メルセデス・ベンツ日本が、バージョンアップされた最新モデル4台の試乗会を開催した。BEVからハイパフォーマンスモデルまで試乗した試乗記を、真夏の東京からお届けする。(車輛提供:MBJ)
メルセデス・ベンツ EQB350 4MATIC最初に試乗することになったのはBEVモデルのEQB。EQBには250と350があるが、今回は350で四輪駆動の4MATICである。EQAと比べ、7人乗りとなっているのがEQBである。従来モデルからの大きな変更点としては、アプリの向上と、外部への給電が可能となるV2H/V2Lに対応になったことだが、2輪駆動モデルの「EQB 250+」に関してはバッテリー容量が66.5kWhから70.5kWhと大きくなり、これに伴ってWLTCの一充電走行距離が520kmから557kmになっていることなどがあげられる。
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前後にモーターを配置する「EQB 350」は余裕の走りと優れた乗り心地が特徴。今回試乗した「EQB 350」には前に交流誘導電動機が、後ろに交流同期電動機が搭載され215kW/292PS/520NmとAMG並みのトルクを誇る。走り始めて最初に感じたことは、試乗車にはオプションの235/45/R20のピレリP Zeroを履いているにも関わらず、乗り心地がどっしりと良いことだが、これには当然2180kgの車重も貢献していることは間違えない。
BEVの利点の一つはエアコンがキンキンに効くことで、メルセデス・ベンツのエアコンは昔から効きが良いことで有名だが、EQBの灼熱の車内もあっという間に室温は快適になった。走行性能は滑らかで力強く、都内の交通の流れをあっという間にリードすることができる。その反面バッテリーの減りは速く、ちょっと加減速が多かったこともあり99%あったバッテリー容量が20kmほど試乗した後には90% となっていた。
身長170cmのドライバーが乗車した際の2列目のスペースは充分だが、3列目のシートはエマージェンシー用と考えた方がよさそうだ。3列目シートを畳むと大きなラゲッジスペースになる。EQBは7シーターなので荷室にきれいに収納されたサードシートを試そうとアレンジを行ったが、パズルのように難しくスペース自体もミニマムなものだったが、いざというときに7人乗れることはEQAにはない魅力である。
そんな今回の試乗車は8,990,000円の車両本体価格にAMGパッケージ、レザーパッケージ、アドバンスドパッケージ、サンルーフなどのオプションが装備され10,459,000円。
メルセデス・ベンツ EQA 250+二台目に試乗したのはこちらもBEVモデルたる「EQA 250+」。本来ならこちらから試乗するべきだったのかもしれないが、スケジュールの都合で「EQB 350」の後に乗ることになってしまった。今回の大きな変更点はEQBと同じようにアプリの向上と外部への給電が可能となったことに加え、交流誘導発電機だったフロントモーターが交流同期電動機となり、140kW/190PS/385Nmの性能を持つ。またバッテリー容量も66.5kWhから70.5kWhへと大きくなり、従来までの422kmから591kmへとWLTC一充電走行距離が40%も増えたことが大きな進化となっている。
フロントモーターの「EQA 250+」は航続距離が先代よりも40%増えて591kmとなっている。EQBよりも160kgほど軽い2020kgということもあり、乗り始めた感覚は当然のことながら軽い感じはするが、それでも2トンを超えているのだから乗り心地はどっしりとしたもので、決して軽々しいものではない。こちらにもオプション装備となる235/45/R20のピレリP Zeroが装備されていたが、こんな過ぎたタイヤではなく本来の18インチを試してみたかったが、それでも決して荒い乗り心地ではない。
「EQA」のコックピットは基本的に「EQB」と共通である。最初に乗った「EQB 350」よりも102PS(!)も少ないこともあり、あれほどのモリモリした走行感はないが、こちらでも都内においてはパワーは十分以上で、個人的にはこちらで満足な感じがする。EQBとほぼ同じコースを20kmほど試乗した結果、走行前に93%だったバッテリー容量は87%となったが、酷暑の日であったためエアコンをマックスで使用していたし、撮影時も効かせたままだったことなどを考えると納得のいくものと言えよう。
空力デバイスに頼らないボディワークには好感が持てる。今回のEQAは車両本体価格の771万円にAMGパッケージ、アドバンスドパッケージ、AMGレザーパッケージ、サンルーフなどが装備され合計金額が9,046,000円。
メルセデスAMG GT 63 4MATIC+ クーペ3台目に試乗することとなったのは純内燃機関のエンジンを持つメルセデスAMG GT 63 4MATIC+ クーペ。4リッターV8ツインターボエンジンは430kW/585PS/800Nmを生み出し、9速AMGスピードシフトMCTを通して、名前のごとく4輪で駆動力を伝える。さらにAMGアクティブライドサスペンションやリアアクスルステアリングといった電子制御のシステムが組み合わされ、タイヤもフロントが295/30/ZR21、リアが305/30/ZR21となんともすべてが猛々しい。
「メルセデスAMG GT」は「メルセデスAMG SL」のクーペ版ではない!これだけのハイパフォーマンスモデルだし多くのモードなどを都市部の一般路上だけで十分に試すことはできず、その性能の10分の1も発揮できない。とにかくその存在感も含めすべてが場違いなほどの性能ではあるが、エアコンはこちらもしっかり効くし、毎日の使用としても可能に思えるほどあっけなく運転することはできる。そういう意味では間違えなくメルセデス・ベンツのラインナップモデルのひとつであるといえよう。
「One man -One Engine(ワン・マン=ワン・エンジン)」4.0リッターV8ツインターボのパフォーマンスはもちろん、サウンドも素晴らしい!何物にも代えがたいパワーソースだ。しかし都会は言うまでもなく、あらゆる日本の交通下でも、それらしく使うには環境を選ぶ車であることは間違えない。走行モードも装備も、もちろん性能も十分に体験できないままあっという間に試乗時間は終わり、車から降りるとV8ツインターボエンジンのものすごい熱気が身体を包んだ。そんな熱さと暑さに負けない人でなければ乗る資格がないと思えるような、ハイパフォーマンスカーであった。
「メルセデスAMG GT 63 4MATIC+ クーペ」はハイパフォーマンスカーでありながら運転作法は「EQA」と同じで特別なことはない。「メルセデスAMG GT 63 4MATIC+ クーペ」の価格は標準車両価格が2,750万円。試乗車は2シーターであったが、100万円ほどのオプション価格を支払えば4座モデルも選べる。(4座の後席にも座ってみたが、もちろんミニマムで、911と同じくらいのスペースであったが、ちゃんとブルメスターの後席用スピーカーもついていたので、駅まで送ってもらうなどの短時間ならそれなりに使えそうだった)
メルセデス・ベンツ CLE 200 カブリオレ スポーツ4台目の試乗となったのは2リッターのガソリンエンジンにISGが組み合わされた「CLE 200 カブリオレ スポーツ」。幌の屋根を持つ4座オープンで、メルセデス・ベンツには代々こういうモデルが必ず一台はラインナップされている。もちろんFRモデルで9Gトロニックのミッションが組み合わされ、150kW/204PS/320Nmのパワーを持つ。
「CLE 200 カブリオレ」はメルセデス・ベンツ唯一のオープントップモデルだ。空気を乱したりせず、乗員がオープンでも快適に過ごせるように装備されたエアキャップ、エアカーテンなど装備も満載だし、進化した「ハイメルセデス」である、音声認識MBUXを搭載する。さらにルーティン機能もあるそうで、車外の温度が30度を超えたらシートベンチレーションを入れる、登録したエリアに入ったら(空気が汚いなどの理由で)窓を自動的に閉めるといった設定も可能だという。
シルバー×ベージュがCLE カブリオレのエレガントさを強調する。センターのモニターは角度調整が可能。価格も車両本体価格で936万円、各種オプション装備で1,100万円ほどにもなるが、かつて500SECで世の中に陽の目を見た、するすると電動モーターで伸びてくるシートベルトアームからベルトを受け取り、炎天下にも関わらずあえて幌を上げて走り始めた瞬間、その自然で心地よい感覚がうれしくなった。
走行性能も乗り心地も飛びぬけたものは持っていないが、オープンにして気負わず、雲の流れや都会のビル群などを眺めつつ走ると、絶対的な性能だけが自動車の魅力ではないということをあらためて認識する。
ボディ剛性が非常に高い「CLE カブリオレ」。サイドウインドウを上げればエアコンが有効なのでやせ我慢するようなことはない。もともと4座のカブリオレモデルというのは豪奢な雰囲気を持つが、決して飛ばさず、ゆるゆると走るには、これぐらいのパワーユニットで十分である。もちろん昔のメルセデス・ベンツのオープンモデルほどのリッチさや、圧倒的なゆとりのようなものを望んでは無理があるが、普段の買い物や夕方からちょっとした食事に出かけるには好適なサイズといえよう。
あえてわがままを言えば、スポーツという名前も設定もいらないので、もっとラグジュアリーなタイヤとサスペンション設定で、フードにメルセデスのスリーポインテッドスターのマスコットが起立した、高齢者向けのようなバージョンがあったら、これからの人生でこういうクルマにゆるく乗る時間もいいだろうなぁ、と夢想してしまう還暦オヤジであった。どうかメルセデス・ベンツには安全装備満載の、高齢者が安心して乗れる自動車も忘れることなく開発、発売してほしい。
Text:大林晃平Photo:アウトビルトジャパン
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