近代ハイグリップタイヤのパイオニアが刷新!
2023年のSBK開幕戦観戦を終えた翌日の月曜日は、待ちに待ったピレリ ディアブロ スーパーコルサV4の試乗会。今回はアジア各国から様々なライダーが参加。第四世代となったスーパーコルサの実力とは?
【2023年SBK開幕戦を観戦。改めてピレリの強さを知る】ピレリ ディアブロ スーパーコルサが第四世代のV4に進化!Vol.1
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日本では考えられない高速セクションで抜群のフィット感を約束
「なんとかもって欲しい……」どんよりとグレーががかった空と海の曖昧な境界線が気分を落ち込ませる。SBK決勝翌日の月曜日の朝は、日曜日の晴天が羨ましくなる、なんとも怪しい天気だった。フィリップアイランドのパドックはSBK開幕戦の余韻が残る撤収作業の真っ最中だが、ピットではピレリ ディアブロ スーパーコルサV4 SC1とSPを履いたBMW S1000RRが迎えてくれた。他にドゥカティのパニガーレV4Sも1台だけ用意されていて、天気の心配で落ちた気分が上がっていく。
僕はフィリップアイランドを走るのは2回目。前回は2017年のGSX-R1000Rの試乗会だった。ただ、正直なところコースレイアウトは曖昧で、覚えているのは超々ハイスピードコースだということだけ。ちなみに新型のS1000RRに乗るのももちろん初めて。慣れないコース、慣れないバイクだが、スーパーコルサV4 SC1を履いたS1000RRは僕にフィットし、冴え冴えしたコーナリングを見せてくれた。
コースインした直後に印象的だったのはラインのトレース性の高さだ。超ハイスピードコースのフィリップアイランドはラインを外すとバイクの挙動が顕著に乱れたりするのだが、比較的思ったラインを通ることができる。タイヤを冷やさないように、それなりに荷重を与える走りを意識する。
タイヤからのインフォメーションは豊富で、そのフィーリングがいかにもスーパーコルサらしい。タイヤが何かを主張するわけではなく、そのバイクの持っているスポーツ性を上乗せしてくれているようなイメージだ。ライダーの操作をグリップに変換し、ペースアップを許容してくれる。フィリップアイランドは実はブラインドコーナーも多く、そんなシーンでは荷重をイン側に預けるほどにグイグイと旋回性を高めてくれるからいつでもリカバーできるイメージだ。
「ふー……」。1本目を終えると、あまりのスピード感に頭がクラクラしており深い呼吸をしている自分がいた。それでも1本目を走り終えただけで、目と身体がかなりフィリップアイランドに順応した気がした。そして不思議なことに疲労感はほとんどない。S1000RRの運動性とスーパーコルサV4 SC1が僕をサポートしてくれているのは間違いない。
―― 今回の試乗会ではディアブロ スーパーコルサ SC1を履いたS1000RRに試乗。1周目から高いフィット感を約束してくれた。
非日常の極地とも言えるコーナリングを楽しむ
雲行きは相変わらず怪しいので、2本目は早々にペースアップ。まだ行ける! と気持ちが盛り上がり、身体の中から力が湧いてくる。同時にバイクもイキイキとしてくるような感覚を味わう。このバイクからのフィードバックは、最高に気持ちがいい。こんなに気持ちを盛り上げてくれるタイヤなのにスーパーコルサV4 SC1は、やっぱり特に何かを主張してくるわけではなく、あくまでもライダーの操作を感じ取ることに徹し、正しい操作をすればどこまでも真摯に応えてくれるのだ。
タイヤが良いとライダーの感受性がどんどん研ぎ澄まされていくような気がしてくる。メインストレートから1コーナーにかけてはブラインドになっていて、メーター読みで270Km/hほどからスロットルを戻し、ブレーキングポイントを探す。ちなみに2022年のMotoGPのトップスピードはドゥカティを駆るエネア・バスティアニーニの356.4km/h(多分実測だと僕と100km/hくらい違う!)で、2023年のSBK開幕戦の最高速はドゥカティ パニガーレV4Rを駆るダニロ・ペトルッチの333.3km/hだから、改めてプロの凄さを実感。
そこから2コーナーに向けて加速。2コーナーの進入は登っているブラインドで少しラインを外すとフロントタイヤが暴れるコーナー。入り口からずっと膝を擦り続け、コーナー後半は荷重をイン側に集中させ、バイクを起こしてスロットル全開のまま4速、5速にシフトアップしていく。
次はフィリップアイランドでもっとも高速であるケイシー・ストーナーコーナー。5速全開から少しスロットルを戻して向きを変えてバンク、膝を擦っているときにメーターを見たら220km/hだった。でもここからすぐにスロットルは全開。それは非日常の極地とも言えるシチュエーションである。
しかし、そこに怖さはなく、僕はなぜか自信を持ってフィリップアイランドに挑めていたのだ。これは前後タイヤからの正確なフィードバックがあったからで、破綻してしまうそうな気配は微塵もないのである。
―― ピレリの二輪の責任者であるシルビオ・フラーラさんと。そして今回のアジアローンチに参加した面々と。
度々ときめかせてくれるスーパーコルサV4 SC1
3本目の走行はコースイン早々に雨が降ってきて、走行は1時間ほど中断。再開してからの走行でもう少しだけペースアップしてみて印象的だったのはフロントタイヤで、ブレーキ操作に対するフィードバックやリーンのタイミングなど、これまで以上に仕事をしてくれているような印象がある。ブレーキを残したままでもしなやかに路面を追従し続け、向きを変えるタイミングで重さがない。フルブレーキングするシーンでは物凄いバランス感覚を発揮。その振る舞いには感心するしかなかった。
最終コーナーのアプローチはシフトアップしながら中途半端なバンク角で加速していく、難しいシチュエーション。しかしスーパーコルサV4 SC1は、トラクションコントロールを介入させながら、綺麗に速度を乗せていく。その走りは気持ち良さだけでなく、速さに直結している力強さも持っているような気がした。
その後は天候が崩れ、試乗会は終了。スーパーコルサV4 SPに乗ることができなかったり、少し高めに感じた空気圧(フロントが250kPa、リヤが230kPa)を調整することはできなかったけれど、ファーストインプレッションはとても好印象。日本の走り慣れたサーキットでパフォーマンスを確認しつつ、色々と試して見たいと思った。
―― DIABLO SUPERCORSA V4 SC
フロント
110/70R17 54V SC1/SC3
120/70R17 58V SC1/SC2/SC3
リヤ
120/70R17 58V SC1
140/70R17 66V SC1/SC3
150/60R17 66V SC3
180/60R17 75V SC1/SC2/SC3
190/55R17 75V SC2
200/55R17 78V SC1/SC2/SC3
200/60R17 80V SC1/SC3
―― DIABLO SUPERCORSA V4 SP
フロント
110/70ZR17 54W
120/70ZR17(58W)
リヤ
140/70ZR17 66W
150/60ZR17 66W
180/55ZR17(73W)
180/60ZR17(75W)
190/50ZR17(73W)
190/55ZR17(75W)
200/55ZR17(78W)
200/60ZR17(80W)
―― スーパーコルサV3 SC3と新しくなったV4 SC3を比較したチャート。すべての領域でV4が突出しているのがよくわかる。
―― S1000RRにスーパーコルサV3 SC3とV4 SC3を履いてタイム計測したイメージ。約2.5kmのコースで0.8秒もタイムを短縮。スロットル全開率なども向上しているのがわかる
―― スーパーコルサV4 SCは3つのコンパウンドを用意。SC1のフロントは接地感重視で、リヤはパフォーマンス重視だが、路面温度が低い時や荒れた路面には向かない。SC2のフロントは安定性重視で、リヤは路面温度や低い時や荒れたアスファルトでもパフォーマンスを発揮。SC3はロングライフでタイヤウォーマーを使わなくても性能を発揮でき温度依存がもっとも低い。様々な組み合わせから理想のタイヤを選びたい。
―― SPは、レース用のSCよりも温度依存性が低く、ウォームアップ性が早く、耐久性も考慮されている。前後にデュアルコンパウンドを採用し、ショルダー部分はSC3コンパウンドを奢る。プロファイルはSCと変わらない。
―― 第四世代となったディアブロ スーパーコルサを、早く日本のサーキットでも試して見たいと思う。
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