現在位置: carview! > ニュース > ニューモデル > ポルシェ911にF1エンジン 600馬力超のレストモッド「TAGターボ」はなぜ生まれたのか

ここから本文です

ポルシェ911にF1エンジン 600馬力超のレストモッド「TAGターボ」はなぜ生まれたのか

掲載 5
ポルシェ911にF1エンジン 600馬力超のレストモッド「TAGターボ」はなぜ生まれたのか

本物のF1用V6ターボを使用

レストモッド界隈では、ポルシェ911を取り扱うのはもはや定番中の定番になっている。アナログ的なスリルとレトロモダンな外観を売りにした新企業が毎週のように登場しているからだ。

【画像】1万rpmのF1エンジンを積んだクラシック・ポルシェ【ランザンテ930 TAGターボ・チャンピオンシップを写真で見る】 全4枚

しかし、マクラーレンF1のメンテナンスやレーシングカーの公道仕様の製作で知られる英国のランザンテ(Lanzante)は、一味も二味も違う911を作り上げた。

ランザンテは、よくある現代のフラット6のアップグレードではなく、マクラーレンが過去に使用した本物のF1用V6エンジンを911に搭載する。

ポルシェが開発し、当時のスポンサーにちなんで “TAG” と名付けられた1.5L V6ターボエンジンは、予選で1000馬力を超えたと噂されている。

1984年から1986年にかけてマクラーレンを3年連続でドライバーズチャンピオンに押し上げたが、その後はアイルトン・セナに3度のトロフィーをもたらした伝説のホンダ製ユニットに引き継がれた。

このような強力なエンジンをクラシックカーに載せるのは魅力的な提案だが、同社を率いるディーン・ランザンテ氏がAUTOCARに語ったところによると、それは当初の計画にはなかったという。

彼はただ、マクラーレンのレーシング部門から、TAGのオリジナルテスト車両である930世代のポルシェ911ターボを購入したかっただけなのだ。チーム代表であるザック・ブラウンには丁重に断わられたものの、ランザンテ氏はめげなかった。

「彼らはエンジンをたくさん積んでいました。これらのエンジンは80年代からあったものですが、すべて保管されていました」と彼は言う。

チャンスだと思った彼は、オリジナルテスト車両を参考にしたロードカーを少量生産するというビジネスケースを作り始めた。エンジンの信頼性と公道での扱いやすさを向上させるためにコスワースを選んだが、コストがかさんだ。

「2、3台を作るだけでは莫大な費用がかかることに気づきました。もっと数が必要だったんです。当初は(エンジンの)レース勝利数と同じ25台を作ろうと考えていましたが、エンジンの数が足りなかった。そこで各シーズンのドライバーにちなんで、計11台を用意することにしました。奇数の理由は、1985年にニキ・ラウダの代役としてジョン・ワトソンが起用され、ドライバーが3人になったからです」

顧客の声で作られた3台の特別仕様車

彼は、当時の車両と同じような外観にする必要があると「断固として」主張し、顧客にもポルシェの色や素材から選ぶよう頼んだ。TAGターボ911にはサンルーフや電動ミラー、オリジナルのステアリングホイールが装備されていることに触れ、「ピンプ・マイ・ライド(自動車改造番組)みたいなクルマではないんですよ」と冗談めかして言う。

しかし、特に重要な顧客がいた。1985年のチャンピオンシップで優勝したアラン・プロストのマクラーレンMP4/2のオーナーで、 “標準” のTAGターボ911の510馬力以上のパンチを求めていたのだ。

「マクラーレンは4barのブーストで走っていました。わたし達は3barです。彼らはレース用燃料を使っていましたが、わたし達は通常の燃料を使うので圧縮比を下げました」これはパワーと使い勝手の「トレードオフ」だとランザンテ氏は言う。

彼はこの1人の顧客の影響力を見込んで、TAGエンジンのマクラーレンが獲得した各タイトルを称える3台の “チャンピオンシップ” エディションを製作する計画を立てた。625馬力にパワーアップし、400kgの軽量化によって乾燥重量920kgに抑えている。

そして、3台にはドライバーのヘルメットにちなんだカラーリングが施される。2台はアラン・プロストのフランス国旗、もう1台はニキ・ラウダのオーストリア・マールボロである。

チャンピオンシップ・エディションの詳細について、ランザンテ氏は次のように述べている。

「シートベルトにはヒューゴ・ボス(Hugo Boss)と書かれています。ステアリングホイールはパーソナル製で、アルカンターラではなくスエードを使用しています。すべて時代を反映したものです。シフトレバーはF1マシンと同じデザインで、ホイールはダイマグがオリジナルの図面を拡大して作ったもので、スポークのパターンはF1ホイールと一致しています」

ドライバビリティへの譲歩(「安全対策」)としてトラクションコントロールが搭載されているが、ランザンテ氏は「少しだけ凶悪」だと言う。

「オリジナルであること」が重要

3台のチャンピオンシップ・エディションは当初の計画にはなかったが、合計14台のTAGターボを製造するという意志は固い。もちろん、入手可能なエンジンの数には限りがあり、「保険」として1基余分に購入しているが、これを使用するつもりはない。

「エンジンをリメイクしたり、鋳造品を作り直したりすることはできます。ですが、これを購入した人の多くは、ラップタイムが目的ではありません。これはそういうものではないのです」

「F1ドライバーがF1レースウィークを走ったマシンに乗れる。これは特別なことです。ほとんどの人がそのために購入しました。マクラーレンMP4を買える人はどれだけいるでしょうか? 数人はいるかもしれませんが、そのうち運転できる人は何人いるでしょう? ごくわずかです」

「リメイクすることはできますが、同じ魂を持つことはありません。オリジナルのエンジンであることが重要なのです。マクラーレンからオリジナルのマシンを借りて、スキャンしました。これ以上、何台も作り出したら、意味がない」

レッドブルRB17の改造に挑戦

TAGターボ911は、ランザンテ氏が手がけたプロジェクトの中で「最も困難なもの」だったという。

では、次は何をするのだろう?「実を言うと、わかりません」

「多くの人が『ポルシェのプロジェクトは成し遂げたね』と言っていました。次のプロジェクトはあるのか? 市場は飽和状態です。他の人がやっていることを追いかけるのではなく、何か新しいもので先頭に立ちたい。他人を非難しているわけではありませんが、同じことはしたくない。自分の力で立ちたいのです」

インタビューの数日後、ランザンテは大きな声明を出す。

レッドブルRB17は、エイドリアン・ニューウェイ氏が設計した、11200馬力のV10ハイブリッドを搭載するサーキット専用マシンである。

レッドブル・テクノロジーのクリスチャン・ホーナーCEOは、サードパーティの手によってRB17を公道走行可能な仕様に改造する可能性を示唆し、「それが可能な企業はいくつかあると思う」と述べていた。

最初にそこに到達するのはランザンテかもしれない。同社は声明で「公道での走行を可能にするために必要なアップグレードの開発を直ちに開始する」と述べた。

完成品が待ち遠しい。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

全車[EV]化計画を撤回!? ベンツもボルボもEV化減速してるけど…[ホンダ]はどうするん? 
全車[EV]化計画を撤回!? ベンツもボルボもEV化減速してるけど…[ホンダ]はどうするん? 
ベストカーWeb
ホンダが激カッコいいSUV発表! [アキュラADX]みたいなクルマが日本にも必要だろ!
ホンダが激カッコいいSUV発表! [アキュラADX]みたいなクルマが日本にも必要だろ!
ベストカーWeb
[車検]費用が増える? 2024年10月より車検での[OBD検査]を本格運用へ
[車検]費用が増える? 2024年10月より車検での[OBD検査]を本格運用へ
ベストカーWeb
即納って不人気車なの!? なんでそんなに待たなきゃならん!? [納期]にまつわる素朴なギモン
即納って不人気車なの!? なんでそんなに待たなきゃならん!? [納期]にまつわる素朴なギモン
ベストカーWeb
いまさら人には聞けない「ベンチレーテッドディスク」と「ディスク」の違いとは? ブレーキローターの構造と利点についてわかりやすく解説します
いまさら人には聞けない「ベンチレーテッドディスク」と「ディスク」の違いとは? ブレーキローターの構造と利点についてわかりやすく解説します
Auto Messe Web
ラリージャパン2024開幕直前。豊田スタジアムやサービスパークの雰囲気をお届け/WRC写真日記
ラリージャパン2024開幕直前。豊田スタジアムやサービスパークの雰囲気をお届け/WRC写真日記
AUTOSPORT web
メルセデス・ベンツの『GLE』系と『GLS』にオンライン先行受注にて“Edition Black Stars”を設定
メルセデス・ベンツの『GLE』系と『GLS』にオンライン先行受注にて“Edition Black Stars”を設定
AUTOSPORT web
ラリージャパン2024“前夜祭”が豊田市駅前で開催。勝田貴元らが参加のサイン会とパレードランが大盛況
ラリージャパン2024“前夜祭”が豊田市駅前で開催。勝田貴元らが参加のサイン会とパレードランが大盛況
AUTOSPORT web
フランス人スター選手と一緒の気分? 歴代最強プジョー 508「PSE」 505 GTiと乗り比べ
フランス人スター選手と一緒の気分? 歴代最強プジョー 508「PSE」 505 GTiと乗り比べ
AUTOCAR JAPAN
セカオワが「愛車売ります!」CDジャケットにも使用した印象的なクルマ
セカオワが「愛車売ります!」CDジャケットにも使用した印象的なクルマ
乗りものニュース
トヨタWRCラトバラ代表、母国戦の勝田貴元に望むのは“表彰台”獲得。今季は1戦欠場の判断も「彼が本当に速いのは分かっている」
トヨタWRCラトバラ代表、母国戦の勝田貴元に望むのは“表彰台”獲得。今季は1戦欠場の判断も「彼が本当に速いのは分かっている」
motorsport.com 日本版
メルセデスAMGが待望のWEC&ル・マン参入! アイアン・リンクスと提携、2025年LMGT3に2台をエントリーへ
メルセデスAMGが待望のWEC&ル・マン参入! アイアン・リンクスと提携、2025年LMGT3に2台をエントリーへ
AUTOSPORT web
TCD、モータースポーツ事業を承継する新会社『TGR-D』を2024年12月に設立へ
TCD、モータースポーツ事業を承継する新会社『TGR-D』を2024年12月に設立へ
AUTOSPORT web
ウイリアムズとアメリカの電池メーカー『デュラセル』がパートナーシップを複数年延長
ウイリアムズとアメリカの電池メーカー『デュラセル』がパートナーシップを複数年延長
AUTOSPORT web
“650馬力”の爆速「コンパクトカー」がスゴイ! 全長4.2mボディに「W12ツインターボ」搭載! ド派手“ワイドボディ”がカッコいい史上最強の「ゴルフ」とは?
“650馬力”の爆速「コンパクトカー」がスゴイ! 全長4.2mボディに「W12ツインターボ」搭載! ド派手“ワイドボディ”がカッコいい史上最強の「ゴルフ」とは?
くるまのニュース
フェラーリ育成のシュワルツマンが陣営を離脱。2025年はプレマからインディカーに挑戦
フェラーリ育成のシュワルツマンが陣営を離脱。2025年はプレマからインディカーに挑戦
AUTOSPORT web
スバルBRZに新たな命を吹き込む 退役軍人のセカンドキャリアを支援する英国慈善団体
スバルBRZに新たな命を吹き込む 退役軍人のセカンドキャリアを支援する英国慈善団体
AUTOCAR JAPAN
オープンカー世界最速はブガッティ!「ヴェイロン」より45キロも速い「453.91km/h」を樹立した「W16ミストラル ワールドレコードカー」とは?
オープンカー世界最速はブガッティ!「ヴェイロン」より45キロも速い「453.91km/h」を樹立した「W16ミストラル ワールドレコードカー」とは?
Auto Messe Web

みんなのコメント

5件
  • h_l********
    レッドブルRB17は、エイドリアン・ニューウェイ氏が設計した、11200馬力のV10ハイブリッドを搭載するサーキット専用マシンである。

    飛行機か船のエンジンでも積んでるのかな?
  • やすぅ1103
    旧型911にクレマーとかルーフのチューンあるあるで憧れていました。F1エンジンはちょっと想像を超えます。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

1694.03642.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

180.08000.0万円

中古車を検索
911の車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

1694.03642.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

180.08000.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村