1950~60年代のクルマに必ず付いていたのが、前席サイドウインドウの三角窓。くるんと回すと気持ちよく外の風が入ってきて、エアコンのない時代には非常に助かる装備だった。エコが叫ばれる今の時代、三角窓は復活してもいいんじゃないか。その可能性を考えてみた!
文/ベストカーWeb編集部、写真/トヨタ、日産自動車、三菱自動車、スバル、いすゞ、ポルシェ、フォルクスワーゲン、Adobestock(トビラ写真=Josiah.S@Adobestock)
おじさんだから言いたい! クルマの三角窓を復活させたらエコでいいんじゃないの?
■三角窓を発明したのはアメリカ車
1950年代のキャデラック・クーペ・ドゥ・ヴィル。三角窓じゃなくて四角窓だ。それにしてもこの優雅さはなんだ(harlequin9@Adobestock)
スバル360、ハコスカ、3代目クラウン、初代パジェロ。これらに共通している装備といえば、サイドウインドウの三角窓だ。
ただの三角形のガラス窓じゃない。上部と底辺を軸に回転させることが可能で、外気を取り入れることができた。しかも開き具合によって風量調整まで可能。当時のクルマは、エアコンはもちろん送風・換気という機能すら十分ではなかったから、この三角窓の存在は絶大だったのだ。
エアコンやらオートマやら、自動車のらくちん装備の多くはアメリカが生み出したが、三角窓の源流もアメリカ車のようだ。1930年代のGMが前席サイドウインドウに独立した小窓を設け、換気に役立てたという記述がWikipediaにもある。
当時のアメリカ車はフロントウインドウがサイドに回り込み、Aピラーは上側が前のめりになるというフリーダムな造形が多かったから、三角窓も三角ではなくて四角に近い形だったようだ。
■きちんとしたベンチレーションの発達で三角窓が絶滅
1969年の日産スカイライン 4ドアGT-R。この次の「ケンメリ」スカイラインから三角窓は姿を消した
非常に有用な三角窓だったが、1960年代の終わりころから急速に姿を消していく。たとえば1969年に誕生したフェアレディZは最初から三角窓を備えていないし、クラウンは1971年にデビューした4代目(通称クジラ)、スカイラインは1972年に登場したケンメリで、三角窓を廃止している。
なんで三角窓はなくなったのか。コストや安全面(はみ出した箇所が歩行者のダメージとなり得る)など、理由はいろいろあるのだが、エンジンの排熱を利用したヒーターの研究が進み、きちんとした配管構造を持つ強制送風式のベンチレーションシステムが普及しはじめたことが最大の原因だろう。
ベンチレーションシステムを備えたクルマは当然、三角窓が不要になるわけだが、その姿は当時のクルマ好きにとってものすごくモダンに見えた。その結果三角窓は見た目的にも旧世代の遺物と化し、一挙に陳腐化が進んだと思われる。
■フィットやトールのはめ殺しガラスは三角窓にならないか?
トヨタ ヴォクシー。一番前方にある三角窓は開けないのだろうか?
とはいえそれから50年が経ち、復古調のクルマが人気を博す時代となった。環境面でも省エネが喜ばれる時代だから、エアコンに頼らず外気を取り入れる三角窓というのは支持を集めそうな気がする。復活の可能性はないのだろうか。
ネックとなってくるのは、コストと空力だろう。本来不要な部分にA’ピラーを追加し、ガラスを分割させて開閉機構を持たせるのは結構なコストがかかる。場合によってはドアミラーの形状や取り付け位置も変更が必要となるかもしれない。
加えて窓を開けて外気を取り込むことは空力特性を大幅に悪化させるから、燃費にナーバスな近頃のクルマにはデメリットともなりかねない。これらを超えて余りある魅力があるかどうかが、三角窓復活のカギとなるはずだ。
ならばこういうのはどうか。ホンダ フィットやダイハツ トールなど、ドアガラスの前方にはめ殺しのガラスが付いているクルマ。あの部分を開閉式にすることは難しいだろうか? 本来は視界確保のためだと思うが、すでに付いているものをアレンジするだけならコストも抑えられるに違いない。
最近のハイトワゴン軽自動車も同種のタイプが多いから、適用できるクルマは結構多いはず。自動車メーカーの皆さん、ご一考いただけないでしょうか!
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