プラットフォームから一新した2代目
text:Matt Prior(マット・プライヤー)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
ゴージャス。課税前の金額が20万8000ポンド(2828万円)もするクルマの、1つの表現。ラムウールのフロアマットがご希望なら、別途の追加料金が必要になる。
ゴースト。2009年にデビューし、史上最も販売面で成功したロールス・ロイス製のサルーン。目前にあるのは、まったく新しいバージョン2.0となる。もっとも、カリナンの売れ行きを見ると、ゴーストの販売記録はいずれ塗り替えられるだろう。
初代となる先代のゴーストには、巨大なBMW製の基礎構造が隠れていた。BMWがロールス・ロイス・ブランドを保有していることは、皆さんもご存知だろう。
1990年末、フォルクスワーゲンは、ロールス・ロイス・ベントレーの買収に動いた。しかし、ロールス・ロイスは譲渡条件に含まれておらず、ベントレーのみがフォルクスワーゲンに吸収された過去がある。
分断されたかに思えた買収劇だったが、20年が経過してみると、悪いことだったとはいえないようだ。ロールス・ロイスとベントレーは、まったく異なるクルマづくりを進めている。各モデルが強い個性を主張できるほど、ブランドとして確かな成長を遂げた。
親会社とは異なる、専用のプラットフォームも生み出せるようになった。「ラグジュアリーのアーキテクチャ」と、自ら認めるものだ。
この豪華なアーキテクチャは、長い押し出し構造材を用いた、オール・アルミニウム製。全長やホイールベース、地上高の異なるクルマを、比較的簡単に展開できる。
カリナン由来のV型12気筒と四輪駆動
車内スペースの確保やデザインのために、ハードウエアの搭載位置の変更も容易だという。例えばゴーストの場合、テールエンドは先細りにできている。
カリナンやファントム、そしてゴーストは、同じプラットフォームを基礎構造としている。今後登場する、クーペやコンバーチブルの新型も、同じものを採用するだろう。
ゴーストの内側に積まれるパワートレインは、基本的にはカリナンのもの。ボンネットの下には、ツインターボで過給される6.75LのV型12気筒エンジンが収まる。
最高出力は571psで、肝心な最大トルクは86.5kg-mもある。しかも極太のトルクは、アイドリングから600rpmだけ回転数が上の、1600rpmから生み出される。
トランスミッションは8速ATで、四輪駆動。発進とほぼ同時に、豊かなトルクを4本のタイヤから路面へ伝えることが可能だ。
ロールス・ロイスは、ドライブトレインの部品番号には、BMWではなくロールス・ロイス独自のものが割り振られていると主張する。筆者は、あまり重要なことだとは思わないけれど。
サスペンションは、フロントがダブルウイッシュボーン式で、リアがマルチリンク式。前後ともにエア・サスペンションとアダプティブ・ダンパーが備わるが、ドライブモードで硬さを変化させられるわけではない。
オーナーの多くは、自ら設定を変えたいとは考えていない。ロールス・ロイスが設定した乗り心地に、身を委ねたいのだ。
クルマ版のコンシェルジュ
ゴーストは、クルマ版のコンシェルジュ。基本的には、オーナーの人生をより心地よくし、面倒なことをかわってくれる存在だといえる。
リア・サスペンションには、電圧12Vで稼働するアクティブ・アンチロールバーを採用。カメラ映像から路面の凹凸を読み取り、起伏の接近を判断し、柔軟さを変化させる。
フロント側には、ボディをフラットに保つための、マスダンパーを備える。リアにはステアリング・システムが付く。
ほかにも多くのテクノロジーが、ゴーストを影武者のようにサポートしている。しかし、オーナーはその存在を知る必要はない。
ゴーストはかなり大きい。全長は5546mmで、全幅はミラーを含むと2148mm。先代より、わずかに大きくなっている。
ただし、ドアの防音材などの厚みも増しており、車内スペースに大きな違いはない。といっても、高身長のオーナーがリアシートで快適に過ごすのには十分以上の、空間は用意されている。
身長の高いドライバーの場合、太いBピラーが横方向の視界にかかりそうだ。オプションのリアウインドウのブラインドも、視界を制限する。しかし、外界の目線から隠れたいのなら、むしろ好都合な存在となる。
ロールス・ロイスの最上級、ファントムのオーナーなら派手好きで、細かいことを気にしないかもしれない。しかしゴーストのオーナーは、浪費に対する意識も高く、志向が違う。目立つことは、あまり好まないだろう。
ステアリングを握る音が目立つほど静か
ゴーストのレザー内装は、ステッチは控えめ。ファントムのように、ガラス張りのギャラリーがダッシュボードを飾ることもない。目立たないことに対する、ロールス・ロイス流の仕立て方だ。
ダッシュボードの右端に、小さな星が刻印された、ゴーストのエンブレムがあしらわれる。聞こえより、実際目にする雰囲気はずっと良いはず。
インテリア全体のフィット感や仕上げも、素材の選ばれ方も、見事。筆者の好みでは、メーターパネルはモニター式ではなく、アナログ・メーターが並んでいても良いと思う。
エアコンの送風口は、繊細な金属製。アンビエント・ライトも、贅沢に感じられるかどうかは別として、巧妙にインテリアを演出する。ロールス・ロイスとして、極めて快適だということは、疑いようがない。
車内はとても静か。全体で100kgもの防音材が用いられている。ちなみにファントムは130kg。当初は低音域が少し大きかったそうだが、空気口の処理で軽減させたという。
高速道路の追い越し車線を走っていても、リアシートのオーナーは、フロントシートのドライバーとささやくような声で会話ができる。車内で聞こえる一番大きなノイズは、レザー巻きのステアリングホイールを握る、手のひらが擦れる音くらい。
もう少し直径が大きくて、細いリムの方がファントムっぽいと、筆者は思う。
この続きは後編にて。
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みんなのコメント
クライスラー300にソックリってコメントは
何回目で反映されんだよw
なんか急にクソ仕様になったなカービュー
気分なのか?