ライトウェイト・2シータースポーツを極めたロータス・ヨーロッパ
1970年代後半から1980年代にかけて巻き起こったスーパーカーブームでは、ランボルギーニ・カウンタックとフェラーリ512BBの2トップを筆頭に、3~4Lかそれ以上の大排気量で、V12などマルチシリンダーのエンジンをミッドシップに搭載したモデルの人気が急上昇しました。
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その一方で、ブームをけん引した漫画『サーキットの狼』の主人公が駆っていたこともあって、ロータス・ヨーロッパの人気も急上昇していました。車重は665kgでコンパクトなボディは全長と全幅、全高がそれぞれ4000mm×1638mm×1080mm。とくに全高の1080mmという数字は、小学校低学年の平均身長よりも低いほどでした。大柄なスーパーカーのなかにあって、ふたまわり以上も小さな、ライトウェイト・2シータースポーツを極めたロータス・ヨーロッパを振り返ります。
廉価でもドライビングを楽しめるピュアスポーツ
ロータス・ヨーロッパが登場したのは1966年の12月で、1957年に登場したロータス・セブンの後継として開発されたものでした。もっともセブン自体はシリーズ1からシリーズ4まで改良を重ねながら1973年まで現役として販売が続けられていて、1967年から1973年までは新旧2台のライトウェイトスポーツが併売される恰好でした。
それはともかく、それまでのロータス車と同様に、ヨーロッパの開発はコリン・チャップマンが指揮を執っていました。レースの現場に立ち続ける一方で、ライトウェイトスポーツを作り続けたチャップマンは、スポーツカーにとって永遠の正義である軽量コンパクトを追求すると同時に、最新の技術を取り入れることも忘れていませんでした。
エンジンをミッドマウントしたことはその好例でした。また、セブンではスペースフレームで仕上げられたシャシーを使用していましたが、ヨーロッパでは一転し、1962年に登場したエランでノウハウが蓄積されていたプレス製のバックボーンフレームを採用。
もちろんフロントにエンジンを搭載するエラン用とは前後逆で、Y字型の開放部分を後方にして、そこにエンジンを搭載するというものでした。またセブンのサスペンションは、フロントのダブルウィッシュボーンはともかく、スペースフレームの後方にリジッドアクスルを吊ったリヤサスペンションは、スポーツカーを名乗るにはロースペック過ぎました。
またミッドシップエンジンを搭載することにより独立懸架としやすくなったことからヨーロッパでは、ダブルウィッシュボーン式のフロントに加えて、リヤサスペンションもパイプ製のIアームと鋼板を溶接したラジアスアームでロアを構成。ドライブシャフトがアッパーアームを兼ねるスタイルの独立懸架となっていました。
このフレームに搭載されたエンジンはルノー16用の1.5L直4プッシュロッド。まさに1980年代半ばに、アイルトン・セナがドライブしF1GPで大活躍したロータス・ルノーの始祖(!?)と言ってもいいかもしれません。
それはともかく、ベースエンジンでは最高出力も55psに過ぎず、ロータスで独自のチューニングを施しても82psと、スーパーカーと呼ぶには気が引けるものでしかありませんでした。それでも、このシャシーに架装されるボディが、コンパクトな2ドア。しかもガラス繊維強化プラスチック、いわゆるFRPで成形されたもので、オリジナルの式型ではサイドウインドウもはめ殺しとするなど、ストイックさを地で行くような内容となっており、車重も700kgを切る超軽量級で、まずまずのパフォーマンスを実現することになりました。
何よりもハンドリングの素晴らしさが群を抜いていて、ワインディングでの速さはヨーロッパの大きな魅力です。廉価でもドライビングを楽しめるピュアスポーツという、チャップマンの掲げるコンセプトを見事に具現化していました。
サーキットでも活躍! F1をオマージュしたカラーリングも登場
1966年に登場したロータス・ヨーロッパは、1957年に登場したセブンの後継モデルであることは先に触れましたが、ロータスの一連の開発ナンバーで言うとセブンが7番であるのに対してヨーロッパは46番。9年間で39台もの“新車”を開発していたことになりますが、その辺りはロードゴーイングカーだけでなくF1マシンから市販のミドルフォーミュラまでを生産していたロータスならではです。
ヨーロッパに関しては1966年のシリーズ1が46番で、1968年に登場したシリーズ2が54番となっています。ですが、じつはヨーロッパにはレーシングカーが派生していて、1966年の年末にはシリーズ1と同時に開発されていた47番、通称“47・ヨーロッパ”と呼ばれるレース仕様(とホモロゲーションモデル)がありました。
これはロータスが自前で開発した1.6Lツインカムエンジンを搭載するGTクラスのレーシングカーで、1968年にはグループ4のホモロゲーション(車両公認)を受けていました。前年までの国際スポーツカー選手権から国際メーカー選手権へと衣替えした、スポーツカーによる世界選手権のシリーズ第3戦、ブランズハッチで行われたBOAC 500kmでは、クラス2位のポルシェ・カレラ6に2周の大差をつけて2L以下のグループ4を制しています。
翌1969年には、待望の2Lエンジンを搭載した“62・ヨーロッパ”が登場していますが、これはフレームをスペースフレームに置き換えたまったくの別物。グループ4のGTカーではなくグループ6のレーシングスポーツカーで、1969年のBOAC 500kmでは2L以下のグループ6を制しています。また1970年代後半から1980年代序盤に人気を博していたグループ5、いわゆる“シルエットフォーミュラ”にもザクスピードでターボでチューンしたコスワースBDAエンジンを搭載するマシンが参戦していました。
70年代にデビューしたモデルからはツインカムエンジンを搭載
話をロードゴーイング仕様に戻しましょう。1971年には開発ナンバー74番のヨーロッパ・ツインカム(TC)が登場しています。文字通りツインカム・エンジンを搭載したことが大きな特徴で、エランに搭載されているものと同じロータス-フォード・ツインカムと呼ばれる1558ccの直4ユニットです。最高出力は105psと、ルノー16用に比べて 3割近くパワーアップされていました。
もうひとつの大きなエポックは、リヤのフィンが削られたこと。空力処理の意味合いもあったリヤのフィンは、斜め後方の視界が悪いと不評を買っていたユーザーの声に応える恰好でした。ちなみにそれまでのフィンを生やしていたモデルには、まるでパン屋さんが配達に使うパネルバンのように見えることから“最速のブレッドバン”のニックネームがありました。フィンを削った以降は、このニックネームも“最速のピックアップ”に変わっていました。
さらに1972年9月には、最終型となるヨーロッパ・スペシャルが登場しています。こちらは開発ナンバーは74番のまま、ビッグ・バルブ・ユニットと呼ばれる、エラン・スプリントにも搭載されていた126psエンジンが搭載されています。
また同年のF1GPでチャンピオンに輝いたチーム・ロータスの、JPSカラーをイメージさせるようなブラックにゴールドのピンストライプの走るボディカラーに仕立てられていました。当初の予定だとこのカラーリングは200台限定の計画でしたが、結局は1975年に生産が終了するまで継続され、さらにブラックだけでなくブリティッシュ・グリーンなどにもピンストライプが加えられるようになり、3130台のスペシャルが生産されることになりました。
モデルライフとしては10年足らずと長くはなく、またパワー的にも最終モデルでさえ126psに過ぎませんでした。ですが、最終モデルでも車重は730kg、オリジナルモデルではわずか665kgと現在の軽自動車並に抑えられていて、またボディがコンパクトなことも特筆レベルでした。軽量コンパクトは、とくにスポーツカーにとっては永遠の正義であることを訴えていて、さすがはコリン・チャップマン、と思わずにはいられません。
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みんなのコメント
あれは、ライトウエイトのスポーツカーです。