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2代目MINIのONE、クーパー、JCW、クラブマンの高性能さと高効率さ、そして個性とは【10年ひと昔の新車】

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2代目MINIのONE、クーパー、JCW、クラブマンの高性能さと高効率さ、そして個性とは【10年ひと昔の新車】

2007年1月に第2世代に進化したMINIは、2008年3月には「大人4人が楽にグランドツーリングをこなせる」クラブマンを追加。さらにはコンバーチブルの発表もすでにアナウンスされていた。MINIはコンパクトカーではあるが、ボディサイズの枠にとらわれないクルマになろうとしていた。Motor Magazine誌ではそんなMINIのあり方を探るべく、大規模な試乗テストを行っている。今回はその模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2009年5月号より)

パワーユニットの刷新とバリエーションの拡大
2007年に実施された、新世代MINIにとって初めてとなるフルモデルチェンジ。それは、ルックス面では「変わり映えしない」という評価が多かったものの、BMWにとっては実はとても重要な進化を秘めたものであった。

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最も大きな技術的トピックは「BMW製エンジンへの全面換装」である。PSA(プジョー/シトロエングループ)のモデルにも使ってもらうことを前提に、ふんだんな開発費の投入が許された新エンジンだからこそ、BMWが持つ多くの最新テクノロジーが「クラスを超えて」採用可能となった。

それはたとえばBMW車への搭載時には「バルブトロニック」と謳われる自然吸気ユニットに用いられた無段階の可変バルブリフト&タイミングシステムであり、ターボ付きユニットに用いられた高精度の直噴シリンダーヘッドであるといった具合だ。

こうしてパワーユニットの刷新を成し遂げた最新型のMINIは、従来型に対して見た目はそれほど変わらなくても、動力性能と共に燃費性能も大きく引き上げるという、いかにも「BMWの作品」らしいリファインが実現されたのだ。

そしてもう一点、初代モデルに対して大きく推進されたのが、バリエーションの拡大だ。それは全長とホイールベースを延長させたクラブマンの新規投入を意味している。

ステーションワゴン風のプロポーションと、右側面と後面に2組の観音開きドアを備えるという「世界で唯一のデザイン」によって、まずは既存のハッチバックモデル以上のインパクトをアピールするこのモデル。だが実は80mmというホイールベースの延長分をそっくり後席足下空間の拡大に充てたそのパッケージングは、「4人が乗るとやはり窮屈」という、ハッチバックモデルに対する不満の声への明らかな回答だと解釈することができる。

ミニの歴史上で初めて「大人4人が楽にグランドツーリングをこなせる」課題に挑戦したのがこのクラブマンなのだ。それは、間もなく日本にも導入される新しいコンバーチブルと共に、BMWによるブランド展開のシナリオが着々と具現化されつつあることを証明する重要なモデルでもある。

そう、「MINI」とは、まだまだ発展途上の可能性を秘めている、BMWにとっての新しいブランドなのだ。

最もベーシックながら積極的にも選べるMINI ONE
今回の取材車両の布陣は、「最もベーシックなMINI」であるONEに、「最も有名なMINI」であるクーパー。そして「最もパワフルなMINI」であるジョンクーパーワークス(JCW)という3台のハッチバックモデルに加え、クラブマンのクーパーを加えた4台。

ちなみに、そんなモデルたちにはいずれも様々なオプションアイテムが装着されていたが、中でも6速AT仕様のONEは総額85.7万円分のアイテムを装備していた。

豊富なドレスアップ用パーツを組み合わせて「自分だけの1台」へと仕立てていくこともまた、MINIの楽しみのひとつ。「ちょっとイジってみようかな」という気持ちを抱かせてしまうのが、このブランドならではの魅力だ。

最もベーシックなプライスタグを提げるONEの6速MT仕様は218万円(6速AT仕様は231万円)。スマートやルノー トゥインゴ、フィアットパンダや500などには200万円を切るモデルの設定も見られるが、それらに比べれば圧倒的な知名度の高さとブランド力の強さを誇るMINIの一員がこの価格からというのは、当然ながら大いに価値のある事柄だ。

もちろん、価格が低いからといってONEというモデルの魅力度が他のグレードに対して見劣りするというわけでは決してない。

1.1トンを超える重量に対して搭載するのは1.4Lエンジンだから、加速力についてはそれなりの制約を受けるし、今回の取材中も、急な上りのワインディングセクションなどでは「他の3台のペースとは異なる」というシーンがあった。

しかし、加速力というその一点を除けば、クーパーやクーパーSグレードに対してヒケを取る部分などひとつも存在しないと言ってもいい。それどころか「数あるMINIのバリエーションの中から、積極的に選ぶ」という理由すら備えている。

今回のテスト車の中で、最もしなやかで快適な乗り味を提供してくれたのが、実はこのONEであった。

キビキビとしたハンドリング感覚を指して「ゴーカートフィーリング」と称するのが、従来型/現行型各モデルのMINIに共通するアイデンティティのひとつ。それはもちろん、最もベーシックなグレードであるONEとて例外ではないが、他モデルよりしなやかな味わいを備えるのは、どうやらそのシューズに起因するところが大きそうだ。

標準で履く175/65R15サイズのタイヤは、MINIを含む昨今のBMW各車が好んで採用するサイドウオール強化型のランフラット構造を採っていない。結果として、シリーズ中で最もしなやかな乗り味を手に入れている。

「俊敏な走りに対する執着はあまりない。MINIならではの愛らしいルックスと、日本にもぴったりのコンパクトなサイズが生み出す実用性の高さにこそ惹かれている」人に対しては、最も素直に推奨できるのがこのONEというモデルである。

期待されるパフォーマンスに応えてくれるMINIクーパー
そこから、日本で最も有名なMINIでもあるクーパーへと乗り換えると、やはり動力性能の違いが明白に感じられる。ピストンストロークを10.8mm延伸したことによる200cc強の排気量拡大がもたらした最高出力のアップは25ps。最大トルクも20Nm上乗せされているから、これで同じギア比、同じ重量のボディを加速させるとなれば、それ相応の違いが生じるのは当然だ。

0→100km/h加速のデータを比べても、両グレードの速さの差は歴然。その傾向はAT仕様の場合に顕著となり、MT仕様では10.9秒と9.1秒というONEとクーパーの0→100km/hタイムは、AT仕様になると12.6秒と10.4秒と2秒以上も開く。実際にドライブしても、そんな加速の余裕度の違いはアクセルペダルを踏み込むたびに実感させられる。

「高速道路にはあまり乗らないので、ONEで十分」と考える人もいるかもしれないが、実はほぼ一定速で平坦な高速道路をクルージングするシーンでは、ONEとクーパーの動力性能の差はさほど明確ではない。むしろストップ&ゴーが頻繁な街乗りシーンでこそ、排気量の違いを実感させられる。

フットワークのテイストが基本的にONEのそれと同様だったのは、両車が同サイズのシューズを履いていた点からも納得できること。快適性に関して一歩譲る印象を受けたのは、ミシュラン製タイヤを履くONEに対して、ダンロップ製を履くクーパーのロードノイズの方が明らかに大きかったからだ。

さらに快適性という観点からすれば、ATの仕上がり具合は今や世界第一級と呼ぶには値しないと思えた。これはONEとクーパーの双方に共通する印象で、6速仕様ゆえに変速レンジの広さとステップ比の小ささには文句の付けようはない。だがステップ比の小ささの割には、とくに低速ギアでのシフトショックは大きめだし、微低速時にアクセル操作を行った際の駆動系のスナッチ現象も気になるレベルだ。

加えれば、少なくともステアリングパドルを備えたモデルに関しては、ダウンシフト時のブリッピング機能が是非欲しい。昨今のBMW各車の2ペダル式トランスミッションの革新性は非常に高い水準にあると言えるが、それに比べるとMINI各車が採用するATは、残念ながらとくに褒めるべきレベルには当たらない。MINIに対する最も大きな技術的要望は、ATのバージョンアップだと感じさせられる。

ところで、同じクーパーのグレードでも、クラブマンのそれに乗り換えると走りの印象はやはり微妙に異なる。

バルブトロニック技術を採用するエンジンは低回転でのトルクが太く、ATとの組み合わせでも「1.8Lくらいあるのではないか」と錯覚させるスタート時の力強さを味わえる。だがそこから先の車速の伸び感がハッチバックモデルに及ばないのは、240mmに及ぶ全長の延長や凝ったドア構造がもたらす約70kgという重量増が影響していると受け取るべきだろう。

一方で、ホイールベース延長にもかかわらずゴーカートフィーリングに関しては、ハッチバックモデル比で同等以上だと感じられたのは、今回の車両が標準サイズよりも1インチアップで、構造も縦ばね定数が増すランフラットタイヤとなるオプションアイテムのシューズを履いていた影響も少なからずあるはずだ。

高性能とは高効率でもあることを証明したJCW
自然吸気モデルに対して、まさに別格の速さを見せ付けるのが、このクラスでは「贅沢極まりない」と言える直噴式ヘッドを採用する1.6Lユニットにオーバーブースト機能付きのツインスクロール式ターボチャージャーを備えたクーパーSだ。

今回のテスト車は、そのエンジンをベースにピストンやバルブ、吸排気系に手を加え、足まわりにも専用のチューニングを施したJCWモデル。その211psという最高出力と260Nmという最大トルク値は、「普通のクーパーS用エンジン」の36ps増しと20Nm増しという関係。ゲトラグ製6速MTと組み合わされた結果の6.5秒という0→100km/hタイムは、その動力性能が一級のスポーツカー並であることを示している。

特徴的なのは、かくも強力な性能を誇りながら、街乗りシーンでもすこぶる扱いやすい点にある。たとえば、スタートの瞬間のトルク感はむしろ自然吸気ユニット以上と思えるほどだし、3速ギアで20km/hといった状況も何の苦もなくこなしてしまう。さほど加速力を必要としないならば、1→3→4→6といった「飛ばし」のシフトも文句ひとつ言わずに受け付ける。

と同時に、このパワーユニットの真の実力を見せ付けられたのは、取材終了時に燃費計測を行った際だった。他の3台と共に400km以上の距離を走行したJCWは、実に12.7km/Lというデータを残した。あろうことか、これは1.4Lエンジンを搭載するONEのデータ(12.4km/L)をも上回る好成績だったのである。

もちろん、そうは言ってもJCWの真価は、やはりそのダイナミックな走りにこそある。フルブースト状態での速さは、最高出力の数字を掛け値なしに実感できるもの。硬めにセットアップされ、低速域では路面の凹凸を少々直接的に拾う足まわりも、ワインディングセッションでは「これぞゴーカートフィーリング」というテイストを存分に味わわせてくれる。スタビリティコントロールをオフにすればホイールスピンが激しく発生し、トルクステアも強烈・・・といったジャジャ馬ぶりも発揮するが、それもまた「特別なMINI」を操る醍醐味というべきだろう。ONEなどとはまた異次元で「MINIならではの楽しさ」が味わえる。

かくして、どのモデルを選んでみてもまずは見て楽しく、そしていざ乗ってみれば、それぞれのモデルごとに色濃い走りの個性が秘められているのがMINIの魅力というもの。単なる「BMWが創ったFF車」に留まらず、そこに周辺モデルとは一線を画した人々を引き付ける強い個性が与えられている点が「MINI」の名を冠するすべてのモデルに共通する売り物なのである。(文:河村康彦/写真:村西一海)

MINI ONE 主要諸元
●全長×全幅×全高:3700×1685×1430mm
●ホイールベース:2465mm
●車両重量:1170kg
●エンジン:直4DOHC
●排気量:1396cc
●最高出力:70kW(95ps)/6000rpm
●最大トルク:140Nm/4000rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FF
●タイヤサイズ:175/65R15
●最高速度:180km/h
●0→100km/h加速:12.6秒
●車両価格:231万円(2009年当時)

MINI クーパー 主要諸元
●全長×全幅×全高:3700×1685×1430mm
●ホイールベース:2465mm
●車両重量:1170kg
●エンジン:直4DOHC
●排気量:1598cc
●最高出力:88kW(120ps)/6000rpm
●最大トルク:160Nm/4250rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FF
●タイヤサイズ:175/65R15
●最高速度:195km/h
●0→100km/h加速:10.4秒
●車両価格:264万円(2009年当時)

MINI クーパー クラブマン 主要諸元
●全長×全幅×全高:3935×1685×1440mm
●ホイールベース:2545mm
●車両重量:1230kg
●エンジン:直4DOHC
●排気量:1598cc
●最高出力:88kW(120ps)/6000rpm
●最大トルク:160Nm/4250rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FF
●タイヤサイズ:175/65R15
●最高速度:190km/h
●0→100km/h加速:10.9秒
●車両価格:287万円(2009年当時)

MINI John Cooper Works 主要諸元
●全長×全幅×全高:3715×1685×1415mm
●ホイールベース:2465mm
●車両重量:1210kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1598cc
●最高出力:155kW(211ps)/6000rpm
●最大トルク:260Nm/1850-5700rpm
●オーバーブースト時最大トルク:280Nm/2000-5300rpm
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:FF
●タイヤサイズ:205/45R17
●最高速度:238km/h
●0→100km/h加速:6.5秒
●車両価格:363万円(2009年当時)

[ アルバム : MINI 2代目 はオリジナルサイトでご覧ください ]

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