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液体水素搭載のGRカローラがスーパー耐久公式テストに登場。新たな画期的挑戦が始まる

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液体水素搭載のGRカローラがスーパー耐久公式テストに登場。新たな画期的挑戦が始まる

 2月23日、静岡県の富士スピードウェイで開催されたスーパー耐久シリーズの公式テスト。2023年に向けて多くの注目の車両が登場したが、そのなかでも最も注目を集めていたのが、ORC ROOKIE RacingのORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptだ。2022年までの車両と異なり、液体水素が燃料として使用されている。

 2021年の富士SUPER TEC 24時間レースでデビューを飾り、『モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり』のコンセプトのもと、レース・バイ・レースで進化を遂げてきた水素エンジンを積むORC ROOKIE GR Corolla H2 concept。開発車両が参加可能なスーパー耐久のST-Qクラスを活用し、2年間の開発で大幅に航続距離やスピードを伸ばしてきていたが、さらなる進化を目指し、これまで気体水素だった燃料を、液体水素に変更してきた。

スーパー耐久に挑む水素エンジン搭載のGRカローラは液体水素でのテストを実施。メリットと課題あり

 この液体水素使用は2022年のうちから予告されており、開発車両が走行を開始したことも告げられていたが、2月23日の公式テストで、いよいよスーパー耐久の場に姿をみせることになった。外観が昨年までとは大きく変わるわけではないが、昨年とはまったく別物の車両と言っていいだろう。

 詳細は第1戦鈴鹿で明らかにされる予定だが、3月からGAZOO Racingカンパニーのプレジデントに就任する高橋智也GR車両開発部長は、「これまでコース占有等でテストは行ってきましたが、今日は今のところ水素に絡むトラブルは出ていません」という。ただ、液体水素を使う挑戦はまだまだスタート地点に立ったばかりだという。

「昨年に続き、我々は勝ち負けというより、将来に繋がる技術をモータースポーツの場で鍛えることが目的なので、その軸はぶらさずに今年やっていきたいと思いますし、今季新たに挑戦する液体水素については、いっぱい課題が出てくると思います。それをスピード感をもって、レースごとにアジャイルに改善していくことをやっていこうと思っています」

 液体水素を使うことによって、航続距離やパワーでも大幅な改善が期待されるところだが、マイナス253℃の状態を保たなければならない液体水素の扱いは大きなチャレンジとなる。ただ、すでに液体水素によるメリットは生まれ始めている。昨年までは、パドックに大がかりな気体水素タンクが置かれ、ORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptは一度このエリアに進入した後、“給水素”を行い時間がかかっていた。

 しかし今回は、水素タンクは大きなものであるものの従来よりも非常にコンパクトになっており、このタンクのみで複数台が5時間レースを戦えるほどの容量をまかなえるという。また給水素もピットレーンで可能となった。タンクからパイプを通じて移された水素は、一度ピット内の設備に移された後、リヤハッチから車両内で-253℃を保ったまま移される。そこからエンジンに届くまでに気化される。

 ORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptのデビューから開発に携わってきた佐々木雅弘は、「昨年からテストをしてきましたが、液体水素をクルマに乗せて走るのは11月くらいから行ってきました」という。

「このクルマは、まるでロケットを飛ばすような感じがあって、当初はスイッチをオンにしたりオフにしたりという“儀式”があったのですが、今回はスイッチひとつで動くようになっていますし、最初はクルマに煙突がついているような状態、さらにパワーも半分くらいだった状態から、大きく進化しています」

 とはいえ、高橋GR車両開発部長が説明したとおり、液体水素搭載のORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptは新たなスタート地点に立ったばかり。水素以外のトラブルなどもあり、この日の走行時間は非常に短いものとなった。ただ、佐々木と同じく開発を担ってきた石浦宏明は「ちゃんと走ることが今の最初のゴールだと思います。世界中の技術者が不可能だと思っていたことだと思うので」と語った。

 今回の液体水素搭載については、まだ厳密な安全のためのルールがないため、まだ二重、三重にも安全を期した設計がされており、それが重さに繋がっているという。また安全については、複雑なシステムをピットで常時大型モニターで監視しているほか、コース上でストップしたもしもの際に、滞留する水素を飛ばすためのファンを搭載した車両を用意している。

「重量もまだ安全のために非常に重い状態ですし、走行距離もまだ僕たちが期待するところまでは至っていません。しかしここがスタートですし、法律が追いついてきたら気体水素を超える容量を入れられると思います。軽量化やパワーアップが進んでいけば、最終的に気体水素を抜くことができると思います」と佐々木は言う。

「まさに下町ロケットの世界だと思います(石浦)」という、液体水素で走る画期的なレーシングカーの挑戦がいよいよ始まった。「かなりの技術で取り組まなければいけませんし、今はまだ100%うまくいっているわけではありません」と佐々木が言うように、困難は多い。開幕、そして今シーズン中にどんな進化を遂げていくのか、カーボンニュートラルに向けたTOYOTA GAZOO RacingとORC ROOKIE Racingの“意志ある情熱と行動”は、新たなチャプターに入ったと言えるだろう。

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みんなのコメント

2件
  • 記事とは関係ないけど、トルコで震災のあとBEVは使い物になっているのでしょうか?
  • 作っても私の収入では買えません。クルマ高すぎ、給料低すぎ。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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