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【みんなのスポーツカー】ホンダS800 フィアット・スポーツ MGミジェット 後編

掲載 更新 1
【みんなのスポーツカー】ホンダS800 フィアット・スポーツ MGミジェット 後編

基本設計の最も古いミジェット

text:Simon Charlesworth(サイモン・チャールズワース)

【画像】S800と850スパイダー、ミジェット 全38枚

photo:Will Williams(ウィル・ウイリアムズ)

translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)


今回のトリオの中では、フィアット850スポーツがボディは最も大きく、洗練度も高い。甘美に回るエンジンが放つサウンドは控えめ。心地よく回転し、遅い速いに関わらず、走らせる喜びを実感する。病みつきになってしまう。

扱いやすい903ccの4気筒エンジンは、ホンダS800よりも漸進的なマナーで速度を高めていく。乗り心地は良く、リアエンジンらしい不意をつく振る舞いもない。

スポーツ・スパイダーのスロットルは少し渋いが、4速MTはストロークが長くゲートも広いから、変速は難しくない。良いフィーリングで滑らかに扱える。

ブレーキは、今回の3台の中で感触も効きもベスト。イタリア生まれらしく、常にドライバーの闘争心をくすぐってくる。

2つ目のチョークは3000rpmから効き始める。4000rpmから5000rpmが最もたくましい。エグゾーストノートも最高潮に達する。

日本とイタリアのコンパクトに対して、英国のMGミジェットは最も設計が古い。初代の誕生は3台で一番早く、製造期間は最も長かった。多くの自動車愛好家たちが、手頃な価格のコンパクトなスポーツカーとして、大切にしてきた。

オリジナルは、46psを発生させた948ccのMkIIオースチン・ヒーレー・スプライトがベース。高級志向のクルマとし、エンブレムを張り替えたものだった。その起源は1958年にまでさかのぼる。

アルバート・シドニー・エネバーとジェフリー・ヒーレーがデザインした1961年のミジェットは、明らかにホンダS800へ影響を与えている。1962年に改良を受け、1098ccのエンジンから56psを獲得。1964年にはMkIIが登場し、59psになった。

余計なものが一切ないボディとシャシー

最大の進化を遂げるのが、1966年に登場したMkIII。1275ccのAのシリーズエンジンは、当時のミニ・クーパーSのデチューン版。66psを獲得している。

1974年には、北米市場の安全基準を満たすためボディデザインに変更を受け、ハンドリングも悪化している。さらにトライアンフ・スピットファイアの登場で、売れ行きは伸び悩んだ。1979年、後継モデルの登場がないまま、ミジェットは終りを迎える。

今回登場してもらったMGミジェットMkIIIは、マイク・ゲストが所有する1969年式。新車当時のオーナーによって、少なくないモディファイを受けている。

マイクも、現代的な部品と当時のBMCスペシャル・チューニングやダウントン、スピードウェルなどの部品をバランスよく追加し、よりスポーティに仕立てている。基本的には、1293ccのダウントン仕様といえるだろう。

ミジェットの中にも外にも、余計なものは一切ない。3台の中で最も全幅が狭いが、ペダル周りには1番余裕がある。ロービームとハイビームを切り替える足踏みスイッチも付いていて、左足のフットレストにもなる。

ショルダーラインは高く、フィアットやホンダのように、クルマの上に座っているような感覚は薄い。キーを捻り燃料ポンプが動き始めると、ミジェットは聞き慣れないサウンドで目を覚ました。

機械ノイズを打ち消すように、ツインチョーク・キャブレターからの吸気音が響く。このトリオの中では1番荒々しい。乗り心地は一番硬く、ブレーキは一番効かない。だが唸り声は充分だ。

絶妙なバランスの世界観

ステアリングは素晴らしい。重み付け、レシオ、手のひらに伝わる感触のいずれもが完璧。このミジェットの場合、ポリウレタンのブッシュと太いアンチロールバーによって、フロントは強化されている。

いくつかのコーナーをクリアすれば、ミジェットが持つ絶妙なバランスの世界観が見えてくる。3台の中で、最高のハンドリングを備えている。

とても機敏に進行方向を変えていく。ほかの2台と同様に、ナーバスなところは一切ない。これより優れたハンドリングを望むなら、コーリン・チャップマンが生んだロータスに登場願うしかないだろう。

マイクのミジェットはかなり変更が加えられているから、オリジナル状態の2台と比べるのは不公平。しかし筆者の経験的に、どんなミジェット・スパイダーでも、魅了するほどに熱く走るという性格は、一貫していると思う。ストック状態でも変わらない。

標準のSUキャブレターによる1275ccは、中回転域でのトルクが太く、柔軟性が高い。しかし4000rpm以上回すと、吸気に息苦しさが出てくる。メカニカルノイズに慣れた人でも、聞き心地が良いとはいえないだろう。

だがマイクのミジェットは違う。1293ccのダウントン仕様とすることで、Aシリーズの能力を引き出している。質感を悪化させることなく、扱いやすさとアクセルレスポンスを向上。優しさの漂うシャシーを補うように活発だ。

小さなボディが生む想像以上に大きな興奮

4速MTもカシっと正確に決まる。トランスミッションからのノイズに、マフラーからゴロゴロとした元気なサウンドが重なってくる。4500rpmを超えると、吸気と排気の和音が、ドライバーの聴覚を支配してくる。

トップで3000rpmまで回せば80km/h、3300rpmなら96km/h。トルクバンドを活かせるから、激しく回転数を高める必要もない。

さて、どのクルマが一番良いだろう。答えは、完全に個人的な好みによると思う。

MGミジェットは、ただ楽しいだけではない。筆者のような英国人なら、運転する人を10代後半の若者に戻してくれる。難しい世の中にあっても、笑顔を忘れずに振る舞えそうだ。

何を優先するかで、順位は変わってくる。スタイリング、ハンドリング、エンジン。それぞれの1番がある。

3台に共通することは、ささやかなスペックからは想像できないほどの、大きな興奮を与えてくれるということ。小さなオープン・スポーツカーのどれもが、はるかに高価なエキゾチック・モデルを超えるスリルを、身近に楽しめるのだ。

3台のペック

ホンダS800スポーツ(1966年-1970年)のスペック

価格:新車時 935ポンド(12万円)/現在 3万ポンド(405万円)以下
生産台数:1万1536台
全長:3334mm
全幅:1403mm
全高:1219mm
最高速度:156km/h
0-96km/h加速:13.6秒
燃費:9.9km/L
CO2排出量:-
乾燥重量:771kg
パワートレイン:直列4気筒791cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:71ps/8000rpm
最大トルク:6.7kg-m/6000rpm
ギアボックス:4速マニュアル

フィアット850スポーツ・スパイダー・シリーズIII(1965年-1973年)のスペック

価格:現在 2万ポンド(270万円)以下
生産台数:12万4000台
全長:3782mm
全幅:1501mm
全高:1219mm
最高速度:149km/h
0-96km/h加速:16.2秒
燃費:12.3km/L
CO2排出量:-
乾燥重量:745kg
パワートレイン:直列4気筒903cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:52ps/5200rpm
最大トルク:6.6kg-m/5200rpm
ギアボックス:4速マニュアル

MGミジェットMkIII(1966年-1969年)のスペック

価格:新車時 935ポンド(12万円)/現在 3万ポンド(405万円)以下
生産台数:1万3722台
全長:3461mm
全幅:1345mm
全高:1264mm
最高速度:151km/h
0-96km/h加速:14.1秒
燃費:10.6km/L
CO2排出量:-
乾燥重量:686kg
パワートレイン:直列4気筒1275cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:65ps/6000rpm
最大トルク:9.9kg-m/3000rpm
ギアボックス:4速マニュアル

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みんなのコメント

1件
  • ホンダS800スポーツ(1966年-1970年)のスペック
    価格:新車時 935ポンド(12万円)/現在 3万ポンド(405万円)以下

    MGミジェットMkIII(1966年-1969年)のスペック
    価格:新車時 935ポンド(12万円)/現在 3万ポンド(405万円)以下

    疑問。
    2車とも新車時は日本円で12万で買えたのか?
    そして今も、価格ベースは全く同じなのだろうか?
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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