マツダのライトウェイト・オープンスポーツカー「ロードスター」。1989年に初代が発売されて以降、4世代にわたって生産が続けられ、初代から基本を変えることなく、およそ35年もの間、世界中で愛され続けてきた。2023年10月時点の累計生産台数は120万台以上というミラクルヒットカーだ。
まさに唯一無二のクルマといえるロードスター。その「いいところ」をあらためて振り返ろう。
【こんなクルマもうこの先は出ないよ…】マツダロードスターのすごいところ
文:立花義人、エムスリープロダクション/写真:MAZDA
個性はあるけど派手過ぎず、親しみやすいところがいい!!
大排気量のいわゆる「スポーツカー」とは違い、軽量コンパクト2シーターというパッケージングのロードスターは、4世代どのモデルをとっても、親しみやすいデザイン。派手なスポーツカーに乗って自慢したい!! という人には物足りないかもしれないが、「乗ったら楽しいよ!!」と、クルマのほうから距離を縮めてくるようにも感じる。コンパクトというサイズ感によるところが大きいが、寸法やパッケージングをほとんど変えず、流行を取り入れながらも普遍的に感じるデザインを踏襲している点は、ロードスターのいいところだと思う。
1989年発売の初代ロードスター。バブル期に贅沢で高性能なクルマが続々誕生する中、軽量オープンコンパクトが登場すること自体驚きだった
「人馬一体」が誰でも体感できるハンドリング性能がいい!!
そして、ロードスターの魅力といえば、なんといっても、軽さとFRならではのハンドリング性能だ。初代NAロードスターの1トン前後という車重は、現行型でも守り続けられている。
年々高まる安全基準に合わせつつそれを成し遂げるのは簡単なことではないと思うが、ボディには超高張力鋼板を含めた素材を使いながら軽量な構造を追求するなどの技術力でそれを実現している。マツダが追求する「人馬一体」を象徴するモデルなだけに、妥協するわけにはいかないのだろう。
「人馬一体」実現のための技術はほかにも、重量物の配置を工夫することでヨー慣性モーメントの低減を図っていることや、加速・減速時のデファレンシャルギアの差動制限力を変化させることで、クルマの旋回挙動を安定させる「アシンメトリックLSD」の採用、リアサスペンションの構造を活かしてロールを抑制する技術「KPC(キネマティック・ポスチャー・コントロール)」の採用などもある。マツダの高い技術力がロードスターの味として表現されているのも素晴らしいところだ。
マツダが掲げる「人馬一体」をピュアに表現するロードスター。軽量ボディと優れたハンドリング性能は進化を続けている
「マニアのためのクルマ」になりすぎていないところがいい!!
ロードスターの「軽量オープンカー」というコンセプトは、「ドライバーが運転を楽しむためのクルマ」ということであり、これは昨今年々レベルが高くなっている安全装備や先進運転支援を搭載する流れとは、逆行するようなコンセプト。正直なところ、2人しか乗れず、トランクも小ぶりなため実用性はほぼない。
ただロードスターは「マニアのためのクルマ」になりすぎていないところが素晴らしい。最新の電子制御と走りに直結する機能や性能を保持しつつ、快適装備をバランスよく採用する一方で、オープンカーの幌やレザーシートのカラーリングを好みのものから選べるようにすることでしっかりと所有欲を満たす配慮もある。高価なマテリアルや奇をてらうディテールも取り入れておらず、見晴らしのいい視界、操作性に優れたスイッチ類、考え抜かれたペダルレイアウト、ホールド性を考慮したシート構造、軽い操作感と節度感のあるMT、オープン走行時の風の流れをコントロールする設計など、技術と工夫がロードスターの味と楽しさをもたらしている。
価格も289万8500円からと、コンセプトと内容を考えると、現代のクルマにしてはかなり良心的な価格設定だと思う。誰でも気軽に人馬一体が体験できるというのは、初代から変わらないロードスター最大の「いいところ」だ。
ほどよくタイトなコックピットやシフトの節度感、ドライバーから見える視界、オープン走行時の風の流れなど、ロードスター35年で積み上げられた「走る歓び」を体験するのが最高の贅沢
◆ ◆ ◆
パワーはあってもピーキーで扱いにくく、ハンドリングもシビアだったら、そのクルマを楽しめるのはほんの一握りのドライバーに限られてしまう。ロードスターはあらゆる人の走る歓びを支え、提供してくれる懐の深いクルマなのだ。
ハイブリッドや電動モデルが主流となるこれからの時代、どこまでロードスターが販売されるかは分からないが、その進化には、引き続き期待していきたい!!
【画像ギャラリー】唯一無二のクルマ!! マツダ「ロードスター」の最新モデル(20枚)
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