現時点での筑波サーキット最速は日産GT-Rニスモ2020年モデル
日産GT-R NISMO 2022年モデルが発表された。今回お伝えしたいのは、筑波サーキット・コース2000で市販車史上トップのレコードタイム「59秒361」を保持するGT-R NISMO 2020年モデルだ。同記録は自動車雑誌「CARトップ(交通タイムス社)」が筑波サーキット・コース2000で39年間、1000台以上新車をタイムアタックし蓄積してきたデータに基づいており、日産のワークスドライバーである松田次生さんのドライブによるもの。
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では、GT-R NISMO 2020年モデルはどんなクルマだったのか? 上記テストの際、モータージャーナリストであり、現在ユーチューバーとしても活躍中の五味康隆さんもタイムアタックに挑戦。五味さんが叩き出したタイムは「59秒712」。五味さんも元レーシングドライバーとはいえ、現役トップのレーシングドライバーでなくとも1分が切れるということだ。単なる速さではなく、この事実こそGT-Rニスモの凄まじさと言えないだろうか。以下、五味さんによる試乗リポートをお届けしよう。
2020年モデルで大幅進化したGT-R NISMO! その変更点とは
大口は叩くものではない。2019年6月末にドイツにて2020年モデルのGT-R NISMOに試乗した際、同車の企画責任者である田村宏志さんに、こう語ったことがすべての始まりだった。「2017年、GT-R NISMOで筑波サーキットを1分を切ることができなかった雪辱を、この2020年モデルであれば楽に果たすことができますよ」と。 GT-R NISMO 2020年モデルの進化は凄まじい。ポイントは3つある。まずは「軽量化」だ。ボンネットやフェンダーがカーボンに置換された。ふたつめは「エンジン」。本体に変更はなくスペックも同じだが、ターボシステムが高性能仕様となりアクセルレスポンスが格段に向上した。 3つめは「足まわり」。セラミックカーボンブレーキも新素材を採用し、より高いストッピングパワーを獲得。またブレーキタッチを含めたコントロール性まで向上した。さらにタイヤの構造変更や足まわりの味付け変更、剛性がアップした新デザインのホイールを採用している。 つまり、すべてにおいて洗練されたのが2020年モデルということだ。余談だが2017年モデルのGT-R NISMOと乗り比べるとボディ剛性が高く安心感が高い。田村さんに聞くと「職人技で、ボディの組み付け精度を向上した」とのこと。
GT-R NISMOで筑波サーキットを速く走るためのポイントは?
ところが、である。いざ筑波サーキットにコースインすると「1分は切れないかも」と不安になってきた。筑波サーキットは特殊なレイアウトだ。例えば鈴鹿サーキットのように旋回力でタイムを稼ぐコースではなく、ステアリングを切りながら加減速を繰り返す過酷な構成である。ところが、GT-R NISMO 2020年モデルが大きく進化したのは、まさしく「旋回力」なのだ。 では、筑波サーキットで1分を切るためにはどうしたらいいのか? まずは眼を慣らすこと。このスピード域では強烈な加減速のおかげで、景色が歪む。1ヘアピンを立ち上がり、ダンロップコーナーを見ようにも眼の焦点が合わないのだ。そのため適切なタイミングでステアリングを切れず、レコードラインに載せることができない。いつも強烈なGを体験し眼が鍛えられている現役ドライバーとの差は、ここにある。 目指すべきポイントを見据え、タイヤの通るラインを意識する。1分の壁をぶち破るためには80Rを全開で抜ける必要があり、フロントタイヤが芝生に落ちるギリギリを攻めなければならない。まさに針の穴を通すような正確なステアリング捌きが要求される。
タイヤを滑らせながら限界まで攻め切れるかがタイムアップの鍵
眼が慣れてきたところで、徐々にGT-R NISMOの性能がわかってくる。どれだけ強烈にブレーキを掛けステアリングを切り込んでも、旋回しながら加速しても、タイヤはもちろん滑るが、ボディを含めて各部がよれない。これが2020年モデルの強みである。 タイヤ、ホイール、サスペンション、ボディ、すべてがレーシングカーのようにソリッドで、いつ何時もコントロール下における。どこかがよれると、意図せぬタイヤのスライドや、滑りながらのコントロールができない。結果、アクセルを踏むことができなくなる。 GT−R NISMOで筑波サーキットを1分切るためには、タイヤが滑ることを前提にコントロール性のよさを活かして攻め切れるか、がキモだった。 あのときの走りは、グリップしていたときのほうが少ない。絶えず4輪が滑っているのだが、それを強靭でしなやかなボディと、冷静にクルマをコントロールする精神力で抑え込んだ。 その結果が、59秒712だ。
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