この記事をまとめると
■スーパーGTでは2024年シーズンよりGT300クラスの予選方式が変更された
GT-Rのエンジンを積むフェアレディZの潜在能力に期待大! GT300クラスの大注目マシンについてドライバーとチームに直撃した
■GT300クラスではQ1とQ2の合算タイムにより予選順位が決定される
■予選方式の変更など新しい時代に向けて試行錯誤が行われている
カーボンニュートラル時代に向けて予選方式を変更
スーパーGTでは、2030年にシリーズ全体のCO2排出量を半減すべく、環境対応のロードマップ「スーパーGTグリーンプロジェクト2023」を採用。それに合わせて2024年からGT500クラスに続いて、GT300クラスでもカーボンニュートラルフューエルが採用されたほか、使用タイヤの本数が削減されたのだが、使用タイヤのセット数の変更に伴って予選方式が変更された。
2023年まではニュータイヤで予選Q1を行い、Q1を突破したチームが再びニュータイヤでQ2を出走し、そのタイムで上位グリッドを決するノックアウト方式が採用されていたのだが、2024年は全チームが1セットのタイヤでQ1、Q2に出走し、そのタイムを合算して順位が決められることになったのである。
ちなみに、エントリー台数の多いGT300クラスはさらに複雑で、Q1はこれまでどおり、A組、B組とふたつのグループにわけてタイム争いを実施。各組の上位8台、計16台がQ2のグループ1(Upper16)に出走し、そこで上位16台を決するほか、Q1の各組9位以下のチームがQ2のグループ2(Lower17)に出走し、17位以降のグリッドが決められることになったのである。
これまでのノックアウト方式の予選システムであれば、Q2でトップタイムを出したチームが予選で1位となり、ポールポジションから決勝を戦っていたのだが、2024年の合算タイム方式では、Q2でトップタイムを出しても、Q1で伸び悩んでいたチームは合算タイムで沈むこととなり、逆にQ2でタイムが伸び悩んでもQ1で稼いだタイムで予選1位になることも可能である。
それだけに、レースファンのなかには「わかりづらくなった」とか「スッキリしない」と思っている方もいると思うが、レースを戦うチームおよびドライバーはどう思っているのだろうか?
「昨年までのノックダウン方式だと、まずQ1を突破しなければならなかったので、Q1を託されたドライバーは大きなプレッシャーのなかでアタックしていました。とくにタイトル争いのかかるシーズン終盤戦になると、予選Q1での緊張感は強かった。でも、2024年はQ1で敗退することがなくなりましたので、そういったプレッシャーがなくなったのはポジティブです」。
そう印象を語るのは、36号車「au TOM’S GR Supra」でGT500クラスに挑むTGR TEAM au TOM’Sの伊藤大輔監督だ。
さらに、伊藤監督は「これまではQ1を突破するのが厳しい場合、通れるだろうドライバーに、リスクを負ったタイヤ選択でアタックしてもらっていたんですけど、今年は同じタイヤでQ1、Q2を走るので、古いタイヤでもタイムを出せるドライバーをQ2にとっておくこともできるし、仮にQ1で奮わなかったとしてもQ2に進出できますからね。うちのチームとしては両ドライバーともにパフォーマンスが高いので、今年のルールはよかったと思います。確かに見ているファンにしてみればわかりづらい部分はあると思うんですけど、チームとしては同じコンディションで予選を走れるというメリットはありますね」と語る。
そのうえで「予選方式が変わっても、Q1とQ2の間でドライバーがフィードバックしてコンディションに合わせてアジャストする作業は変わらないです。タイヤの内圧調整やQ2ではQ1の使用タイヤで出走するので、アタックのタイミングは変わってくると思いますが、その程度であまり変わらない」と伊藤監督は解説した。
同条件での戦いによりファンが楽しめるならそれが一番
また、GT300クラスに61号車「SUBARU BRZ R&D SPORT」を投入するR&D SPORTの総監督、小澤正弘氏は、今年の新方式について「1セットのタイヤで、2名のドライバーがアベレージでどれだけ速く走れるか……ということを考えなければならなくなったので難しくなりました。私たちが使用するダンロップタイヤのアタック時のピークは高いんですけど、それをQ1で使い切っちゃうので、タイヤの落ち分を考慮したQ2のセットアップも考えなければいけない。ドライバーの好みも違うので、どういった組み合わせでいくのか、それが難しいですね」とのこと。
さらに、「Q1では1発でタイムを出さないといけないので、これまでのノックアウト方式と同様にドライバーにとってはプレッシャーがあると思います」と小澤総監督はメンタル面の影響を付け加える。
ちなみに、R&D SPORTで61号車「SUBARU BRZ R&D SPORT」のステアリングを握っている山内英輝選手は、「予選方式は変わりましたが、Q1でもQ2でも与えられた状況のなか、一発でタイムを出せなければならないですからね。ドライバーとしてのアプローチは大きく変わらないと思います」と語る。
このように、2024年の予選方式の変更についてチーム関係者の受け止め方はさまざまだが、8月3~4日、富士スピードウェイで開催されたスーパーGT第4戦「FUJI GT500km Race」では、サポートレースでオイル漏れが発生したことからイレギュラー的にGT300クラスの予選方式が変更された。GT300クラスは前述のとおり、ふたつのグループにわけて予選を走行するが、走行順により路面状況の変化が大きいと競技団が判断したことから、ウエット宣言時の予選方式を採用。具体的には合算タイムではなく、予選Q1によるグループわけを行ったうえで、Q2のタイムによって予選順位が決定されることになったのである。
この結果、K2 R&D LEON RACINGの65号車「LEON PYRAMID AMG」がQ2でトップタイムをマークし、ポールポジションを獲得したのだが、個人的にはこのシステムはシンプルでわかりやすかった。
とはいえ、スーパーGTを運営するGTAは第5戦の鈴鹿より、再び予選方式を変更することを発表した。
GT500クラス、GT300クラスともにタイム合算方式は継続されるものの、予選でのタイヤの1セット制限を撤廃。さらにGT300クラスではQ1の組みわけが廃止されたほか、Q2の組みわけは継続されるものの、Upper14とLower15という形にわけられて、タイム争いが展開されることになったのである。
この予選方式の変更で、両クラスともにQ1、Q2でそれぞれニュータイヤでのアタックが可能になり、ピュアなスピード対決が展開されることになる。
さらに、GT300クラスではQ1での組みわけがなくなったことで、いかにクリアラップをつくるかが難しくなった反面、全チームがイコールコンディションでタイム争いが展開されることになった。
「2024年は予選システムが変更されましたが、いろいろとトライしていることはいいと思います。チームとしてはイコールコンディションで戦えればいいですけど、一番重要なことはファンが面白いと思えること。予選システムの変更がどのような影響を与えるのか、それを含めてお客さんにも見てもらいたいですね」と語るのはTGR TEAM au TOM’Sの伊藤監督だ。
その言葉どおり、2024年のスーパーGTは30周年のメモリアルイヤーであり、この度重なる予選システムの変更も新しい時代に向けて、試行錯誤を行なっているのである。
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