■セダン人気低迷でもクラウンが元気な理由とは
トヨタの「クラウン」は、1955年に初代モデルが登場してから日本を代表するクルマとして長きに渡り販売されているモデルです。2018年6月26日には、15代目へとフルモデルチェンジを果たし、間もなく1年が経ちます。
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近年では、軽自動車やミニバン、コンパクトカー、SUVと多様化するライフスタイルにマッチするモデルの人気がありますが、その一方でセダンは人気低迷が囁かれています。そんななか、なぜクラウンの人気は衰えないのでしょうか。
15代目モデルのクラウンが登場する直前の先代モデルは、月間販売台数が1000台前後と、日本市場全体のなかでは好調な売行きではないですが、セダンタイプや新型クラウン登場の噂が出ていたことを考えると、健闘した販売台数です。
しかし、新型クラウン発売後の2018年7月から2019年5月の販売台数(登録車)では、月間平均5200台と大きく数字を伸ばしています。また、2018年10月には6715台を販売し、普通車(登録車)のなかで8位にランクインするなど好調です。
セダンタイプでは、2018年から2019年に掛けて、ホンダ「クラリティPHEV」「インサイト」やマツダ「アテンザ(ワゴンも設定)」、レクサス「ES」といったモデルがフルモデルチェンジやマイナーチェンジを経て販売されましたが、発売直後の台数は好調なものの、その後も売れ続けているとはいえません。
クラウンだけが好調な理由はいくつか存在します。ひとつは、2019年で64年を迎える長い歴史とともに築き上げたブランド力と信頼性です。もうひとつは、揺るぎない「日本専用」というコンセプトです。
15代のモデルが存在すると、「親から子へ」といった物語が形成されやすく、当時小さかった子が大きくなり自分でクルマを選ぶときに必然とクラウンが選択肢に入るのです。
また、「クラウンブランド」が確立されているため、日本の行政機関をはじめ、会社の役員車などに使われることも多く、定着化していることも販売が好調な理由といえます。
ふたつ目の「日本専用」というコンセプト。多くのモデルが海外での販売を念頭において開発がおこなわれるため、モデルが変わるたびに、大型化しています。前出したセダンモデルでも全幅が1800mmを超えるなど、日本の道路事情を考えると「大き過ぎる」感が否めません。
一方で、クラウンは全幅1800mmを守り続けています。1955年に登場したクラウンは、初代モデル(全幅1680mm)に対して、2012年にモデルチェンジした12代目モデルから現行モデル(15代目)は全幅1800mmと、巨大化の波にあらがっています。
なぜ、クラウンは巨大化しないのか。その理由について、トヨタの販売店スタッフは次のように説明します。
「クラウンは『日本』における高級車の代名詞的存在です。確かにグローバル化が進むなかで、日本に合わせた規格のままだと、販売が厳しい実情はあると思います。
しかし、クラウンは日本をメインにして企画・開発されています。そのため、日本の道路事情に適したサイズを重要視するのです。
一方で、同じく看板モデルの『プリウス』はトヨタのグローバルモデルです。そのため、日本の事情よりも世界的な販売という点で成功しなければいけませんので、サイズは巨大化しています。
また、クラウンは歴代モデルから乗り継ぎされる人や、クラウンだから購入されるクルマでもありますので、先代・先々代モデルより大きく変更することはユーザー離れを起こすことも考えられます」
■15代目クラウンはブランドを統合したコネクティッドカー
15代目となったクラウンは、先代モデルに設定されていた「ロイヤル・アスリート・マジェスタ」の3ブランド展開を廃止し、標準仕様とスポーティ仕様に変更しています。
新型クラウンの特徴としては、「クルマの機能を拡張するコネクティッド」と「デザイン/走り/安全性能の進化」を追求し、車載通信機DCMを全車に搭載したことです。
遠隔で走行アドバイスや車両診断が受けられる「eケアサービス」や「Lineマイカーアカウント」をはじめとするコネクティッド機能を新搭載するなど、同時期に発表された新型「カローラスポーツ」と同様にトヨタの初代コネクティッドカーとして誕生しました。
また、新型クラウンは、全21グレード(標準仕様・スポーティ仕様)を「2リッターターボエンジン」「2.5リッターエンジン+ハイブリッドシステム」「3.5リッターV型6気筒エンジン+ハイブリッドシステム」のパワートレインで展開。
最も過酷と称されるドイツ・ニュルブルクリンクサーキットで走行テストを重ね、低速域から高速域まで意のままに安定した走りを実現させています。
スポーティ仕様(RSグレード)には、走行性能を高める専用アイテムとして、18インチアルミホイール、タイヤ、フロントスタビライザー、リアスポイラーなどが標準装備。
「ドライブモードセレクト」にもRSグレード専用のカスタムモードが設定され、パワートレイン、シャシー、空調の各制御など自由に選択することができます。
また、自転車や夜間の歩行者検知が可能な最新の「トヨタセーフティセンス」やドライバー好みの運転特性にスイッチひとつで切り替え可能な「ドライブモードセレクト」を全車標準装備。
今回の15代目モデルは、コネクティッドといった次世代モデルの先駆け的存在です。しかし、従来のクラウンユーザーは若年層ではありません。
実際に、2012年12月に発表された14代目「クラウンロイヤル/アスリート」の新車発売1か月後の受注では、顧客の60%が60代以上。翌年に出た「クラウンマジェスタ」でいえば70%が60代以上となり、高齢層がメインユーザーです。
そのため、「変わらない」ことを好意にとらえていたユーザーから15代目のクラウンは大きく変わったと感じます。では、実際に新型クラウンに対するユーザーの反応はどうだったのでしょうか。前出の販売店スタッフは次のように説明します。
「確かに、新型クラウンの発売当初は、コネクティッドを全面にアピールした宣伝がおこなわれました。しかし、実際に販売店へ来られるお客様は、コネクティッド機能よりも乗り心地や運転のしやすさ、積載力などを気にされていました。
そのため、新規ユーザーや若年層ユーザーには今回の特徴でもあるLINEなどを活用としたコネクティッドサービスを説明し、歴代クラウンのオーナーなどには、サイズや普段の使い勝手の面で変わったことなどを分けて紹介しています」
※ ※ ※
人気低迷が続く、セダンジャンルのなかでも生き残るには、新しい技術や機能を取り入れることと、変わること無く貫き通すという2面性をバランスよく保つことが重要なのかもしれません。
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