプのように、大きく回り込みながら加速するシーンでは4モーションがまさに4輪で接地して駆動する安定性は頼もしい限り。
ドライブモードの変更でエンジン、エキゾースト、ミッション、ステアリング、サスペンションにライト類その他がエコ~スポーツへ制御が変更できる。個人的にはエンジンマップはノーマルで十分だが、ステアリングはスポーツを選びアシスト量を減らしてズシリ手応え確かな仕様を好む。等々個別のセッテイングも楽しい。
試乗中に試すことは”不可能”だったが、VW初のトラベルアシスト(同一車線内全車速運転支援システム)は、210km/h!! までの制御が叶うもの。いわゆるオートクルーズコントロールだが、従来のトラフィックアシスト(渋滞時追従支援)から進化して、設定した速度内で前走車との車間と走行レーンの維持をサポートする。興味として210km/hから渋滞の最後尾にどうやって付けるのか、減速Gや停止のし方などじつに興味深い。
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みんなのコメント
記事中にパサートへの言及が皆無なのは、どっちでも同じだからですねww