今回、筆者が新型アルピーヌA110のステアリングホイールを握ったのは、小田原厚木道路の二宮パーキングエリアからだった。初めてマジマジと見る実物は、ものすごくヨカッタ。
写真だと、短躯でキャビンがデカすぎるように思えるけれど、実物はシンプルでありながらクオリティ感があって、オリジナルA110をそっくりそのまま蘇らせたのではない、モダンさがあった。エンジンの位置と搭載方法がリアの縦置きからミドの横置きに変更されたことで生じるはずの違和感もない。それでいて、オリジナルA110の面影をちゃんと残している。
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アルピーヌの復活をルノーが正式に発表したのが2012年。新型A110の量産モデルが正式デビューを飾ったのはそれから4年後のことだった。知識としては知ってはいたけれど、実物を目のあたりにすると、“死んだはずだよお富さん”に、会えたような、あるいは、いないはずのお富さんの娘に会えたような、現実感が薄いような、幻を見ているような、夢であるような、スポーツカーというのは多かれ少なかれ、夢のような存在ではあるけれど、そういう心持ちがした。
ドアを開けると、これまたシンプルな造形ながら、キルティングのように格子状にスティッチの入ったレザーのスポーツシートが贅沢な印象を醸し出していて、とってもヨカッタ。革巻きのステアリングホイールの12時近辺と6時近辺がアルカンターラになっているところもステキで、これらは世界限定1955台、ジャン・レデレがアルピーヌを設立した年にひっかけた数だけつくられるプルミエール・エディションの特徴といってよかった。
そのプルミエール・エディションの日本向けは50台ぽっきり。本年6月22日に発売されるや、1000件の申し込みがあり、競争率20倍の抽選販売となった、ということをこの日の午後、ルノー・ジャポンの広報のひとから聞いた。応募だけでもしておけばよかった……。当たっちゃったら、そのときはそれこそ神の思し召しだ。車両本体価格790万円ぐらい、なんとかなる。と見栄を張ったりして(現在はカタログモデルも発売中)。
センターコンソールの赤いスターターボタンを押すと、新開発の1.8リッター直列4気筒ターボエンジンが瞬時に目覚め、ま、なんていうことなく走り出した。それは長い人生でもなかなか味わうことができないハッピー・タイムの始まりだった。小田原厚木道路はほとんど直線で緩やかな起伏しかない、フツーのクルマだと東京から箱根のSS区間に至るまでのリエゾンみたいなものだけれど、新型A110でのドライブはそうではなかった。
まずもって乗り心地が楽しいからだ。スポーツカーなのに、なんだかウニウニしている。その昔、ハイロドニューマチック・サスペンションのシトロエンGSとかが元気に街を走っていた頃、つとめていた会社の上司だったカバタ(下野康史)さんの言葉を思い起こさせた。
「ハイロドってさ、快適な乗り心地のためじゃないんだよ。あれは楽しい乗り心地のためなんだ。ハイロドのシトロエンに乗ると、『楽しい乗り心地』ってあるんだな、と思うよ」
新型A110はハイドロではなくて、フツーのコイル・スプリングで、可変ダンパーも備えていないけれど、「楽しい乗り心地」という意味ではまさにそれだった。絶対に落ちない軽飛行機で雲の上を飛んでいるような、おっさんひとりで運転しているのに、なんだかウキウキするような、そういう乗り心地なのだった。
オール・アルミ構造によって1100kgという軽量に仕上がった。おかげでバネも柔らかくできたし、可変ダンパーも必要なかった。そもそもの開発目標が、絶対的な俊敏性&ドライビング・プレジャーと日常の快適性との結合だった。というようなことからこの乗り心地は実現された。前205/40、後ろ235/40のともに18インチのミシュラン・パイロット・スポーツ4にしても、比較的穏やかな性格ということで選ばれた。
でもってアクセルを踏み込むと、乾いた野太い排気音が後ろから、そう派手ではなく轟いてきて、ゲトラグ製の7段DCT(ダブル・クラッチ・トランスミッション)がこちらの右足の動きに反応してときおり、ギアを瞬時に上げ下げする。変速のたびにシュポーンというような耳慣れないヘンテコな音がかすかに聞こえてきて、う~む、空耳だろうか、と思ったりもしつつ、そのヘンテコな音はアクセルをオフにすると聞こえてきていて、あ、ターボチャージャーのウェストゲート・バルブだかブローオフバルブだかが発している音だということにようやく気づいた。
山道に入ると、前44:後ろ56というミドシップならではの重量配分と低重心を利して、スイスイ曲がる。その際、穏やかなロールも許す。ステアリングの小さな赤いボタンを押して、「スポーツ」モードに切り替えると、眼前の液晶メーターが赤地に変わり、排気音のボリュームが大きくなって、レスポンスが鋭くなる。なにより新型A110は「やってる気」にさせてくれる。2ペダルの現代のクルマとしては稀有なことだ。
1.8リッター直列4気筒ターボエンジンは最高出力252ps /6000rpm、最大トルクが320Nm/2000rpmもある。それでいて、トルクの発生が唐突ではなくて、ジワーッと出てくる。6750rpmのレッドゾーンまで気持ちよくまわる。オートマチックのシフト・プログラムに任せても、パドルでドライバーが変速しても、シフトダウンの際に入る自動中ぶかしのサウンドといい、エンジン回転の合わせ方のうまさといい、クルマが勝手にやってくれているわけだけど、それをおくびにも出さず、ともかくドライバーをいい気分にさせてくれる。
ヨッ、旦那。うまいッ! その調子ッ!! いいですね~ッ!! とヨイショしてくれる。ドライバーの心理がわかっている。エンタテインメントに徹している。その徹底ぶりときたら、太鼓持ち、なんてことばが浮かぶぐらいだけれど、悪い気がちっともしない。
入力に対するクルマ側の反応の具合が、こちらの予想を上まわってじつにイイのである。フランス人がこんなにスポーツカーづくりが上手だったとは! 老舗がミシュラン3つ星の名店となって復活したことを寿ぎたい。
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