フォルクスワーゲンとの共同開発
フォードの新しいミニバン、トルネオ・コネクトは、大人しい見た目以上に重要なモデルといえる。商用バンから派生したような気取らないデザインながら、自動車界の巨人、フォードとフォルクスワーゲンが手を組んだ初めての量産車だからだ。
【画像】VWと共同開発 フォード・グランドトルネオ・コネクト 欧州製ミニバンと写真で比べる 全124枚
数年後には英国のハッチバックの定番、フォーカスとフィエスタの後継モデルとなる、新しいバッテリーEV(BEV)もこの協力関係で誕生する予定。その前触れとして、トルネオの完成度は背負うものが大きい。
欧州ではSUV人気が強く、トルネオ・コネクトのようなミニバンは減少傾向にある。現在の英国市場では、直接的なライバルに挙げられるのはフォルクスワーゲン・キャディと、高級ブランドのメルセデス・ベンツTクラス程度。
ルノーは乗用車仕様のカングーを英国で売らなくなり、シトロエン・ベルランゴやプジョー・リフターといったモデルも存在するが、こちらはBEVのみ。内燃エンジン版は選べない。
新しいトルネオには、2755mmと2970mmの2種類のホイールベースが用意されている。シートレイアウトは2列の5名か3列の7名かを選択できる。短い方がトルネオ、長い方がグランドトルネオを名乗る。
エンジンは最高出力113psを発揮する1.5Lガソリンターボと、121psを発揮する2.0Lディーゼルターボの2種類。トランスミッションは6速マニュアルか7速オートマティックが選択可能だ。
しっかり差別化されたフロントマスク
今回の試乗車はロングホイールベース版の7シーターで、2.0Lディーゼルの7速AT。グランドトルネオのアクティブ・グレードだった。ほかに、チタニウムとスポーツという2種類のトリムグレードが用意される。
フォードはトルネオへフォルクスワーゲンとは異なるフロントマスクを与えており、差別化はライバルより果たされている。エンブレムを張り替えただけではない。上級ブランドとは異なり、強く気にするユーザーは少ないとは思うが。
しかし、ダッシュボードはフォルクスワーゲンの色が濃い。エアコンの操作系が、実際に押せるハードボタンではなくタッチセンサー式な部分は、フォードでも改めるべき点に数えられる。イルミネーションが内蔵されず、昼間以外はそもそも見にくい。
今回の試乗では夜も運転したのだが、送風の強さを調整しようとタッチパネルを手探りしていて、レーンキープアシストのお世話になってしまった。全幅は1835mmと、さほどワイドではないのだけれど。
インフォテインメント・システム自体も、少々複雑で扱いにくい。筆者は試乗中、殆どスマートフォンと連携するアップル・カープレイを利用していた。
そんなダッシュボード以外、インテリアで褒めるべきところは多い。フロントガラスはワイドで、サイドガラスも背が高く、運転席からの視界は優秀。全高は1820mmもあり、車内には開放的な雰囲気が漂っている。
乗用車ライクなドライブフィール
助手席が独立したフロント側の車内は、大人に不足ない空間がある。2列目にも、わがままをいわなければ大人3名が問題なく乗れる。3列目は流石に狭いものの、170cmくらいの身長なら嫌がられないだろう。
両側のリアドアはスライド式で、開口部は大きい。2列目シートはレバーで簡単にスライドでき、3列目へのアクセスは容易。商用バンのように広い荷室が必要な場合は、3列目シートをクルマから降ろすこともできる。
小物入れも前後シートの各所に用意されている。ゴミ箱も設けられている。
トルネオが基礎骨格としているのは、フォルクスワーゲン・グループの汎用性の高いMQBプラットフォーム。乗用車の多くも採用するもので、商用バンのトランジットから派生していた先代とは異なる。
そのため、ドライブフィールもずっと乗用車ライクになった。先代も乗り心地や操舵性などに優れていたが、最新型へ乗り換えて不満を抱くドライバーはいないはず。
乗り心地は全般的に落ち着いていて快適。路面がよほど荒れていない限り、乗員が揺さぶられることはない。ただし、ドライバーだけでの走行中は振動も大きくなるが。
コーナリング時は安心感が伴う。パワーが限定的で、そもそもアンダーステアには転じにくい。
先代は、「フィエスタやフォーカスに迫るほどステアリングはリニアで正確。太いトルクで直進時の安定性にも優れる」。と評価されていた。新型はそこまで突出していないものの、悪くもない。
多くのユーザーが必要とするすべて
英国価格は少々お高め。10.0インチ・タッチモニターの獲得やふんだんな運転支援システムが実装されているとはいえ、約3万ポンド(約495万円)は喜びにくいと思う。
筆者の知人はタクシー運転手をしているが、この価格を聞いて「本当に?それならメルセデス・ベンツTクラスが買えますね」。とコメントしていた。
フォルクスワーゲン・グループのミニバン、ダチア・ジョガーなら、1万6645ポンド(約275万円)から購入できることも事実。だが、最近は全般的にクルマの価格が上昇している。平均的な乗用車でも4万ポンド(約660万円)前後するから、妥当といっていい。
アフターマーケットには、車いす用のスロープも用意されている。新しいフォード・トルネオには、多くのユーザーが必要とするもので、欠けているモノが思い浮かばない。
フォード・グランドトルネオ・コネクト 2.0エコブルー・アクティブ FWD(英国仕様)のスペック
英国価格:2万9661ポンド(約489万円)
全長:4825mm
全幅:1835mm
全高:1820mm
最高速度:186km/h
0-100km/h加速:12.0秒
燃費:18.7km/L
CO2排出量:140g/km
車両重量:1700kg(予想)
パワートレイン:直列4気筒1968ccターボチャージャー
使用燃料:軽油
最高出力:121ps
最大トルク:32.5kg-m
ギアボックス:7速オートマティック
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みんなのコメント
フォルクスワーゲン: シャラン
SEAT: アルハンブラ
Ford: ギャラクシー
ちゅう兄弟車、それもミニバン、があったと記憶しているが。