大衆車のヤリスとはまったく異なるオーラを放つ!
その特異なフォルムから、ベースがヤリスであることを想像するのは難しい。確かな車名は「GRヤリス」であり、フロントライトやリヤコンビネーションランプに、ベースとなるヤリスの面影は残る。DNAがどこかで結ばれていることを知るのだが、3ドアハッチバックであり、前後のブリスターフェンダーが異様に盛り上がっていることから、漂うオーラは大衆車のヤリスとはまったく異なるのである。
超話題の「GRヤリス」! エンジンも駆動方式も違うものもある「4グレード」展開の買いとは?
それもそのはず、GRヤリスは大衆車などではまったくなく、むしろその立ち位置とはかけ離れた競技車に近いモデルなのである。
「登録ナンバーを取得可能な競技車」。
そういっても当たらずも遠からず。公共性は備えているし、ロングドライブもこなす。日常の通勤通学もいとわない。だが、根底に流れているのは、戦いの熱い思いであり、走りの熱い情熱なのである。
搭載するエンジンは直列3気筒1.6リッターターボだ。最高出力は272馬力、最大トルクは320N・mに達する。回転系の針を高回転で踊らせながら走るタイプではない。比較的低い回転からのトルクを利用して、グイグイと加速をつけていくスタイルである。1.6リッターでこんなパワフルな走りができるとは思いもしなかった。
不用意にフルスロットルで加速すれば、息をつく間もなくシフトアップが急かされる。6速に分けられたギヤを、次々に変えていかねばならない。気がつくと、とんでもない速度に達している。
サスペンションは、硬く締め上げられている。荒れた路面では、激しく上下動もする。だが、いざコーナーを攻めれば、前後左右に姿勢を入れ替えながら、さながら軽量級のラガーマンが軽快にステップを踏むように駆け回るのだ。
ボディサイズが小さいから、トレッドもホイールベースも短い。フラットライドではなく、もんどり打つように姿勢を変化させるのは、まさにラリーマシンであるかのようだった。
アンダーステアが強く感じる場面も
じつはそれも道理である。GRヤリスは、WRC世界ラリー選手権のあのWRCヤリスの精神を受け継いでいるのだ。市販車を改造して競技に出場するのではなく、競技車の魂と技術を市販車に移植する。そんな稀有なスタイルで開発されたのがGRヤリスなのだ。WRCヤリスがフィンランドの林道を、激しく姿勢を入れ替えながら走り姿とイメージが重なるのも無理はない。
ということから想像できるように、GRヤリスは駆動トルクスプリット型のAWDである。デフォルトは前輪60%、後輪40%のFFスタイルだが、ドライビングモードをスポーツにアジャストすれば前輪30%、後輪70%に変化する。デフォルトは、FF特有の操縦性である。ハイパフォーマンスと呼ばれる最高グレードには前後にトルセンLSDが組み込まれており、フロントタイヤが指し示す針路に向かってグイグイとノーズを引き込む。だが、やや後輪駆動気味のスポーツモードのようにテールがスライドする瞬間が少なく、ややアンダーステアが強く感じる場面もあった。
とはいえ、スポーツモードでも後輪のスタビリティが高く、安定している場面もある。コーナーからの脱出ではノーズがアウト側に逃げ気味だったのに対して、スポーツではちょうどいい駆動バランスに整うように感じたものの、場面場面でさまざまな表情見せた。ワインディングをハイペースでドライブするのならば、スポーツモードがオススメである。
トラックモードは前輪50%、後輪50%。タイヤのグリップに依存して攻めているとアンダーステアが強い。だが、タイヤをスライドさせていれば圧倒的なトラクションが得られるタイプである。つまり、ラリーやジムカーナや、あるいはサーキットレースのような競技用として考えればいい。
というように、GRヤリスは根底にはコンペティションの世界にある。激しい走り味がその証拠だ。改めてこのコンパクトなボディが走りにふさわしい。林道最速マシン、そう呼んでいいと思う。
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