■宅配便として知られていた「ペリカン便」今はいずこに!?
現在では、日常生活での商品購入手段としてネット販売が広く普及しています。それを支えているのは「宅配便」の存在です。
宅配便の大手サービスとして「日通のペリカン便」をあげる人も多いと思いますが、最近その名前を聞くことがなくなりました。なぜでしょうか。
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日通のペリカン便は、日本における物流最大手のひとつで、現在は海外にも数多くの拠点を広げる「日本通運(にっぽんつううん)」が、1977年に登場した宅配便サービスです。
小荷物を発送するのは、現在ではごく簡単なことですが、宅配便が存在するまでは、個人が行うのもひと苦労なことでした。
というのも、郵便小包(現:ゆうパック)もしくは「チッキ」と呼ばれた鉄道小荷物に頼るしかなかったのです。
そのため発送したい人は、荷物を郵便局や駅まで運ぶ必要がありました。
さらにチッキの場合、自宅まで届けてもらうことはできず、荷物を受け取るには駅に行かねばなりませんでした。
1970年代に宅配便が開始されると、その便利さから80年代には急速に普及。最初に宅配便サービスを広げたのはヤマト運輸ですが、これを追うように大手輸送会社も続々とこの市場に参入し、宅配便サービスの競争が始まりました。
そのため不便だった鉄道小荷物は、1986年に姿を消しています。
このようにして開始されたペリカン便は、その後も順調にサービスを拡充。1991年には、国内航空便を用いて速達性を高めた「スーパーペリカン便」、2000年からは冷凍品の輸送も可能な「クールペリカン便」もスタート。
このほか「ゴルフペリカン便」「スキーペリカン便」なども用意され、様々な需要に応じていました。
しかし元来、日本通運は小規模な個人向け輸送よりも、鉄道や海運、大型トラックを利用した法人向け輸送を得意としています。
さらに宅配便市場ではヤマト運輸と佐川急便の2トップが圧倒的に強かったため、同市場でのシェアを伸ばせませんでした。
そして同様に、郵便による宅配便サービス「ゆうパック」(2007年から郵便小包から宅配便貨物に変更)を扱っていた「郵便事業株式会社(現:日本郵便株式会社)」もまた、収益が伸び悩みに。
そこで両者は統合による競争力強化を狙い、新たに「JPエクスプレス」を設立。ペリカン便ブランドは日本通運から離れ、JPエクスプレスが引き継ぐことになりました。
なお両社の出資比率は、郵便事業が66%、 日本通運が34%でした。
しかし事業を始動した2009年4月の段階では、システム的な問題などにより事業統合ができないままだったため、ひとまずペリカン便事業のみで営業し、同年10月にサービスの統合を目指していました。
ところが2009年10月の統合も総務省から認可が下りず再延期。JPエクスプレス自体の赤字も拡大しており、2010年3月期末の累積損失は約681億円に達しています。
そこで2010年7月、JPエクスプレスを清算、同社のペリカン便事業を郵便事業のゆうパック部門が引き受けることに。つまりペリカン便のサービスはゆうパックに引き継がれて一本化されたのでした。
そして同時に、ペリカン便のブランドはここでついに消滅することになったのです。
■「ペリカン便カラー」のバンやトラックは、その後どうなった?
日通のペリカン便といえば、ペリカンが描かれた黄色い看板が印象的でした。
宅配便の集配で使われていた軽トラックやライトバン、ウォークスルーバンなどでは、白い車体に青と黄色の帯が塗られており、一目でペリカン便のクルマとわかるようになっていました。
このペリカン便のカラーリングは、トミカに代表されるミニカーでも人気があり、いくつか商品化されていますので、馴染みがある人も多いでしょう。
ではペリカン便が消滅したあと、これらのクルマはどうなったのでしょう。
実は一部のクルマでは、ペリカン便・日本通運のロゴを消し、黄色+青帯を残したままゆうパックの集配に用いられていました。
それなりの台数が塗装変更を受けぬまま、ペリカン便カラーで残っていたのです。
2010年のペリカン便消滅から10年以上が過ぎた2023年現在でも、地域によっては時折その姿を見ることができるようです。
なお前述のスーパーペリカン便は、郵便事業にペリカン便が統一された後も残り、現在は「エクスプレスハイスピード」というサービス名で展開中です。
※ ※ ※
ゆうパックを運ぶ郵便車といえば「赤」のイメージが強いですが、近年では民間企業への業務委託が行われるようになり、白い軽バンが郵便物の集配や、ゆうパックの配達を行っている姿を見ることも増えてきました。
なお、ゆうパック専門に充てられる車両に関しては郵便局が所有しており、白いワンボックスや2トントラックなどが使用されています。
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諸行無常。