妙高高原で体験、軽トラ・オフィス
text:Kenji Momota(桃田健史)
【画像】大変身?【ダイハツが手掛けた進化版ハイゼット】 全137枚
editor:Taro Ueno(上野太朗)
「おぉー、実物はけっこう迫力あるな」
ここは、新潟県妙高(みょうこう)高原。上信越自動車のインターチェンジ近くにある、エネオスのガソリンスタンドだ。
筆者の目の前にあるのは、ダイハツの軽トラのハイゼット・トラックなのだが、荷台にはアルミパネルのような大きな箱が載っている。
このガソリンスタンドのオーナーで、株式会社コバネン代表取締役の小林隆浩氏は「ご予約は明日朝8時ですが、いまお時間があるなら、車両説明とレンタル契約書の記入を先にしておきましょう」と、声がけしてくれた。
この車両は、「妙高市モバイルワークステーション実証試験」向けにダイハツが独自開発したもの。
2021年1月12日から3月31日までの約2か月半、ニコニコレンタカーを通じて誰でも借りることができる。こちらがニコニコレンタカー妙高高原店も兼ねており、車両の受け渡しもする。
小林氏は、手慣れた感じでボックスの助手席側にあるノブを操作し、ボックスの側面を押し上げると、ボックス上部も一緒に大きく開き、ボックスの中から対面式の椅子と机が姿を現した。
なるほど、ダイハツが公開している資料で見た時のイメージより、実物はしっかりしたつくりで、空間も広そうだ。
ダイハツが実証実験をおこなう
「この棒で、もう少し上まで押して頂き、完全にハッチを開いて頂き、あと、備品のモニターやブルー・トゥース・スピーカーはこちらで。ポータブルバッテリーは明日の朝、積みます。それからワイファイ・ルーターは助手席に置いてあります」と、小林氏が説明を続けた。
この日は、妙高高原から日本海側に下り、えちごトキめき鉄道・新井駅近くのホテルに宿泊した。
翌朝、気温は低めだが市街地では雪は降っていない。だが、妙高高原に向かっていくと途中から路面は完全に雪で覆われ、きのうのガソリンスタンドに着くとスタンド敷地内にも数cmの積雪があり、小林氏は大型の除雪車を操っていた。
店内に入ると、税所賢伍(さいしょけんご)氏が待っていた。
ダイハツのコーポレート統括本部・新規事業戦略室の方で、この実証のためにすでに数か月間、平日は妙高高原を拠点に活動しているという。
ダイハツが本事業をおこなう理由については、すでにダイハツ本社広報部を通じて情報を得ていたが、地元での実証に対する雰囲気など肌感覚を、税所氏からお聞きした。
そして、体験するおすすめスポットを聞くと、ガソリンスタンドからクルマで15分ほどの妙高杉ノ原スキー場まで、先導していただけることになった。
意外に使える! でも……
このハイゼット、運転席はノーマル仕様で4WDのAT車だが、ここまで深い雪で、しかも荷台に約200kgの大物がある状態で動かすとなると、はたしてしっかり走れるのか、ちょっと不安だった。
ところが驚いたことに、勾配のある坂道でもタイヤが空転することなくグイグイと登っていくではないか。
スキー場内の駐車場では深い新雪の中をドンドン進んでいく。あらためて、軽トラの威力を思い知った。
さて、税所氏と一緒にモバイルワークステーションを準備してみたのだが、「いや~、やっぱり寒過ぎる!」
外気温はマイナス3度。外から雪が入ってくる。
そこでハッチを下げて、装備品の電気毛布で下半身を温めると、室内に暖房はないが、なんとかパソコン操作ができそうだ。
感染予防のため、会話を控えた状態だったが、天井との隙間はあまり大きくなくても、こうした対面式シートだと、オフィスっぽい雰囲気で仕事モードになれると感じた。
とはいっても、やはり寒いので場所を変えることにした。
次の場所は、きのう宿泊したホテルに近い市街地にある「MYOKO COFFEE」北新井店の駐車場だ。こちらの路面に雪はなく気温も4度なので、電気毛布があればハッチを開けた状態でも仕事に集中できた。
ビジネスモデルになるか?
まずは本稿の前半部分を書き、メールやフェイス・ブックを通じた業務連絡をしたり……。
周囲を通行するクルマの中からこちらに向けた視線を感じるものの、それが逆に良き刺激になった。「MYOKO COFFEE」のブレンドコーヒーとバナナブレッドを軽食として購入し、車内でしばし1人で仕事を続けた。
次は、ガソリンスタンドに近くにある、妙高市の多目的ホールの妙高高原メッセの駐車場に移動した。
すると同施設の関係者が「これ、新聞で見たクルマだ。なるほど、実物はけっこう迫力がある。で、ちょっとお聞きしたいが……」と、車両詳細についてあれこれ質問してきたので、筆者がわかる範囲で回答した。
今回は6時間プラン(2420円)、フルカバーの保険料が2200円、それに返却時の満タン返しでガソリン代500円弱。
そのほか、12時間プランは2635円、24時間プランは4070円と、実証試験ならではのお手頃な価格設定だ。
最近流行のワーケーションの一環とはいえ、わざわざ雪国の冬場に、わざわざ屋外で、軽トラの荷台で働くなんて、いったいどんな気持ちになるのやら……。
そう思って実際に体験してみたが、気分転換になるし、ちゃんと働ける。
これからどのように継続的なビジネスモデル化するのかなど、課題は多いと思うが、軽トラのポテンシャルをフル活用する良きアイディアであることは間違いない。
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みんなのコメント
わざわざ軽トラの荷台に上がってやる程のメリットがないと思う