現行レクサスLSは2017年5月に5代目としてデビューし、毎年年次改良をすることで静粛性や乗り心地に磨きをかけてきている。今回2019年10月に行なった2回目の年次改良をした後のLSに試乗できたのでお伝えしよう。
レクサスのフラッグシップ「LS」には、常に高いレベルの要求がある。レクサスというプレミアムブランドであり、かつLSはそのフラッグシップモデルゆえに、要求値が高くなってしまうのは仕方のない部分だ。言い換えれば、ユーザーのわがままを受け入れる度量も必要になるということだろう。
そうした要求に応えるために、この年次改良では乗り心地の向上を目指す改良が行なわれており、FRモデルにもAWDと同じ伸圧独立オリフィスを採用した。これは減衰力可変幅が大きくでき、そしてフリクションを低減するなどをしたダンパーを採用している。またランフラットタイヤにも補強層構造の最適化や、リヤサスペンションマウントのチューニングなどが行なわれている。ちなみにランフラットタイヤは19インチで13%、20インチで10%の剛性値を下げ、振動低減などに対応している。
またAWDにおいても乗り心地のさらなる向上、静粛性、操作性の向上が行なわれ、快適性の再確認と追求がされている。特にリヤ席の快適性にも注力したということだ。そしてハイブリッドモデルでは、バッテリーアシスト量を増やし、アクセルの踏み込み量に対する加速感の見直しも行なわれている
ドライバーだけが感じる
試乗したのはLS500hエグゼクティブのAWDで、実際の走行では運転席以外での試乗はできなかったが、「LSってこんなに良かったかな?」というのがファーストインプレッションだ。全般にレベルが引き上げられた印象で静粛性も高く、高級感が増した印象を持った。
しかし、ハンドルを握っているため、ドライバーにしかわからない部分ではいくつかの改善を期待したいポイントがあった。これもわがままな部類に入るのかもしれないが。
そのひとつが、ステアリングの支持剛性だ。路面が荒れた状況になるとステアリング自体が振動を拾い、もう少し支持剛性なのか、しっかりとしたフィーリングを持ちたい。しかしながら綺麗な路面でハンドルを回すと、とても滑らかで高級感があり、少しの優越感を得ることはできる。
そうしたハンドルに対する印象ではあるが、トータルにみて大きなサイズのクルマを運転している感じはなく、ひとまわり小さいクルマを運転している感覚になってくるので、そこは素晴らしいと感じた。それだけに路面からの入力のいなし方に滑らかさがあってもいいと思う。
もうひとつはエンジンのサウンドフィーリングだ。これはエンジンのざらつきを感じることで、アクセルを踏み込んでいくと力強く「いい音」はするが、市街地を周りのクルマと同じ速度で走行すると、エンジン音のバタつきが気になる。試乗車は500h AWDで、せっかくのハイブリッドなので少し残念な印象だった。
一方でハイブリッドに加えられたバッテリーアシスト量を増やす改良だが、これは通常走行状態からジワリとアクセルを踏み込んで40%程度まで踏み込んだ走り方をすると、非常に力強いトルクを得てトルクフルだと感じる。これは従来比+170Nmも駆動力を増やしているというのだ。そしてブレーキのタッチが素晴らしい。回生ブレーキと摩擦ブレーキの協調制御の領域の切り替えが自然で、全く気になる部分はなかった。
こうした印象はハンドルを握らない、アクセルペダルに触れない乗員には伝わらないであろう感触なので、同乗者はすこぶる静粛性は高く滑らかに走っていると感じることだろう。であるが、フラッグシップモデルだけによりレベルの高みへと進化を期待したい。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>
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