「静電気除去シートに触れてから」一連の動作を
セルフのガソリンスタンドでは、ガソリン計量器に「静電気除去シート」として、丸く黒いパッドが取り付けられています。計量器で油種を選んだあと、「静電気除去シートに触れてから」、燃料油キャップを開けて給油してください、といったアナウンスが流れます。
石油元売りの関係者によると、静電気除去シートは、思わぬ火災事故を引き起こす危険を回避するためにあるそうです。
セルフスタンドで給油するレギュラーガソリンやハイオクガソリンは、マイナス40度という低温でも気化してしまう、非常に揮発性の高い可燃物のベーパー(蒸気)が発生します。その蒸気は、静電気などわずかな火花でも引火してしまう危険があるのです。
特に乾燥しやすい冬場は、静電気が発生しやすくなっており、乾燥した指先などで金属製品に触れると、パチッっと火花が出ることも。べーパーに引火すれば大事故につながる可能性があります。
他方、ガソリンスタンドの店員が静電気除去シートに触れている光景はあまり見ないかもしれません。理由は、帯電防止に優れた衣服や靴を着用しており、業務中にも、水をまいたり金属製品に触れたりして日常の動作で静電気の発生を抑制しているからです。しかし、給油に訪れたお客さんはそういう訳にはいきません。
総務省消防庁の資料によると、静電気の問題は、セルフスタンドが解禁された1998年の段階で論議されていたそうです。当初は給油キャップを覆う金属製のふたや給油ノズルに触れることで、静電気は除去されると見込まれていましたが、これらに触れずに給油キャップを開け、放電により給油口から吹き出すガソリンの可燃性蒸気に引火する事故も発生。
そこで2001年に消防庁が各都道府県へ静電気対策について通達を出し、以降、静電気除去シートの設置が増えたといいます。
なお総務省によると、2022年中に発生したガソリンスタンドなどを含む危険物施設で発生した火災及び着火事故のうち、静電気火花での着火が38件と全体の16.8%でした。これは、高温表面熱に次いで着火原因で2位となっています。実はあのパッドはかなり重要な設備だったのです。
ちなみに、静電気除去シートには指先のみ触れるだけでも大丈夫です。ただし手袋を着用したままなどで触れるのは厳禁です。
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