現在位置: carview! > ニュース > スポーツ > ”耐久王者”ポルシェの撤退にライバルメーカーたちが反応「WECにとっては悪いニュースだ」

ここから本文です

”耐久王者”ポルシェの撤退にライバルメーカーたちが反応「WECにとっては悪いニュースだ」

掲載 22
”耐久王者”ポルシェの撤退にライバルメーカーたちが反応「WECにとっては悪いニュースだ」

 ポルシェは、先日のバーレーン8時間レースで終了した2025年シーズンを持って、世界耐久選手権(WEC)のハイパーカークラスから撤退。この決定について、ライバルメーカーから悲しむ声が相次いでいる。

 ル・マン24時間レース最多19勝を誇り、耐久の王者とも称されるポルシェ。2023年からLMDh車両の963をWECと北米のIMSAスポーツカー選手権に投入した。しかしわずか3シーズンでプログラムを縮小。WECハイパーカークラスから撤退することとなった。
 
 この決定は主に財務上の圧力によるもの。中国での売り上げ低迷とEV普及の鈍化が同社の今年第3四半期の11億ドル(約1700億円)の損失の一因となった。

■WECでの世界王者がかかるロバート・クビサを、同世代ライバルのハミルトンが称賛「彼はF1チャンピオンになれた」

 また、ポルシェはWECの性能調整(BoP)のプロセスに不満を募らせており、LMHとLMDhを統一規則に統合することを最も強く主張しているメーカーのひとつとなっている。

 ポルシェは来年もIMSAで963のプログラムを継続する予定であり、将来的なWEC復帰の可能性も否定していない。

フェラーリ

 フェラーリの耐久レースカー責任者であるフェルディナンド・カニッツォは、ポルシェの撤退はWECにとって後退であると認めたが、自動車界とモータースポーツ界の両方における長年のライバルが今後数年のうちにこのカテゴリーに復帰することを期待している。

「これはチャンピオンシップにとっても、スポーツにとっても、そして我々にとっても良いニュースではない」と彼はバーレーンで語った。

「我々がライバルの決断を尊重しているのは明らかだ。我々の夢は、今後数年のうちにポルシェが再びWECに参戦することだ」

「ポルシェとフェラーリは、耐久レースにおいて大きな伝統を持つふたつのメーカーだ。パドックにいるすべてのメーカーにとって、将来再びポルシェの活躍を目にすることが夢なんだ」

アルピーヌ

 アルピーヌの耐久レース部門を率いるフィリップ・シノーは、カニッツォの意見に同調しつつ、ポルシェの決定は現在の状況下で自動車メーカーが直面している困難を浮き彫りにしていると指摘した。

「確かに悪いニュースだ。ポルシェのようなブランドは耐久レースの世界の一部だ」とシノーはmotorsport.comに語った。

「アルピーヌは戦いを望んでいる。アルピーヌの歴史において、ラリーや耐久レースでは常にポルシェと戦ってきた。そのニュースを受け取ったとき、我々はとても悲しくなった」

「しかし、それは我々の新しい世界の一部であり、特に自動車業界ではそうなのだ。時には彼らはそれを止めようと決断する」

トヨタ

 ポルシェ、トヨタ、アウディのライバル関係はLMP1時代のハイライトであり、2010年代半ばにはこの3メーカーが激しく争っていた。

 ハイパーカーカテゴリーの新設に伴いポルシェがWECのトップクラスに復帰したことでトヨタとのライバル関係が再燃し、2024年にはポルシェがドライバーズ、トヨタがマニュファクチャラーズとタイトルを分け合うことになった。

 ポルシェのWEC撤退について問われたTGR-E副会長の中嶋一貴はmotorsport.comに対し、「悲しいニュースですが、同時にこの3年間、WECでポルシェのようなビッグブランドと共闘できたことは幸運でした。私たちにとって光栄なことでした」と語った。

キャデラック

 ポルシェはペンスキーと提携してファクトリーチームを運営するほか、IMSAやWECの他のチームにもカスタマーカーを供給している。

 これまでで最も成功したポルシェのプライベーターはJOTAだ。JOTAは2023年と2024年にポルシェ963を走らせていたが、今季はキャデラックと提携し、ファクトリープログラムを運営しているため、マシンをスイッチしていた。

 JOTAのチーム代表であるディーター・ガスは、ポルシェがハイパーカープログラムを縮小するという決定はWECにとって「残念なこと」だと述べた。

「もちろん、ポルシェは耐久レースの一部であり、彼らは長年にわたり活躍してきた」

 アウディのモータースポーツプログラムを率いたり、トヨタのF1チームで活躍した経歴を持つガスはmotorsport.comにそう語った。

「市場にとってもシリーズにとっても重要な名前だ。だからこそ、シリーズにとって残念だ」

「個人的には、ここ数年間、一緒に多くの仕事をしてきたプロジェクトマネージャーのウルス・クラトレが、もうチャンピオンシップにいないのは残念だ。彼はとても気さくな人で、一緒に仕事をするのが本当に楽しいレーサーだった」

BMW

 ポルシェは、2022年にまだ開発段階にあったLMDhプロジェクトを中止したアウディに続き、WECを撤退した2番目のドイツメーカーとなった。これで来季のWECハイパーカークラスに参戦するドイツメーカーはBMWのみとなったのだ。

「正直に言って悲しい」と、BMW Mモータースポーツの責任者であるアンドレアス・ルースはmotorsport.comに語った。

「特にドイツのメーカーである私たちにとっては、少し残念だ。ハイパーカーレースに残るのは私たちだけになったからだ。だから彼らが戻ってくることを願っている」

「彼らと(再び)競えたら最高だ。彼らは耐久レース、スポーツカーレースにおいて長い歴史と伝統を持っている。ル・マンでは今でも最多の総合優勝を誇っている。だから、彼らが去ってしまうのは残念だ」

「しかし一方で、現在の自動車業界の困難を見れば理解できる部分もあり、我々も合理的にならなければならない」

 ポルシェは、WECハイパーカークラスとIMSAのGTPクラスの両方に参戦すべく、チーム・ペンスキーと提携した。この協力を通じて、ロジャー・ペンスキーはル・マン24時間レースでの総合優勝を目標としていた。これは、彼のトロフィー棚に欠けている最後のビッグレースだった。

 アウディのLMDhプロジェクト中止を受けて、BMWと組むことになったWRTチーム代表のヴァンサン・ボッセは、ポルシェとペンスキーの両チームがチャンピオンシップから離脱したことに失望していると語った。

「我々は前向きでいなければならない。選手権には十分な数のメーカーがあるが、ポルシェはただひとつだ」

「ポルシェはおそらく耐久レースの歴史に最も深く関わってきたメーカーだろう。そしてここ2年間、私にとってベンチマークとなってきたペンスキーのようなチームを失うのは、本当に悲しい」

「ロジャー・ペンスキーが長年追い求めてきたル・マンでの勝利を求めて戦えなくなったのは少し残念だ。私は彼と、彼の仕事、そして彼の会社に大きな敬意を抱いている」

「そしてもちろん、ポルシェが撤退するのは良いニュースではない。問題はクルマの数ではない。誰が撤退するのかだ」

文:motorsport.com 日本版 Rachit Thukral/Heiko Stritzke
【キャンペーン】第2・4金土日は7円/L引き!ガソリン・軽油をお得に給油!(要マイカー登録&特定情報の入力)

こんな記事も読まれています

ハース小松代表、TGRタイトルパートナー就任は既存提携の「延長線上」と説明。トヨタF1ファクトリーチーム化を否定……ドライバー選考も実力重視
ハース小松代表、TGRタイトルパートナー就任は既存提携の「延長線上」と説明。トヨタF1ファクトリーチーム化を否定……ドライバー選考も実力重視
motorsport.com 日本版
ランキング4位確定のフェラーリ、開発早期終了の判断に後悔なし「モチベーション維持の難しさを過小評価していたが……」
ランキング4位確定のフェラーリ、開発早期終了の判断に後悔なし「モチベーション維持の難しさを過小評価していたが……」
motorsport.com 日本版
海外F1記者の視点|F1レギュラーシートを失った角田裕毅。2026年はレッドブルのリザーブに……彼はこれからどこへ向かう?
海外F1記者の視点|F1レギュラーシートを失った角田裕毅。2026年はレッドブルのリザーブに……彼はこれからどこへ向かう?
motorsport.com 日本版
角田裕毅の未来はどうなる? レッドブルとホンダの”新たな関係”が重要になる可能性はあるのか
角田裕毅の未来はどうなる? レッドブルとホンダの”新たな関係”が重要になる可能性はあるのか
motorsport.com 日本版
巨人トヨタ、“本気で”動き出す——。ハースF1タイトルパートナー就任に豊田章男会長「“文化”と“チーム”を創る挑戦を進めていきます」
巨人トヨタ、“本気で”動き出す——。ハースF1タイトルパートナー就任に豊田章男会長「“文化”と“チーム”を創る挑戦を進めていきます」
motorsport.com 日本版
海外F1記者の視点|角田裕毅に代わり、来季はハジャーが昇格……レッドブルは正しい選択をしたのか?
海外F1記者の視点|角田裕毅に代わり、来季はハジャーが昇格……レッドブルは正しい選択をしたのか?
motorsport.com 日本版
これは勝てませんわ。フェラーリ、今季序盤にあっさり“白旗”……マクラーレンの速さを見て空力開発は来季用に専念「追いつくのは難しかった」
これは勝てませんわ。フェラーリ、今季序盤にあっさり“白旗”……マクラーレンの速さを見て空力開発は来季用に専念「追いつくのは難しかった」
motorsport.com 日本版
アウディF1、新たなパートナーと複数年契約。物流面のサポートを受け、戦いに専念することに成功?
アウディF1、新たなパートナーと複数年契約。物流面のサポートを受け、戦いに専念することに成功?
motorsport.com 日本版
レッドブルのヘルムート・マルコ博士、契約を早期終了し今季限りで退団の可能性も「話し合いを行なう。様々なことが、複雑に絡み合っているのだ」
レッドブルのヘルムート・マルコ博士、契約を早期終了し今季限りで退団の可能性も「話し合いを行なう。様々なことが、複雑に絡み合っているのだ」
motorsport.com 日本版
ポルシェが2026年モータースポーツ体制発表…フォーミュラEと耐久レースに注力…『911 GT3 R』改良型も投入へ
ポルシェが2026年モータースポーツ体制発表…フォーミュラEと耐久レースに注力…『911 GT3 R』改良型も投入へ
レスポンス
海外F1記者の視点|マクラーレンはまたしても“やってしまった”のか? カタールGPでのステイアウト戦略を斬る
海外F1記者の視点|マクラーレンはまたしても“やってしまった”のか? カタールGPでのステイアウト戦略を斬る
motorsport.com 日本版
キャデラック、F1参戦1年目のカラーリングはスーパーボウルCMで解禁へ! 全米視聴者にアピール
キャデラック、F1参戦1年目のカラーリングはスーパーボウルCMで解禁へ! 全米視聴者にアピール
motorsport.com 日本版
アストンマーティン・ヴァルキリー、望外の初年度に満足『ジョーカーなし』の2026年にも自信
アストンマーティン・ヴァルキリー、望外の初年度に満足『ジョーカーなし』の2026年にも自信
AUTOSPORT web
マクラーレンのステイアウト戦略、ライバルチームかなり驚く……しかし「事前にその可能性を議論した」との声も|F1カタールGP
マクラーレンのステイアウト戦略、ライバルチームかなり驚く……しかし「事前にその可能性を議論した」との声も|F1カタールGP
motorsport.com 日本版
フェラーリへのネガティブな報道が苦戦の一因? ハミルトン「チームに影響を与えている」
フェラーリへのネガティブな報道が苦戦の一因? ハミルトン「チームに影響を与えている」
motorsport.com 日本版
ピアストリが冷遇されてる? 母国オーストラリアの上院議員が主張する珍事態。マクラーレン「物を知らないようだ」
ピアストリが冷遇されてる? 母国オーストラリアの上院議員が主張する珍事態。マクラーレン「物を知らないようだ」
motorsport.com 日本版
マクラーレン、新たな開発ドライバーと契約。F2王者フォルナローリに同3番手のフェルシュホーらが加入
マクラーレン、新たな開発ドライバーと契約。F2王者フォルナローリに同3番手のフェルシュホーらが加入
motorsport.com 日本版
日産ローランド、フォーミュラE連覇に向けて自信「シリーズはおそらく最も競争の激しい時代を迎えている」
日産ローランド、フォーミュラE連覇に向けて自信「シリーズはおそらく最も競争の激しい時代を迎えている」
motorsport.com 日本版

みんなのコメント

22件
  • セナパパ
    力、技術力のないチームを勝たせる、政治力のあるチームがいつでも首位に立つ、1年間表彰台のないトヨタが一番重いBoPを課せる、少し緩めたら1、2フィニッシュ。
    如何につまらないレースを毎回やっていたのか分かる、これに嫌気が差して撤退するポルシェが正解だろう。
  • トム
    クルマの性能を競うレースなのに性能調整って意味が分からん。F1で言えばマックスは速すぎるので重り付けろって言ってるのも同じ。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村