2021年までホンダのF1パワーユニット開発を率い、現在はDAZNのF1中継でコメンテーターを務めるなどしている浅木泰昭氏は、日本でモータースポーツが盛り上がっていくためには、自動車メーカーの資金に頼るような状況から脱却する必要があると語った。
浅木氏はホンダに在籍していた当時、N-BOXの開発を手掛けて大ヒットに導き、その後F1のパワーユニット開発を手掛け、チャンピオン獲得に貢献した。様々な成功を収めてきたわけだ。
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浅木氏はそういう成功を収めることができた理由について、「危機を乗り越える力」があったからだと考えており、それが近日発売される同名の著書の中でも綴られている。
そんな「危機を乗り越える力」を発揮してきた浅木氏に、日本のモータースポーツは再び活気付かせるための考えを聞いた。
「一般論として考えると、やはり環境問題を度外視してしまうと無理なんだろうなと思っています」
浅木氏はF1のPU開発のLPL(ラージ・プロジェクトリーダー)を務めていた当時、使用が義務化されていないカーボンニュートラル燃料を先行投入した。それも、F1の未来を見据えての行動だった。
「カーボンニュートラルにしても何にしても、そういうモノにいち早くシフトしていかなければ、モータースポーツは世の中に受け入れられないだろうと思います」
大阪F1計画は理に適っている? 企業依存体質から脱却へ
そして浅木氏は、もうひとつモータースポーツが盛り上がっていく上で欠かせないことがあるとして、次のように続けた。
「日本やドイツって、特にF1を開催するのが苦しくなっています。そういう国は、自動車会社のお金に頼った興業になっていると思います」
そう浅木氏は言う。
「でも、そういうお金に頼らずにF1をやっている国もありますよね。レースだけで儲けるのではなくて、その国の威厳を示す目的などで開催するグランプリも多いです。例えばラスベガスは、F1をやることでさらに知名度を上げて、1年中世界中からお客さんが来るようにして収益を上げようという発想だと思います」
そんな中で、最近話題になっている大阪でのF1開催計画は、理に適ったモノではないかと浅木氏は言う。
「大阪の提案は、IRや大阪そのものの観光と結びつけてひとつの企業に頼る、従来のレースの姿から脱却していると思います。日本のレースは、F1に限らず、企業に頼る形から脱却していかなければいけないと思います」
「今の形だと、そういう企業の業績に左右されてしまいます。しかもそれでうまくいかなかったりすると、レース好きの人から罵倒されたりしてしまう。割りが合わないのではと思うんです。そういうのを変えていかなければいけません」
「F1は世界中にその都市の名前、サーキットの名前を広めることができます。開催権料は払いますが、それでも損じゃないという計算ができるような形態を考えなければいけない……今の少しの企業に頼って成り立っているレースから、いかに脱却するかということが根本にあると思います」
「日本も、そしてドイツにしても、自動車産業が重要な国ですよね。やっぱりそこに依存してしまっているんだと思います。そして、そこから脱却できない。でもそこから脱却しないと、未来は大変かもしれません。新しいレースの形を見つけていかないと、なかなか苦しいのではないかと私は見ています」
「大阪の計画が出てきて、そういうことが議題として挙がってきたということは、良いことなのではないかと私は思っています」
将来のモータースポーツの可能性
そう語る浅木氏は、モータースポーツの今後の可能性をどう考えているのだろうか?
「私が期待しているのは、F1とMotoGPですよ。私は技術者ですからね」
そう浅木氏は語り、次のように続けた。
「容赦のない技術者の戦い、技術者がやるべきレースはF1とMotoGPだと思うんです。そこで勝てば、世界一だっていう証明になるレースです。そういうレースで世界一になれば、レース以外のことだったとしても、世界一とか世界初を自分たちが成し遂げられるという自信に繋がります」
「興業としてならば、他の考え方もあるかもしれません。F1も、ここまで長いこと続けてこられたのはすごいと思います。でも、それが未来永劫続いていくかは分かりません。変わっていかなきゃいけないと思います」
「それでも今のF1はうまくやっているように見えます。アメリカ市場を取り込むのにも成功してるし、カーボンニュートラルを目指すことについても一生懸命やっているように見えます。方向性としては、良い線を突いていると思います」
「ただアメリカは諸刃の剣なんです。アメリカでの人気を引き止めようとすると、やはり商売の世界になってしまうので、F1の良さが消えてしまう可能性もあるのかなと思っています。どうなっていくのかは、まだ見通せませんけどね」
F1は容赦のない技術者の戦い。だから面白い
開発者としての立場を離れ、外から見るF1を楽しめているのか? そう尋ねると、浅木氏は次のように語った。
「私の楽しみ方は、みなさんとはちょっと違うかもしれません……」
「メルセデスが強かったのになぜ没落してしまったのか、(共同創業者のディートリッヒ)マテシッツさんが亡くなったことでレッドブルはどうなっていくのか、アストンマーティンは(オーナーのローレンス)ストロールさんの影響でどういう形で伸びていくのか……そういうところを見ています」
「他の人とは違うかもしれませんが、人間研究というような形でF1を見ています」
「人間とか社会とか、それを象徴するような出来事がF1にはあります。そして変な調整がないので、表に出てくる。そういう面白さがF1にはあるんじゃないかと思います」
レッドブルは今季マシンRB20に、他のチームとは大きく異なる考え方を採用してきた。しかもシーズン中には大規模アップデートが投入され、メルセデスが使うのを諦めたゼロポッドを採用してくるのではないかという噂もある。
「もしそうなったら、その独創の仕方が面白いですよ。レッドブルは勝ってるのに、容赦なく新しい技術を入れてくる……それはそれで面白いです」
「(ゼロポッドを本当に投入してきたとしたら)メルセデスの失敗の本質はそこじゃなかったということなんでしょうね。でもメルセデスとしては、問題の本質がそこにはないということが分かっていても、外部からの批判に耐えられず、変えるしかなかった……そういう人間模様が面白いです」
「良い発想だった、でもその発想は技術的には早すぎて失敗したということは、自動車業界でもいっぱいありますからね」
浅木氏の著書『危機を乗り越える力』では、N-BOXやF1の開発秘話が、所狭しと盛り込まれている。絶賛発売中である。
なおその浅木氏の著書発売を記念したトークイベントが、4月1日(月)19時から、東京・渋谷のLOFT9 Shibuyaで開催予定。F1カメラマンの熱田護氏もゲストとして登場し、『危機を乗り越える力』に書かれている開発の舞台裏、直後に開催されるF1日本GPの展望なども語るという。
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