いつの時代もゴルフはゴルフであり世界のスタンダードだった
ついに日本でも8代目となるフォルクスワーゲン・ゴルフ(ゴルフ8)の導入が始まった。フォルクスワーゲン・ゴルフといえば、いつの時代でもCセグメントハッチバックのベンチマークとして世界中の注目を一身に浴びてきたモデルだ。それは今回のゴルフ8でも同様であり、日本のファンも待ち望んでいたことだろう。なぜフォルクスワーゲン・ゴルフはこれほどまでに世界中から注目されるようになったのか、その歴史をおさらいしながら、フォルクスワーゲン・ゴルフの「愛され力」を紐解いていきたい。
ゴルフ7乗りが本音で辛口チェック! 新型ゴルフ8の「イイとこ」「ダメなとこ」
■フォルクスワーゲンの誇る名シリーズ、ゴルフとは
フォルクスワーゲン・ゴルフが誕生したきっかけは、先代モデルとされるタイプ1(ビートル)の旧態化にあった。1933年にドイツ首相となったアドルフ・ヒトラーの大衆政策の「国民全員がクルマを持てるようにする」という計画により開発が進められ、1938年にプロトタイプが完成、第二次世界大戦後に民生化されたタイプ1は、安くて頑丈だったことから、ドイツだけでなく欧州全域やアメリカで大ヒット。しかしながら、1960年代になるとその設計の古さが問題となり、そこで後継モデルとして計画されたのが初代ゴルフ(ゴルフ1)だったのだ。
初代ゴルフ(ゴルフ1) 1974~1992年
ゴルフ1は1974年に誕生し、1992年まで生産されたロングセラーモデル。2ボックス型のボディにエンジンを横置きして前輪を駆動するクルマはゴルフ1以前にもあったが、このゴルフ1の登場により、コンパクトカーとはこういうものという模範解答を世界に示した。以後、フォルクスワーゲン・ゴルフが世界のベンチマークになったというわけだ。
ちなみに「ゴルフ」という車名は、大西洋からヨーロッパに流れ込む暖流(Golf Storm)に由来しており、スポーツのゴルフとはまったく関係がない。
2代目ゴルフ(ゴルフ2) 1983~1991年
2代目ゴルフ(ゴルフ2)は、1983年に登場し、1991年まで生産。大成功を収めたゴルフ1のイメージを色濃く残したかなりコンサバティブなフルモデルチェンジであった。
高性能版であるGTiが途中からDOHCになって人気を博したのもトピックだ。最低地上高を拡大した今でいうクロスオーバーSUVのようなゴルフカントリーというレアなモデルも存在した。
3代目ゴルフ(ゴルフ3) 1991~1997年
3代目ゴルフ(ゴルフ3)は、1991年から1997年まで生産販売。このモデルでゴルフ1・2と続いた丸目のヘッドライトが楕円形になり、賛否両論を巻き起こす。
ちなみにゴルフ1の生産年がこのゴルフ3の販売以降まで継続されていたのはカブリオレモデルがモデルチェンジしていなかったためで、ゴルフ3でカブリオレが登場することで、ゴルフ1の生産は完全に終了することになった。
4代目ゴルフ(ゴルフ4) 1997~2006年
4代目ゴルフ(ゴルフ4)は、1997年から2006年まで販売されていた。このゴルフ4では高級化が図られており、製品クオリティも大幅に向上した。
また、ABSやEPS(横滑り防止装置)、デュアルエアバッグが装備されるようになり、安全性も飛躍的に高められている。
5代目ゴルフ(ゴルフ5) 2003~2009年
5代目ゴルフ(ゴルフ5)は2003年から2009年に渡って生産。新しいプラットフォームとなったゴルフ5のクオリティ、ドライバビリティ、セーフティ性能は圧倒的であり、それは全世界中で「ゴルフ・ショック」と称えられ、同カテゴリーの他車に衝撃を与えた。
ゴルフ4までの愛らしいフェイスはこのゴルフ5でイメージチェンジ。吊り目のヘッドライトになったことでスポーティさが強調された。
6代目ゴルフ(ゴルフ6) 2008~2012年
6代目ゴルフ(ゴルフ6)は2008年に登場。プラットフォームはゴルフ5を引き継いでおり、エクステリアとインテリアの意匠変更がモデルチェンジのメイントピック。そういう意味ではゴルフ5の正常進化版であり、ゴルフ5をより熟成した完成度の高いモデルといえる。
エンジンのダウンサイズが図られたのもこのモデルから。2012年まで販売された。
7代目ゴルフ(ゴルフ7) 2012~2019年
7代目ゴルフ(ゴルフ7)は2012年にデビュー。新世代プラットフォーム「MQB」の採用により、高い走行性能と安全性を手に入れており、日本では輸入車として初めて日本カー・オブ・ザ・イヤー(2013-2014年)を受賞するなど評価も高かった。
ハイブリッドの「GTE」やEVの「e-ゴルフ」などの電動車がラインアップされたのも時代を反映していたと言える。
ひと目でゴルフとわかる外観とデジタル化されたインテリア
■日本未発売、最新型8代目のゴルフとは?
8代目ゴルフ(ゴルフ8) 2019年~
そして2019年、フルモデルチェンジして誕生したのが8代目ゴルフ(ゴルフ8)だ。日本への導入は2021年の6月と、本国のデビューからかなり遅れてしまったが、待つだけの甲斐のあるモデルとなっている。
エクステリアは、各部に歴代ゴルフのアイコンが散りばめられており、ひと目でフォルクスワーゲン・ゴルフであることがわかるもの。特に印象的なのは初代から一貫している「L」字型の太いCピラー。それはまるで引き絞った弓のようであり、今にもゴルフ8を前方に解き放ちそうなイメージとなっている。
スリーサイズは全長4295mm×全幅1790mm×全高1475mmと先代モデルよりも全長と全高は少しだけ大きくなったが、全幅は逆に小さくなっている。
基本的なデザインは水平基調でダイナミック。LEDとなったヘッドライトも薄型のデザインに変更され、サイバーな印象になった。
そして、このサイバーな印象は、ドアを開けて車内に身を滑り込ませるとより強く意識させられる。ゴルフ8の最大のトピックとされているインテリアは、”Digital Cockpit Pro”のデジタルメータークラスターと、同視覚軸上で結合されたデジタルディスプレイが存在感を放つ。
各種操作系はデジタルディスプレイに集約されており、必要最低限のスイッチ、それも触れて左右に指をスライドするタッチスライダーなどが配されるのみのシンプルなものとなっている。ただし、運転席から見える景色は歴代ゴルフと同様であり、乗り換えによって戸惑うことは少ないだろう。
パワーユニットは110馬力の1リッターTSIエンジンと150馬力の1.5リッターTSIエンジンを用意。いずれも48Vマイルドハイブリッドシステムが組み合わせられており、スタート時にはモーターがエンジンをサポートしてくれるため、スムーズな加速を実現している。
日本での展開は4グレード構成で、1リッターTSIを搭載するのが、「eTSI Active Basic」と「eTSI Active」で、価格はそれぞれ291万6000円、321万5000円。1.5リッターTSIを搭載するのが「eTSI Style」「eTSI R-Line」で、それぞれ370万5000円、375万5000円となる。
ちなみにドイツ本国ではディーゼルエンジンの「GTD」やスポーツモデルの「GTI」、GTIをさらにパワーアップした「GTIクラブスポーツ」、トップモデルで最強のゴルフとなる「R」も発売されている。
現状、日本導入のアナウンスはされていないこれらモデルのいずれかに興味があるなら、歴代ゴルフの日本導入モデルを鑑みるに、「待ち」という選択肢もありだろう。
■ゴルフが愛される理由
ここまで初代からの歴史をおさらいし、そして最新モデルとなる8代目を紹介したが、それによってわかったのは、歴代ゴルフがいつの時代でもフォルクスワーゲン・ゴルフであり続けたということだ。これはどういうことかというと、ライバルである他車がフォルクスワーゲン・ゴルフに追いつき追い越すために常に変化を余儀なくされていたのに対し、フォルクスワーゲン・ゴルフはいつの時代もトレンドの半歩先を行き、フォルクスワーゲン・ゴルフとしてデビューして絶対的な個性を維持できたことに他ならない。
いつの時代のフォルクスワーゲン・ゴルフも、いつまでも飽きの来ないシンプルで無駄のないデザインを持ち、決して最速ではないが安定していて安心感のある操縦性があり、コンパクトカーというクラスを超えたクオリティを有し、信頼性の高いメカニズムを備えていた。これらすべてを高い次元で両立するバランス力の高さこそがフォルクスワーゲン・ゴルフの魅力のすべてであり、そして時代を超えて愛され続けている理由だ。
■まとめ
はたして日本導入がされたゴルフ8も、この勝利の方程式により、その成功は約束されているようなものだ。たまにはフォルクスワーゲン・ゴルフを慌てさせるようなライバルが登場するのを見てみたい気もするが、未来に登場するゴルフ9も、そしてゴルフ10もゴルフ11も、そんなライバルの半歩先を行っているはずだ。これからもずっとフォルクスワーゲン・ゴルフがフォルクスワーゲン・ゴルフであり続けるために。
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みんなのコメント
Ⅶが出た時は、なんちゅう完成度や?すげ〜なⅦ、いいな、替えようかな?と思った。
しかしそのまま6を乗り続けゴルフ6が10万キロを超えましたが、未だ全く飽きが来ません。これもすげ〜なゴルフ、と思います。
この時間的耐久性の高さがゴルフの真髄と考えます。