カローラといえばかつては乗用車の「スタンダード」として君臨したクルマ。カローラという車名を聞いたことない人は極めて少数派だろう。
そんなカローラ、今日でも160万円程度から新車を購入でき、国内グレードは車幅1695mmと商用需要も満たしているまさに国民車ともいえる存在。
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それなのに、どうもその存在感が薄くなっている気がする。
ハイブリッドの投入、ステーションワゴンの存在などいろいろと販売面でも工夫が見られるのにかつてのような栄光がない。
カローラスポーツの投入、さらに中国市場での新型カローラの発表。いったいカローラはどこに向かうのか!?
文:岡本幸一郎/写真:トヨタ
■33年間ナンバーワンからの陥落とその原因
1966年に誕生したカローラは、ほどなくベストセラーにのぼりつめ、1969年度から2001年度までの33年間にわたって車名別国内販売台数において首位の座に君臨した。
最盛期はバブル末期の1990年に年間30万台超を売ったほど。そして、2002年度にその座をあけわたしたのがホンダのフィットだったのも有名な話だ。
王座陥落から16年。その間、時代は移ろいゆき、フィットが火をつけた居住性重視のコンパクトカーがもてはやされる。
一方ではミニバンが興隆を極め、さらには特殊なものだったはずのハイブリッド車が主流となり、軽自動車は新車販売の実に4割を超え、最近ではSUVの人気がますます高まるなど、めまぐるしく日本市場の状況が変化したのも周知のとおりだ。
そんな中で、かつては「国民車」と呼ばれ、バブル期にBMW3シリーズが「六本木のカローラ」と呼ばれるほど、よく見かけるクルマの象徴的存在(同時にありがたみがないというネガティブな意味合いもあったが…)でもあったカローラも、もはやそこまで売れることはなくなった。
なぜそうなったのか、その答えはあまり難しいことはない。自動車が多様化し、その他のメーカーも含め普通のセダンやワゴン自体が以前ほど売れなくなり、ひいてはセダンやワゴンを擁するカローラも、その影響をモロに受けたことは想像に難くない。
時代が求めたのは、コスパと付加価値だ。そもそもカローラは、もともと魅力的だから売れていたというよりも、ちょうどよいから売れていた面の大きいクルマ。
そこにとってかわるクルマが出てきたら、そちらに流れるのは無理もない。
■首位奪還へ向けた21世紀のカローラの挑戦
2002年当時にはトヨタがカローラの首位をなんとか維持しようと躍起になっていたことも思い出されるが、すでにその流れは食い止めることはできない状態にあったし、食い止めても意味がなかったといえる。
ご参考まで、2018年1月~10月のカローラおよび競合する販売上位の車種の国内販売台数は以下のとおり。
カローラ 7万4960台
ノート 11万8612台
アクア 10万7311台
プリウス 9万9639台
フィット 7万6368台
ヴィッツ 7万4533台
この数字には、いろいろな見方はできるわけだが、いずれにしても上位3台とはだいぶ水をあけられているものの、どうこういってもカローラはいまだにそれなりの数を売っている。
同じく月販台数1位を経験しながら、かつてほどの勢いのなくなったフィットやヴィッツと同等というのも興味深いところだが、カローラ以外は、ひとつのボディタイプでこの数を売っているわけで、実質的にはもっと大きな差があるといえる。
思えばかつても、レビン、カローラII、FX、スパシオといった派生車たちもカローラの名のもとで販売台数を維持する要因になっていたという事情はある。
とはいえスプリンターという兄弟車がありながら、あれほど売れていたのはやはりたいしたものではある。
さらには、カローラの2018年1月~10月の販売の内訳は下記のとおり。
【カローラアクシオ 計2万2720台】
カローラアクシオ 1万3900台
カローラアクシオ ハイブリッド 8820台
【カローラフィールダー 計3万9050台】
カローラフィールダー 1万8720台
カローラフィールダー ハイブリッド 2万0330台
【カローラスポーツ 計1万2550台】
カローラスポーツ 3350台
カローラスポーツ ハイブリッド 9200台。
カローラアクシオよりもカローラフィールダーのほうがだいぶ売れており、カローラスポーツも6月からの販売ながら、そこそこ数を伸ばした。
また、各モデルでハイブリッドの比率がだいぶ違うことも興味深い。
ざっと見ると、カローラアクシオはプレミオやアリオン、ホンダのグレイスあたりよりも圧倒的に売れているし、カローラフィールダーはレヴォーグよりも売れている。
十分に立派な数字といえる。カローラはけっして売れていないわけではない。
とくにカローラフィルダーは、比較的年齢の若い世代から積極的に選ばれている。それは木村拓哉氏を起用したTVCMの影響がいまだに大きいのだという。
さらにはスポーティな意匠としたW/Bグレードの追加もかなり効果的だった。若い世代にとっては、カローラ=オヤジグルマというイメージのほうがあまりないわけだ。
一方のカローラアクシオも、むろんフリートユーザーはそれなりに多いだろうが、一般ユーザーも、前で述べた事情により選ばれる機会が以前よりも減ったことには違いないが、カローラを好む根強いユーザーはいまでも少なくない。
■根強いユーザーの声を今後にどう生かすのか?
現行アクシオとフィールダーのモデルライフの途中で、もともと予定のなかったハイブリッド車が追加されたのは、ユーザーからの要望を受けてのことだ。
当時、ハイブリッド車が欲しいならプリウスやアクアがあるではないかと感じたものだが、そうではなかった。
ことの発端はユーザーの声であり、トヨタ側がカローラの販売台数を増やすための策として講じたわけではなかったのだ。
ニューモデルのカロースポーツも、そこそこ順調な滑り出しを見せていることには違いなく、すでにTNGAをベースとした新世代のワゴンやセダンも海外ショーで発表されている。
これらが日本市場に導入される際に今後どうなるのかが興味深いところだが、トヨタはカローラのブランド再構築を図るべく、すでに具体的なアクションをはじめている。
オーリスではなくカローラスポーツとして販売されたのも、その一環だ。件の海外ショーで披露された新型カローラは、なかなかスタイリッシュで若々しい。
実はCセグメントの中でも少し上を目指していて、たとえばゴルフの上級グレードに相当するモデルと対峙するようなイメージのクルマになるようだ。
それはまさしく、初代が掲げた「プラス100ccの余裕」を再現ともいえる。ただし、上級移行すれば価格の上昇は必至。するとフリートユーザーの反発を招くことは想像に難くない。
あるいはボディサイズの問題もある。カローラスポーツでは全幅が1790mmに達しており、次期モデルのワゴンはまだしも、セダンをそのサイズのまま日本で売ると、これまた既存ユーザーの反発を招くことが予想される。
何らかの形で1750mm程度に抑えることは考えられるが、どうしても全幅1700mm未満がよいというユーザーもいるはずだ。
これらの事情を鑑みると、当面は新旧併売という形をとるのではないかと予想できる。
そして数年後には、とりわけカローラとほぼ同世代である筆者らの世代にとって、カローラのイメージはこれまでと大幅に違ったものになっているのかもしれない。
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