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【試乗】ボルボ XC90が大幅改良。「完全電動化への橋渡し」だけでは役不足だと感じる、新型の熟成度

掲載 更新 3
【試乗】ボルボ XC90が大幅改良。「完全電動化への橋渡し」だけでは役不足だと感じる、新型の熟成度

ボルボが2030年までに全ラインナップをBEV化する電動化戦略を撤回すると同時に、次なる戦略の核となるモデルとして発表したXC90のマイナーチェンジ。北欧2カ国に渡って開催された新型XC90の試乗会に参加し、プレミアムSUVの進化を体験した。

プレミアム電動化SUV、XC90の再出発地点
2014年発表の2代目XC90にPHEV(プラグインハイブリッド)が設定されて以降、2020年に48V MHEV(マイルドハイブリッド)を追加するなど、ボルボによる電動化戦略は先鋭的だった。全車種の電動化を完了し、BEV(電気自動車)も次々と投入するなど、2030年までにBEVブランドへ移行する計画は粛々と進められてきたように見える。

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ところが、近年変化しつつあった市場ニーズや関税率引き上げなどの市況に対応するため、電動化の目標スケジュールを調整することを2024年9月に発表。具体的には、2030年までに世界販売台数のうち90~100%をBEVとPHEVで達成、MHEVは販売地域の特性に合わせて残すというものだ。

もっとも、2040年に温室効果ガスの排出量を正味ゼロにする計画は不変で、BEVブランドになる目標に変わりはないとしている。

ミドルSUVのEX60やラージセダンのES90といったブランニューBEVの登場も控えているとはいえ、完全電動化への道筋は一直線ではなく、市場ニーズや成熟の度合いに合わせて変化させるという柔軟な戦略だ。BEVの購入を決めきれないボルボファンは大いに歓迎するはずだ。

この発表と同時に公開されたのがXC90のマイナーチェンジだ。ボルボの電動化計画における急先鋒としての役割を与えられて登場したフラッグシップSUVは、新型で完全電動化に向けた橋渡しという役割を新たに担うことになる。その発売を前にして、デンマーク・コペンハーゲンを起点にした試乗会が開催され、空港近くの駐車場に並べられたXC90と初めて対面することになった。

リアスタイルの変更は最小限。刷新した大型フロントグリル
10台以上が並べられた新型の第一印象はよりシンプルに、そしてプレミアムな印象を強めたということ。ヘッドライトは最新のBEV EX30やEX90などと同様に、トールハンマーをより強調するT字形状へと変更され、またバンパーはキャラクターラインを排除した、面と曲線で構成される。

最大の特長は大型化とともにフィンデザインを刷新したフロントグリルだろう。2方向から伸びる斜線を重ねるように配置するレイヤーは「着物の右前の衿合わせ」を想起させ、落ち着きと気品を感じさせるとも思ったのだが、実際には着物からインスピレーションを受けたデザインではなかったようだ。頑丈で信頼性が高いことを意味するボルボのエンブレム「アイアンマーク」の矢印からインスパイアを受けて再構成したものだという。いずれにしてもプレミアムな所有感を刺激してくれるであろうことは間違いない。

ほかにもテールランプ内部の光源形状、そしてリアバンパーでテールパイプを隠すなどさりげない刷新はあるものの、エクステリアデザインでの大きな変更点はフロントマスクに集中している。それでもリアやサイドのスタイルから古さを感じなかったのは、全長5m近い大柄なSUVでありながらロングノーズとショートオーバーハングによるスポーティなシルエットを有しているからではないだろうか。ワールドプレミアから10年が経過した今もなお、そのスタイルは安定感ある運転の楽しさとラグジュアリー性を醸し出しているようだ。

試乗会で用意された2台のうち、まずはMHEV「B5」のフロントシート乗り込む。濃紺のボディカラーに合わせたかのようなテキスタイルシートは、100%リサイクル素材の生地とは思えないサラサラとした柔らかな手触り、そして大きなサイドサポートを配置しているわけでもないのに包まれ感を味わわせてくれる。実はこの感覚、40:20:40分割可倒式のリアシートに座っても同様で、フロントシートと同様の快適性を実現するプレミアムブランドらしいしつらえだ。

インテリアデザインで大きく変わったパーツといえば、縦型のセンターディスプレイを中心にしたフロントダッシュボードだ。従来9インチだった画面サイズは11.2インチに拡大されるとともに、解像度を高めることでより鮮明な画面表示が実現されている。これは360度カメラの映像を表示したとき、または地図表示で小さな地名表示を見ようとしたときなど効果を体感するシーンは数多い。ダッシュボードのインテリアトリムや4つのエアコン吹き出し口の形状も新デザインに刷新するなど、新世代のボルボ車たちと同様のテイストに合わせた形だ。

スポーツ性と快適性相反する性能を高めた
試乗コースはコペンハーゲンの西側、エーレスンド海峡を渡すオーレスン リンク(約16km)を通ってスウェーデンのマルメーへと入り、その先の高速道路から市街地、住宅街や郊外までさまざまな交通シーンを周遊するもの。

新型の中でもエントリーモデルという位置付けのB5、搭載するエンジンは2L直4ターボという形式こそ同じだが、圧縮比を10.5→11.5に高めるとともにミラーサイクルを採用して燃焼効率を向上させている。最大トルクは10Nm向上して360Nmに、MHEVシステムのモーターも10kW/40Nmに向上しており加速感は高められているはずだが、体感できるほど大きな違いではない。

こうした動力性能よりも、モーターアシストによる発進時のスムーズさや遮音材を追加したことによる静粛性の向上など、快適性を高める改良の効果が目立った。標準仕様のサスペンションも優れた乗り心地を実現するために、路面状況に応じてダンピングを調整する機構が盛り込まれている。郊外を走っているとアスファルト補修による段差を多く見かけたが、乗り越えたときの音や衝撃は想像するよりはるかに小さい。

かと思えば、以前に試乗したエントリーグレードよりもフラットライドな気持ちのいい走りも見せてくれるから興味深い。4WDであることも要因のひとつに挙げられるが、レーンチェンジや比較的高速のカーブが長く続く高速道路のジャンクションで操縦安定性の高さ、運転の楽しさを味わえた。

試乗前に受けた「よりダイナミックでコンフォート」というまさに説明どおりのキャラクターであったのだが、試乗ルートの折り返し地点で乗り換えた、ナッパレザー仕様の明るいインテリアとしたPHEV「T8」でもやはり同じ感想を抱くことになった。

ただし、こちらはオプション設定されているエアサスペンションを装着した仕様。B5とT8で車両重量の差が200kg近くあるので直接比較できないが、衝撃吸収後の収まりの良さという意味ではエアサスペンション仕様にやはり軍配があがる。広いモーター駆動領域、回生ブレーキの効き具合を交通環境に合わせてパドルスイッチで調整できる機能など、PHEVらしい特性もあいまって発進から巡航、停車までとにかくスムーズな運転を可能にしてくれる。まるで自分の運転が上手くなったかのようにサポートしてくれる機能・性能は、多人数で移動できる3列シートSUVにおいて重要なファクターだ。

デビューから10年。XC90は熟成を重ねて完成度は極まり、クラシックボルボのように今後も長きにわたって愛されるキャラクターを持っていると確信した。

[ アルバム : ボルボ新型XC90 はオリジナルサイトでご覧ください ]

文:Webモーターマガジン 蔭山洋平(Motor Magazine編集部)
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みんなのコメント

3件
  • zoo********
    ボルボはもう完全EVメーカー宣言を撤回した方がいい。
    中国用に必要かもしれないが、EVだけではもう無理だろう。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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