現在位置: carview! > ニュース > ニューモデル > 毎日が特別になる マクラーレンGT(最終回) 長期テスト 普段の道で感じる喜び

ここから本文です

毎日が特別になる マクラーレンGT(最終回) 長期テスト 普段の道で感じる喜び

掲載
毎日が特別になる マクラーレンGT(最終回) 長期テスト 普段の道で感じる喜び

積算5236km V8ミドシップで長距離通勤

ちょっとしたコトをきっかけに、面白い毎日が始まることもある。まだ寒かったある日、AUTOCARのオフィスにいると、デスクのPCに同僚から短いメッセージが届いた。

【画像】普段の道でも感じられる喜び マクラーレンGT 最新スーパーカーのアルトゥーラも 全107枚

「マクラーレンGTの長期テストをやってみたいと思いませんか?」。ボンヤリしていた頭が、一気に冴えたのを覚えている。この仕事は、普通なら難しいであろうモデルにも乗ることができる。それでも、マクラーレンは特別だ。

それから数か月後、マクラーレンGTの長期テストを終え、目の前から消えてしまったその日は暗い1日になった。鮮やかなベリーズ・ブルーに塗られたスーパーカーが停まっていない自宅の前は、灰色に淀んで見えた。

初日がバラ色だったわけではない。マクラーレンのグランドツアラーで毎日の長距離通勤をこなすのだから、不安は多かった。エキサイティングに思えたことは、確かではあるけれど。

カーボンファイバー製のタブシャシーに、ミドシップされたV8エンジン。低い位置に据えられた2脚のバケットシート。朝晩の通勤には、適したパッケージングとは感じられなかった。

マクラーレンGTが得意とすることは、急ぎ足の長距離クルージング。ゆったりとシートを傾け、南フランスを目指すようなクルマといえる。その目的に特化している。

クルマへ近づき乗るだけでも非日常的

ところが1週間ほど付き合ってみると、懐の深いモデルであることが見えてきた。トラディッショナルなグランドツアラーではないにしろ、普段使いにも対応できる柔軟性を備えていた。長距離通勤にも問題はなかった。

むしろ、大胆に開くディヘドラル(通称ガルウイング)ドアが、ロングドライブへの気持ちを高ぶらせてくれた。毎朝、クルマに近寄るという行為自体が記憶に残るものだった。

退屈な玄関のドアを開くと、20mほど先にマクラーレンが停まっていた。滑らかなフォルムを一通り眺め、マクラーレンのロゴが付いた非接触キーのボタンをあえて押し、ドアを開いて低いシートに身体を滑らせる。

思い出すだけで笑顔になる。四角いミニバンや背の高いSUVでは、これほど劇場的な体験は得られないだろう。

クルマへ乗るだけでも非日常的。毎日繰り返しても、面倒なことは一切なかった。ただし、筆者は違うが、180cmを超えるような人は乗り降りが大変かもしれない。

日常的な道でも喜びを感じる瞬間がある

スーパーカーで混雑した一般道を走る時は、気持ちを鎮めている必要がある。それでも、普段の通勤路が違って感じられた。カーブを描くいつもの道が味わい深いものになった。

エンジンは他のマクラーレン製スーパーカーと同じ、4.0LのツインターボV8。GTの場合は、620psと64.1kg-mを発揮する。車重は1530kgだから瞬発力はすこぶるイイ。

それ以上に好きになったのが、操舵感と乗り心地。グランドツアラーらしく快適で、薄い扁平タイヤでも路面の凹凸をしっかり吸収できていた。そして自分以外の道路利用者の姿が消えれば、豊かな充足感で満たしてくれた。

油圧式のパワーステアリングは、速度域に関係なく生々しい感触を手のひらに伝達。適度なボディロールが生じ、合法的な速度でもカーブを堪能できた。

マクラーレンGTを謳歌するのに、特別な場所までドライブする必要はない。日常的な移動でも、喜びを感じる瞬間を得られた。筆者が、このクルマで1番感銘を受けた特長だ。

高速の一定速度走行なら燃費も悪くない

維持費も案じたほどではなかった。約4800kmの走行距離なら、タイヤの残り溝の心配や、メカニズムの整備は必要なし。燃費は平均で8.2km/Lと、4.0Lエンジンであることを考えれば想像以上だろう。

ちなみに、マクラーレン720 Sを所有する筆者の友人は、正規保証を延長して乗っている。それが外れると、整備費用や部品代は恐ろしい額に登るらしい。

平均6.0km/L以上で走るという事前の約束があったとはいえ、高速道路を定速で走らせる運転パターンが燃費を伸ばしたのだろう。低い回転数にエンジンを保ち、ATを7速に入れたまま110km/h前後で走らせれば自然と効率は良くなる。

もちろん、ドライブモードをトラック(サーキット)に切り替えてMTモードで運転すれば、燃費は簡単に悪くなる。実際、V8エンジンへ沢山のガソリンを送り込んだこともゼロではない。

路面コンディションや交通量などの条件が揃い、アクセルペダルを5分間ほど自由に踏める場面が稀にあった。マクラーレンで終始我慢し続けるなんて、無理な話だと思う。驚きと喜びを1度味わってしまうと、脳裏から離れなくなる。

マクラーレンGTに乗っていた間、他のモデルが恋しくなることは一切なかった。デスクのPCは、こまめに確認することにしよう。また同僚からお誘いのメッセージが届くかもしれない。

セカンドオピニオン

マクラーレンというブランド力に、通行人を振り向かせるエグゾーストノート。注目を集める鮮やかなボディカラー。久しぶりにやって来た、多くのクルマ好きを笑顔にする長期テスト車だったと思う。

ベントレー・コンチネンタルGTやフェラーリ・ローマといった、別のグランドツアラーでは、これほどの好感は得られなかったかもしれない。特有のキャラクターだった。 Mark Tisshaw(マーク・ティショー)

テストデータ

気に入っているトコロ

注目度の高さ:英国でも、市街地を走っているマクラーレンの姿を目にすることは稀。
ボディカラー:メタリック・エフェクトの入った鮮やかなブルーは、光の当たり方で見え方が変化する。特に夜は素敵に映った。
ホイール:オプションのダイヤモンドカット・アルミホイールは、選ぶ価値がある。傷から守るために、縁石から離して止める必要もある。

気に入らないトコロ

バックカメラ:美しいスタイリングのためにバックカメラが装備されていたが、冬場は特に汚れやすく感じた。
ナビゲーション:英国仕様のものは、時々いうことを聞かなくなる。アップル・カープレイにも対応していなかった。

走行距離

テスト開始時積算距離:753km
テスト終了時積算距離:5236km

価格

モデル名:マクラーレンGT ルクス(英国仕様)
新車価格:16万3000ポンド(約2689万円)
現行の価格:16万3000ポンド(約2689万円)
テスト車の価格:17万2170ポンド(約2840万円)

オプション装備

ベリーズ・ブルー・エリート塗装:4000ポンド(約66万円)
パノラミック・プライバシー・ガラスルーフ:1750ポンド(約28万9000円)
グラスブラック・ダイヤモンドカット・アルミホイール:1650ポンド(約27万2000円)
ポリッシュド・スペシャルカラー・ブレーキキャリパー:1270ポンド(約21万円)
プライバシー・ガラス:500ポンド(約8万3000円)

燃費&航続距離

カタログ燃費:8.4km/L
タンク容量:72L
平均燃費:8.2km/L
最高燃費:11.5km/L
最低燃費:6.1km/L
航続可能距離:589km

主要諸元

0-100km/h加速:3.3秒
最高速度:326km/h
エンジン:V型8気筒3994ccツイン・ターボチャージャー
最高出力:620ps/7500rpm
最大トルク:64.1kg-m/5500-6500rpm
トランスミッション:7速オートマティック
トランク容量:150L(フロント)/420L(リア)
ホイールサイズ:20インチ8.0J(フロント)/21インチ10.5J(リア)
タイヤ:255/35 ZR20(フロント)/295/30 ZR21(リア)
車両重量:1530kg

メンテナンス&ランニングコスト

リース価格:−
CO2排出量:270g/km
メンテナンスコスト:なし
その他コスト:2556ポンド(約42万円/スタッドレスタイヤ)
燃料コスト:832.6ポンド(約13万7000円/ガソリン)
燃料含めたランニングコスト:832.6ポンド(約13万7000円)
1マイル当りコスト:0.30ポンド(約50円)
不具合:なし

こんな記事も読まれています

ラリージャパン2024の来場者数が発表。4日間合計54万3800人で前年を上回る
ラリージャパン2024の来場者数が発表。4日間合計54万3800人で前年を上回る
AUTOSPORT web
おじさん気軽に投票!! 今年の10台からどれを選ぶ!?  [クルマ総選挙 新車編]最終選考開始
おじさん気軽に投票!! 今年の10台からどれを選ぶ!? [クルマ総選挙 新車編]最終選考開始
ベストカーWeb
燃費はプリウス超え???? [次期型カローラ]は内燃機関の未来を背負って2026年に登場か!!!!
燃費はプリウス超え???? [次期型カローラ]は内燃機関の未来を背負って2026年に登場か!!!!
ベストカーWeb
2025年MotoGP暫定エントリーリストが発表。ヤマハは3年ぶりの4台体制、國井がMoto2へ参戦
2025年MotoGP暫定エントリーリストが発表。ヤマハは3年ぶりの4台体制、國井がMoto2へ参戦
AUTOSPORT web
新型[NSX]は1000馬力オーバーか!? ホンダが全固体電池搭載のハイパーBEVを投入する可能性大 
新型[NSX]は1000馬力オーバーか!? ホンダが全固体電池搭載のハイパーBEVを投入する可能性大 
ベストカーWeb
大ヒット予想!! マツダ[新型CX-5]が超絶進化! ハイブリッドモデル登場でしかも安いなら期待大!!
大ヒット予想!! マツダ[新型CX-5]が超絶進化! ハイブリッドモデル登場でしかも安いなら期待大!!
ベストカーWeb
3万7000台も売れたロールス・ロイス! 10年の予定が30年以上も貢献した「シルバーシャドウ」とは一体どんなクルマだった?
3万7000台も売れたロールス・ロイス! 10年の予定が30年以上も貢献した「シルバーシャドウ」とは一体どんなクルマだった?
Auto Messe Web
トヨタのラリー育成は4名全員がプログラム継続。3期生の松下、後藤はラリー3にステップアップ
トヨタのラリー育成は4名全員がプログラム継続。3期生の松下、後藤はラリー3にステップアップ
AUTOSPORT web
新生EVツーリングカーの2年目に向け、2025年STCCカレンダー発表。ヨーテボリ市街地を含む全5戦に
新生EVツーリングカーの2年目に向け、2025年STCCカレンダー発表。ヨーテボリ市街地を含む全5戦に
AUTOSPORT web
なぜ「モータースポーツ新会社」設立? GRとは違う「TGR-D」誕生!? トヨタ会長が語る会社分割の狙いとは
なぜ「モータースポーツ新会社」設立? GRとは違う「TGR-D」誕生!? トヨタ会長が語る会社分割の狙いとは
くるまのニュース
エリーゼを「徹底」レストモッド! アナログ・オートモーティブ・スーパースポーツへ試乗 ローバーKは維持
エリーゼを「徹底」レストモッド! アナログ・オートモーティブ・スーパースポーツへ試乗 ローバーKは維持
AUTOCAR JAPAN
ベントレーがストリート感漂う「PICANTE」とコラボしカプセルコレクションを発売! テーマは「旅」…懐メロも入ったプレイリストも公開中
ベントレーがストリート感漂う「PICANTE」とコラボしカプセルコレクションを発売! テーマは「旅」…懐メロも入ったプレイリストも公開中
Auto Messe Web
2025年のMotoE暫定カレンダーが発表。ハンガリー大会が新たに追加も年間7大会14レースに減少
2025年のMotoE暫定カレンダーが発表。ハンガリー大会が新たに追加も年間7大会14レースに減少
AUTOSPORT web
「早く月曜日になってくれ」勝田貴元が明かすシート喪失の重圧と、来季決定の瞬間/ラリージャパン
「早く月曜日になってくれ」勝田貴元が明かすシート喪失の重圧と、来季決定の瞬間/ラリージャパン
AUTOSPORT web
2025年ジャパンカップのエントリー受付がスタート。3月にはプレシーズンテストも開催へ
2025年ジャパンカップのエントリー受付がスタート。3月にはプレシーズンテストも開催へ
AUTOSPORT web
“エンジンルーム”に「謎のスピーカー」搭載!? なんのため? 新型「Gクラス」に備わるユニークな機能とは
“エンジンルーム”に「謎のスピーカー」搭載!? なんのため? 新型「Gクラス」に備わるユニークな機能とは
くるまのニュース
“オーバーフェンダー”が高性能車の証! メルセデスAMGのド迫力クーペ「CLE53」はサーキットも視野に入れた「生まれながらの武闘派」
“オーバーフェンダー”が高性能車の証! メルセデスAMGのド迫力クーペ「CLE53」はサーキットも視野に入れた「生まれながらの武闘派」
VAGUE
次期型BMW iX3 「ノイエ・クラッセ」初のモデル、試験生産開始 2025年投入
次期型BMW iX3 「ノイエ・クラッセ」初のモデル、試験生産開始 2025年投入
AUTOCAR JAPAN

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

2695.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

1880.03258.0万円

中古車を検索
GTの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

2695.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

1880.03258.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村