スバル以外の国産メーカーはミニバンやSUVへの傾注が目立つ
かつて「RVブーム」と呼ばれた時代、ステーションワゴンには、セダンやクーペにはない積載性と、ミニバンやSUVにはない運動性能の高さが得られる万能性が魅力とされ、大人気を博した。ミニバンやSUVには乗りたくないが、高速巡航時や山道などでセダンやクーペに遜色のない走りを楽しみながら、大量の荷物を積みたいという、アクティブなユーザーから絶大な支持を集めていたのである。
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日産アベニールやウイングロード、ステージア、トヨタ・カルディナ、ホンダ・アコードワゴンなど、各社自慢のステーションワゴンはそれぞれに独自の魅力があり、高い人気を博し続けていた。90年代の中盤にはSUBARUレガシィツーリングワゴンが280馬力の自主規制いっぱいまで高性能化し、ワゴン人気のピークを迎える。
しかし、やがてミニバンやSUVの走りが良くなったことで、相対的にステーションワゴンの魅力とアドバンテージは薄れてしまう。エコカーブームの到来もあって、燃費の悪いハイパワーワゴンの注目度は下がり、ワゴン全体の人気が低迷。気がつけば、国産のミドルサイズのワゴンでスポーツ性の高さを強く訴求しているのはSUBARUレガシィ/レヴォーグのみとなるほど、ワゴンの市場は冷え込んでしまった。SUBARU以外の国産中型ステーションワゴンにはマツダ・アテンザワゴンもあり、クルマのできはいいが注目度は低い。小型の車格ではトヨタ・カローラワゴンが存続している程度で、各社ともワゴンはとうに諦め、SUVへの傾注が目立つ。
そんななか、SUBARUだけは例外的にレヴォーグというステーションワゴンで高い注目度を維持し続けている。今のSUBARUも現行ラインアップのなかで一番良く売れているのはフォレスター(世界グローバル販売)で、屋台骨を背負っているのは完全にSUVであるわけだが、初代レガシィから続く高性能スポーツワゴンの市場を守り続けている。
レガシィツーリングワゴンの後継にあたるレヴォーグは、初代も新型もデビュー時の話題性はすこぶる高く、新型はコロナ禍にあっても正式発表前の予約受注が8000台を超えた。プロトタイプの試乗動画の注目度もすこぶる高く、自動車ユーチューバーがアップした動画は、いずれも高い視聴数を記録中だ。
ワゴンの魅力を高め続けてきた結果、唯一生き残った貴重な存在だ
SUBARUがいまだに売れるワゴンを生み出し続けられる理由のひとつは、歴史や伝統が醸成したブランド力だろう。SUBARUは1989年登場の初代レガシィで「ツーリングワゴン」というジャンルを新たに切り開き、280馬力化などで空前の大人気を博した2代目モデル以降、国産スポーツワゴンの一人勝ち状態を長らく続け、結果として唯一生き残った。ライバルが居なくなった今、ステーションワゴンは、昔とは違う意味でSUVやミニバンとは異なる価値観を演出できるクールな存在として際立っているように思う。
また、SUBARUはレガシィ時代から「ツーリングワゴンのニューモデルに最先端技術を優先的に盛り込む」姿勢を継続していることも、ワゴンの魅力を維持できている理由のひとつといえる。今回の新型レヴォーグでも先進の運転支援システム「アイサイトX」がデビューしたなど、話題性が高まりやすい飛び道具を常にワゴンに搭載してデビューさせてきた。「ぶつからないクルマ」でブレイクしたアイサイトVer.2も、5代目レガシィの上級グレードからの展開だった。
レガシィ以前のレオーネの時代から実直に続けてきた「業務用版ではないワゴン」づくりで他社にはない個性や存在感を打ち出すことに成功しているので、今の段階で消耗戦市場のミニバン市場に参入するのは得策ではないとの経営判断もあるはず。SUBARU以外のメーカーとしても、逆に今さらステーションワゴン市場で大きなシェアを獲得することは見込めないので、今後も国産スポーツワゴンはSUBARUの一人勝ち状態が続くと予想できる。
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