■「税制優遇」は本質的な理由ではない?
北米や東南アジアではメジャーなカテゴリーとなっているピックアップトラック。
しかし、日本国内では、2021年10月現在、新車販売をおこなっているのはトヨタ「ハイラックス」のみです。
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かつては日産「サニートラック」や三菱「トライトン」なども販売されていましたが、なぜ日本はピックアップトラックが少ないのでしょうか。
ピックアップトラックとは、一般的に、キャビンとは別に独立したボンネットと荷台を持つクルマと定義されます。
米国の国税庁にあたるアメリカ合衆国国内歳入庁(IRS)では、「車室内から容易にアクセスできない、内部の長さが6フィート(約183cm)以上の貨物エリアを備えた車両」に対して税制優遇をおこなっており、これをピックアップトラックの定義のひとつと見ることもできます。
日本ではあまり見ることのできないピックアップトラックですが、米国ではもっともメジャーなカテゴリーです。
実際に、2020年にアメリカでもっとも多く販売されたクルマは、1位がフォード「Fシリーズ」、2位がシボレー「シルバラード」、3位がラム「ピックアップ」と、上位をピックアップトラックが独占しています。
日本の自動車メーカーも、トヨタ「タンドラ」や「タコマ」、日産「タイタン」「フロンティア」、ホンダ「リッジライン」などのモデルを販売しており、これらを合わせた米国のピックアップトラックの新車販売台数は、年間で200万台を優に超えるほどです。
200万台という数字は、日本の全新車販売台数のおよそ半分に相当し、かなりの市場規模であることがわかります。
しかし、日本国内ではピックアップトラック自体を見かけることがあまりありません。
そもそも新車販売自体がほとんどおこなわれておらず、2020年10月時点で正規販売での新車購入が可能なピックアップトラックはトヨタ「ハイラックス」のみです。
アメリカンなスタイルに憧れる人のなかには、前述の紹介したようなピックアップトラックを並行輸入して愛車とする場合もありますが、全体から見れば少数派といえるでしょう。
なぜ、日本と米国でこれほどまでにピックアップトラックに対するニーズが異なるのでしょうか。
この点について、「米国は農業が盛んだから」という理由が挙げられることがあります。
農機具や大量の牧草を運搬するには、ピックアップトラックが必要不可欠というのがその根拠です。
米国が世界有数の農業国であることは間違いではありませんが、それならば日本の軽トラック的な、より簡素で安価なものでもよさそうです。
そもそも農業自体は日本を含む世界中でおこなわれているにもかかわらず、ピックアップトラックが売れていない地域も少なくありません。
また、税制優遇が大きな理由といわれることがあります。実際に、前述の通り、米国ではピックアップトラックに税制優遇措置がとられており、乗用車に比べて購入価格や維持費などで割安感があります。
もうひとつのピックアップトラックの巨大市場である東南アジア諸国でも、同様の税制優遇を見ることができます。
ただ、これだけではピックアップトラックが日本で少ない本質的な理由とはいえません。
一般的に商用車といわれる、貨物車や事業用車両に対する税制優遇は日本でもおこなわれているからです。
優遇の内容は各国で異なりますが、税制優遇だけでは、米国や東南アジアでピックアップトラックが人気であることの理由を説明することはできません。
同様に、ボディサイズの問題も本質的な理由とはいえません。たしかに、米国で人気のピックアップトラックの多くが全幅2000mmを超え、全長は6000mmにもおよぶ超巨体です。そうしたクルマを日本で日常的に使用するのは困難でしょう。
ただ、ピックアップトラックというのは、あくまでクルマのカテゴリーのひとつであり、ボディサイズは直接的にはほとんど関係がありません。
例えば、上記のIRSの定義では、日本の軽トラックも該当するため、「ピックアップトラック=大きい」というわけではありません。
このように考えると、定義によっては、ピックアップトラック自体はすでに日本にも多く存在しているということもできます。
軽トラックも税制優遇がおこなわれており、その意味ではピックアップトラックの役割の一部は、軽トラックが果たしているといえるのかもしれません。
■日本では「1台2役」である必要はなかった
ただ、いくら軽トラックが日本が世界に誇るべきユーテリティートラックとしても、やはり米国だけで年間200万台以上販売されるピックアップトラックのニーズを、軽トラックだけで満たしているとは考えにくいのも事実です。
そもそも、ピックアップトラックの大きなメリットは、キャビンと分離した大きな荷台を持っていることです。
この「キャビンと分離した」という部分がポイントであり、これはすなわち、泥や水滴が付いたものでも気にせずに載せられるということを意味しています。この点がSUVやセダンなどの乗用車と大きく異なる部分です。
一方、ピックアップトラックには、大人4人が快適に乗車できるというメリットもあります。
実際に、米国で人気のピックアップトラックは、乗用車と同等の快適装備を持っており、この点が日本でいうところのトラックと異なります。
つまり、ピックアップトラックの本質的なメリットは、トラックとしての利便性と乗用車の快適性を兼ね備えた、「1台2役」のクルマという点ということができます。
日本で販売されている乗用車の多くは、泥や水滴の付いたものを気にせずに載せることができませんし、軽トラックには大人4人が快適に乗車できるだけの装備がありません。
逆にいえば、日本ではそのようなクルマのニーズが少ないということになりますが、その理由はどこにあるのでしょうか。
これを解き明かすには、クルマそのものの話ではなく、日本の文化的・社会的事情を考える必要があります。
当然、現在の日本でも、「泥や水滴の付いたものを気にせずに載せる」というニーズや、「大人4人が快適に乗車する」というニーズはあります。
ただ、前者はいわゆる通常のトラックが、後者は一般的な乗用車や軽自動車が、そのニーズを満たしています。つまり、それらを一緒に必要としている人が少ないといえます。
その理由は、日本がすでに経済的に成熟国家であり、社会的なインフラがしっかり整っている国であるためと考えられます。
つまり、「泥や水滴の付いたものを気にせずに載せる」というニーズは、専門の業者がユーザーに代わっておこなったり、あるいはそのためだけに特化したクルマを用意しておこなう仕組みが整っているからです。
具体的にいえば、家庭から出る日々の廃棄物や粗大ごみは、ゴミ収集車によって定期的に回収される仕組みがあるため、クルマで廃棄物処理施設へと運ばなければならないユーザーはそれほど多くありません。
また、泥や水滴の付いた農機具などを日常的に運搬する必要のあるユーザーは、それ専用の軽トラックなどを家族で移動するためのクルマとは別に保有している場合が多く、1台で2役を担う必要がありません。
このように、「分業制」が成立しているのが、日本という国の特徴です。
一方米国は、経済的には成熟した国家であるものの、その広大な国土から日本ほど社会的なインフラが整っていない地域もあります。
米国のなかでもピックアップトラックが売れる地域は限られており、テキサス州などの南部の農耕が盛んなエリアで圧倒的に販売台数が多いのが実情です。
こうした地域は、都市部をのぞいて社会的なインフラが整っていない場合も多く、また、買い物などで都市部まで長距離を移動する必要があることから、汚れたものの積載性と快適性の両方のニーズを満たすことが求められます。
もちろん、若者の間では「イカツイ」フロントマスクを持ったピックアップトラックに乗ることが一種のステータスとなっているという側面も人気の理由のひとつではありますが、本質的にいえばそうしたニーズがあるということだと考えられます。
東南アジアの場合も、2000年代に入って急激に経済成長した新興国ということもあり、道路整備などが進んでいない地域も少なくなく、また、地方部ではユーザー自身が農作業や家の補修などをおこなう場合も多いことから、やはり汚れたものの積載性が求められます。
一方、経済的事情から役割に合わせて複数台を保有することが難しい場合も多く、その点で1台2役のピックアップトラックが重宝されると考えられます。
日本同様、ピックアップトラックの販売がほとんどない欧州も、基本的には日本同様分業制が成立していることが「ピックアップトラック不毛の地」である大きな理由のひとつであるといえます。
※ ※ ※
自動車業界では「道がクルマをつくる」という格言があります。つまり、その国や地域の社会的事情によって、クルマの形や内容が変化するという意味です。
米国(の一部)や東南アジアでは1台2役のピックアップトラックが必要な土壌が育まれてきましたが、現代の日本では、それぞれの役割に特化したクルマの方が求められているということでしょう。
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みんなのコメント
軽トラのコストパフォーマンスが高いからね。