今季初の表彰台、チームとしてワン・ツーフィニッシュ
Moto2クラスに参戦する小椋藍選手(MTヘルメット – MSI)が、表彰台に帰ってきました。フランスGP決勝レースで、2024年シーズン初、そして、MTヘルメット – MSIに移籍して初となる2位表彰台を獲得したのです。
【画像】2024年シーズンのMoto2クラスに参戦する小椋藍選手を見る(8枚)
「正直言って、今日は表彰台を獲得できるとは思っていませんでした」
決勝レース後の会見で、小椋選手はそう言いました。2023年日本GP以来の表彰台、2位だっただけに、表情は明るく、何度も笑顔を見せていました。
小椋選手のフランスGP予選Q2は、期待した通りにはなりませんでした。15分間の予選で、1回目のアタックを終えてピットインをしたときにトラブルがあり、2回目のアタックができなかったのです。1回目のアタックで記録したタイムでQ2を終えることになったのでした。6列目17番手からのスタートとなったのは、このためだったのです。
17番手という後方からの追い上げのレースで、小椋選手は少しずつ前のライダーを抜いていきました。──全力だった。何かを考える余裕はなかった──、小椋選手はそれだけ、よく集中していたのかもしれません。
小椋選手が表彰台圏内まで追い上げることができた理由は、ペースの維持でした。
「練習や予選に比べると、ラップタイム自体は速くなかったんです。みんな、5秒後半あたりがベストでした。今年はだいたい(レース後半に)ペースが落ちるんです。その分、僕はあまりペースを落とさずに走れました。それは良かったですね」
レースが後半に入ると、次第に周りのライダーのペースが落ちていきました。一方、小椋選手のペースは、ライダーを何度も抜いてきたにもかかわらず、序盤から終盤までほとんど変わらなかったのです。
残り5周の時点で4番手だった小椋選手は、2番手を走っていたアロン・カネト選手(ファンティック・レーシング)と約2秒もの差がありました。しかし最終ラップを迎えたとき、その差はすでになく、前を走っていたカネトとアロンソ・ロペス選手(スピードアップ・レーシング)をかわしたのです。見事にペースをキープした、その結果が2位だったのでした。
「予選でのフロントロウやポール(ポジション)、レースでの表彰台、優勝がないと、シーズンが始まらない。良いレースで5位、6位じゃなく、良いレースで2位表彰台だったので、良かったです。それに、チームのワン・ツーでしたからね。2位でも嬉しいものは嬉しいです」
「だから、いい日だな、って」と小椋選手は言いました。それはこちらが水を向けたわけではなく、彼自身から発した言葉でした。
ストイックな小椋選手は、例え表彰台を獲得しても自ら嬉しさを表現する言葉を取材の中で言った(会見などではなく)、という記憶は、あまり多くはありません。小椋選手にとって大きな意味のある2位だったのだろうということが、伝わってきました。
小椋選手は2024年シーズンを迎えるにあたって、5年間所属した(イデミツ・)ホンダ・チームアジアを離れてMTヘルメット – MSIに移籍しました。そしてシーズン序盤からほとんど、チームメイトのセルジオ・ガルシア選手の後塵を拝していました。フランスGPの決勝レースでも優勝したのはガルシア選手で、MTヘルメット – MSIはワン・ツーフィニッシュを果たしています。
チームメイトの存在がプレッシャーだったのではないかと、「ガルシアを意識していた部分はあったのか」と尋ねました。小椋選手の答えは、シンプルでした。
「ライダーとしてはもちろん良い気分ではないですけど、チームが強いのは良いことです。チームが強いことは証明されていますし、自分たちの仕事が間違っていないことも証明されています。というわけで、あとは自分、という考えになれるんです。そこは良いところですね。あとは自分が頑張ってチームメイトに勝つしかないですよ」
小椋選手の2024年シーズンが、チャンピオンシップが、本当の意味で幕を開けたのです。
MotoGP第6戦カタルーニャGPは、5月24日から26日にかけて、スペインのバルセロナ‐カタルーニャ・サーキットで行なわれます。
■Moto2クラスとは……
Moto2クラスは、トライアンフ「ストリートトリプルRS」の排気量765ccの3気筒エンジンをベースに開発されたオフィシャルエンジンと、シャシーコンストラクターが製作したオリジナルシャシーを組み合わせたマシンによって争われる。タイヤは2024年よりピレリのワンメイクとなった。クラスとしてはMotoGPクラスとMoto3クラスの中間に位置する。
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