10月24日、フランスのアコーディスASPチームは、レクサスRC F GT3で2024年のWEC世界耐久選手権に参戦する意向を表明した。
参戦実現にはWECのセレクション・コミッティによる承認が必要とはなるものの、ハイパーカークラスに参戦しているマニュファクチャラーにはLMGT3参戦枠に優先権がある。トヨタGAZOO RacingはトヨタGR010ハイブリッドで最高峰クラスに参戦しているため、姉妹ブランドであるレクサスのLMGT3クラス参戦は、事実上確定的だろう。
レクサス、ル・マン初参戦へ。GTWCヨーロッパ王者のASPがブランドスイッチとWEC挑戦を正式発表
LMGT3においては『マニュファクチャラーが参戦チームを指名』することになっている。GT3はカスタマー・レーシングということもあり、今回の発表はチーム=ASP側からとなっているが、トヨタが彼らを“指名”したことにはなる。そこで10月27日(金)、全日本スーパーフォーミュラ選手権でのデモ走行などのために鈴鹿サーキットに来場した中嶋一貴TGR-E(トヨタ・ガズー・レーシング・ヨーロッパ)副会長に、ASPと組んだ理由を聞いた。
アコーディスASPはGTワールドチャレンジ・ヨーロッパ(GTWCヨーロッパ)でメルセデスAMG GT3エボを走らせ2022年から2連覇を飾り、この2023年シーズンもメルセデスAMGとともにシリーズの総合王者、ならびにエンデュランス・カップ王者のダブルタイトルを獲得した強豪チームだ。
「お互いの目指すところが一致した、というのがすべてだと思います」と一貴副会長は説明した。
「我々としては、新しいクルマも開発していますし、これからGT3への取り組みのウエイトをどんどん増やして行こうというなかで、GT3の世界で活躍していくためには、やはり強いチームとタッグを組むことが必要です。それを、僕らも探していました」
また、ASPについては、チームオーナー、ジェローム・ポリカンがル・マン出場への情熱を持っていること、そして彼らがこれまで組んできたメルセデスは、現在ル・マンとのつながりが薄く、メルセデスAMG GT3ではWEC/ル・マンのLMGT3に参戦できる可能性がほとんどないことなど、さまざまな状況がトヨタとASPを結びつけたようだ。
「ASPに関して言えば、彼らのリリースにもあったとおり、チームオーナーのル・マンへの気持ちが強いですよね」と一貴副会長。
「その中でGT3が来季からル・マンへも参戦可能となるタイミングということで、彼らとしてもル・マンにチャレンジしたい気持ちがある。そこでいろいろと話をしていくなかで、トヨタとしての価値観と、彼らの価値観がすごくマッチしたというのが一番の大きな理由です」
■「大丈夫、もっと面白いニュース持ってくるので」と小林可夢偉
このASPのLMGT3参戦は、今季TGR WECチャレンジドライバーとなり、第6戦富士ではLMGTEアマクラスにデビュー、そして来季から世界への挑戦を表明している宮田莉朋にとっても、世界選手権、そして耐久レースの経験を積む“ファースト・ステップ”として、良い場所が生まれたとも解釈できる。
一貴副会長にこの件を向けると「……答え合わせは『カミング・スーン』ということで(笑)。まだなんとも言えませんが、もうちょっとしたら答え合わせができると思います」とかわした。
さらに、取材に同席していた小林可夢偉WECチーム代表からは記者団に対し「じっと待っといてください(笑)。大丈夫、もっと面白いニュース持ってくるので」と何らかのサプライズを匂わせるような発言も。
この取材は宮田がスーパーフォーミュラのタイトルを獲る2日前に行われたもの。取材時には、同席した平川亮の去就についても話が及んだが、「本当にF1の話が急に決まったので、いろいろと他の話が決まっていないことが多い」(平川)という。この平川をめぐる状況が、宮田の将来に影響する可能性もあるのだろうか?
なお、LMGT3クラスではドライバー・カテゴライゼーションに制約があり、1台につきブロンズドライバー、シルバードライバーが1名ずつ必要となる。この部分でも、ラインアップ編成は難しいものとなっていることが想像できる。
とはいえ、宮田の去就について一貴副会長は「いろいろな可能性があるのは間違いないですし、いろいろなことを考え、準備もしています。ほぼほぼ固まってはきているので、そう遠くないタイミングできっとお知らせできると思います」と語っている。
一貴副会長は、「ぜひ、答え合わせを(お楽しみに)」とポジテイブな雰囲気でこの話題を締めくくった。果たして宮田の来季はLMGT3なのか、“それ以上”もあるのか。あるいは、トヨタ全体として“もっと大きな動き”があるのか。発表の日を楽しみに待ちたい。
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