2024年のスーパーGTに、ホンダ陣営が送り込む新GT500マシン『シビック・タイプR-GT』。2023年シーズンの開幕に先駆けてお披露目されたこのマシンのコンセプトモデルが注目を集めたが、その開発進捗についてHRC(ホンダ・レーシング)が語った。
NSXの市販モデルが生産終了したことに伴い、スーパーGTにおいてもNSX-GTは2023年がラストイヤーに。後継車種はシビック・タイプRをベースとしたシビック・タイプR-GTで、今年1月の東京オートサロンでのコンセプトモデルのお披露目をもって、2024年シーズンからの投入が明らかにされた。
■ホンダの次期GT500マシン”シビック・タイプR-GT”。その最大の武器はエンジンである可能性……F1由来の技術を投入か?
そんなシビック・タイプR-GTの開発については、実走テストなどはまだ先の話になりそうだが、コンピュータ上での設計は大方済んでいる様子。その進捗について尋ねられて「けっこうできていますよ」と笑顔を見せるのは、HRCで車両開発を率いる往西友宏氏だ。
彼は次のように語る。
「形はCAD(コンピュータ支援設計)の中ではできていますが、モノが揃うのを待っている状況です。早めにクルマを作って、実走行で検証して準備したいです」
やはり気になるのは、新たにGT500クラスに投入されることになるシビックがどんな車両になるのかという点。1月のオートサロンで公開された車両はあくまでコンセプトモデルに過ぎないわけだが、往西氏曰く、あの車両も“スケリーング”に適合したものだという。
GT500クラスでは、ホンダ、トヨタ、ニッサンの各メーカーが共通のモノコックを基に、それぞれのベース車両のイメージを残したボディを搭載する。ただこのボディ形状はベース車両を踏襲するといっても、性能均衡化の意味合いもあって全長や全幅を一定のサイズに収める必要がある。これがスケリーングだ。
「オートサロンで発表されたあの(コンセプトモデルの)シルエットも、全長全幅は2024年のスケーリングモデルに適合していますので、空力開発が許可されているエリア以外は基本的に変更はありません」
往西氏はそう語る。
「冷却のインレットやフリックボックスなど、ディテールの部分はどんな形になるかお楽しみです(笑)。ただ、数年前と比べると空力開発ができる部分も少なくなっているので、ほぼあのイメージのままと考えていただければと思います」
また、NSX-GTのベース車両であるNSXは2ドアクーペであるのに対し、シビック・タイプR-GTのベースであるシビック・タイプRは後部座席が存在する5ドアハッチバックという大きな違いがある。
これについては、単純にどちらが有利・不利という話ではないという。「良いところも苦手なところもありますが、それはNSXもそうだったので、苦手なところをどうリカバリーするか、開発を楽しくやっています」と往西氏は語る。
そして現行のNSX-GTと言えば、その空力性能の高さに定評があった。そのためダウンフォースが要求されるコーナリングサーキットを得意とし、ストップ&ゴーのホームコースもてぎでも、ダウンフォースを活かしてブレーキングでのアドバンテージを誇った。
こういった特性は、ベース車両がシビックに変わることで変化していくことになるかと往西氏に尋ねると、その辺りは“味見”をしている段階だという。曰く、シビック・タイプR-GTもNSX-GT同様にダウンフォースマシンにすることも可能ではあるが、それが必ずしもシビックにとって最善なソリューションとは限らないからこそ、色々味見をしているということのようだ。
NSXとシビックで、同じ味にすること自体はできる。しかし、それでシビックがNSXと同じくらい“美味しい”車両になるかはまた別の話……というところか。今後開発陣から聞こえてくるコメントにも引き続き注目したい。
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