2018年10月30日に導入が開始された2代目パサートオールトラックは、トルクフルなクリーンディーゼルエンジンの2.0TDI仕様を搭載している。いったいどんなモデルに仕上がっているのか、大きな期待とともに試乗した。(Motor Magazine 2019年1月号より)
クールビューティなクロスオーバーSUV、パサート オールトラック TDI
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フォルクスワーゲンが新世代のクリーンディーゼルエンジン搭載モデル“TDI”を日本へ最初に導入したのは2018年2月、パサート セダン/ヴァリアントだった。8月にはティグアンの4モーション、ゴルフ トゥーランにもTDIを設定。
そして10月にパサート オールトラックがTDIで登場した。パサートヴァリアントの車高を少し嵩上げして地上高に+30mmの余裕を持たせ、4WD(4モーション)との組み合わせでラフロードや雪道での機動性が高められている。
前後バンパーの下部をスキッドプレート形状とするほか、ホイールアーチやサイドシルにエクステンションを追加して見た目もアクティブな雰囲気とするのは、ワゴンベースのクロスオーバーSUVのお約束である。ただし、ワイド&ロー化を強めて水平基調のグリルで精悍な表情を作り出しているパサートがベースゆえ、アクティブというよりはクールビューティと呼ぶ方が現実の印象に近い。
4モーションのシステムも、ドライビングプロファイルにオフロードモードが加えられているとはいえ、基本的には滑った時に後輪にトルクを伝えるオンデマンド式である。このクルマで本格的なオフロード走行を意識する人はまずいないだろうが、積載荷重による負荷の変化が大きいワゴンモデルには低速域からトルクフルなディーゼルエンジンがマッチするのは間違いない。長距離を移動してアウトドアを目指す「旅するクルマ」には、高速巡航で威力を発揮する燃費の良さも魅力だ。
2LのTDIには、パサート系が搭載する190ps/400Nm仕様と、ティグアン4モーションやゴルフ トゥーランが搭載する150ps/350Nm仕様がある。FFのパサートヴァリアントTDIに対して車重が70kgほど増加しているオールトラックが搭載するのは、もちろん前者のハイパワー版TDIである。
パサート オールトラック TDIの軽快なエンジン。特筆すべきは車内の静粛性
ただしこのエンジンは、低速トルクの強力さを前面に押し出したタイプではない。もちろん、ガソリンエンジンのように回転数が上がるほどに力を増すのではなく、2500rpm付近でも十分な力強さを備えているのだが、アクセルペダルを踏んだ時の初速の乗り方は「グイッ」ではなく「スルスルっ」と来る。
エンジン回転の伸び方もガソリンエンジン的に軽快で、レブリミットの4600rpmまでフルに活用するスポーティな走りも可能なのが面白い。味わい的には、ガソリン車とディーゼル車の中間といった感じだ。
エンジンサウンドにも同じことがいえる。カラカラとしたノック音や振動は皆無ではないが、そのトーンはとても抑えめで、少なくとも車内にいる限り“ディーゼル”を意識することはない。回転数を上げてもゴロゴロした音や振動は増さずにブーンというガソリンエンジンと似たノイズが少し増えていく。このあたりもガソリンとディーゼルの中性的な味わいだ。
4WD化によってヴァリアントTDIより少し減ったものの定員乗車時639L、後席折り畳み時1769Lという大容量ラゲッジルームを備えており、旅するクルマとしての実力は非常に高い。
フットワークについて触れると、先代のパサート オールトラックでは車高が上がった影響か、やや突っ張ったライドフィールを感じることもあったが、新型ではそうしたネガティブな要素はまったくなかった。接地感が明確な精緻なステアフィールや、ワイドなトレッドを生かしたフラットな旋回姿勢など、まさにMQBの面目躍如という印象。ロードノイズの侵入も抑えられており走行中のキャビンが静粛なのも大きな魅力だ。
活動範囲の拡大こそがパサート オールトラックの主な存在意義なことは間違いないが、その走りの上質さから、ヴァリアント系の上級モデルとしての役割も十分に担えるモデルだと感じた。(文:石川芳雄)
フォルクスワーゲン パサート オールトラック TDI 4モーション アドバンス 主要諸元
●全長×全幅×全高=4780×1855×1535mm
●ホイールベース=2790mm
●車両重量=1680kg
●エンジン=直4DOHCディーゼルターボ
●排気量=1968cc
●最高出力=190ps/3500-4000rpm
●最大トルク=400Nm/1900-3300rpm
●トランスミッション=6速DCT
●駆動方式=4WD
●車両価格= 569万9000円
[ アルバム : はオリジナルサイトでご覧ください ]
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