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ドッチもセダンなのになぜ設定? MIRAIがあるのにクラウンセダンにも燃料電池車をラインアップした理由

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ドッチもセダンなのになぜ設定? MIRAIがあるのにクラウンセダンにも燃料電池車をラインアップした理由

 この記事をまとめると

■トヨタ・クラウンは3種類のSUVとセダンをラインアップしている

【試乗】同じ「クラウン」でもまったくキャラが違う! 従来のファンを感動させる「セダン」の乗り味と新しさを感じさせる「スポーツ」

■クラウンセダンにはHEVに加えてFCEVもラインアップされている

■FCEV車のMIRAIとクラウンセダンFCEVの違いを解説

 他社への乗り換えを防ぐためにクラウンにはセダンが必要だった

 クラウンの国内登録台数は、1990年の1カ月平均約1万7300台をピークに下降していた。上級シリーズのクラウンマジェスタを削った影響もあり、2021年の1カ月平均登録台数は約1800台に留まる。1990年の10分の1に激減していた。

 そうなると、以前のマークXやプレミオ&アリオンと同様、クラウンを廃止する方法もあったと思うが、1955年に初代モデルを投入した伝統ある車種だから存続させたい。そこでクラウンのあり方を見直して、4タイプのバリエーションを築くことになった。

 しかも4タイプの内、3種類はSUVだ。いまはこのカテゴリーが世界的に人気を高め、クラウンをSUVにすれば、日本だけでなく海外でも販売しやすい。販売台数も増えて、クラウンを一層存続させやすくなる。

 そして、クラウンシリーズの第1弾はクロスオーバーとした。外観は大径タイヤを装着する存在感の強いSUVだが、ボディタイプは最後部に独立したトランクスペースを備えたセダンだ。クラウンがセダンからSUVに移行することは、ユーザーにとってはショッキングだが、セダンボディのSUVとなるクロスオーバーを最初に投入すれば、従来型からの架け橋になって違和感も生じにくい。

 クロスオーバーの次はショートボディのクラウンスポーツを投入して、2024年3月までに、SUVの本命となる車内の広いクラウンエステートを発売する。

 その一方でセダンも発売した。クラウンのSUVは前輪駆動ベースの4WDを搭載するが、セダンは後輪駆動だ。クラウンは長年にわたって後輪駆動のセダンを中心に発展しており、法人の社用車や自治体の公用車のニーズも根強い。開発者は「パトカーなどの需要もある」と言う。これらの台数は、一般ユーザー向けに比べると少ないが、定期的に乗り替えが行われて需要も安定している。

 またクラウンセダンを廃止して法人ユーザーがたとえば日産スカイラインに乗り替えると、その法人が使うトヨタ・ハイエースまで日産キャラバンに切り替わる可能性が生じる。メーカーの商品企画担当者は「法人のトップが乗る社用車のブランドは、それ以外の社用車選びにも大きな影響を与える」という。

 FCEVのさらなる普及には知名度のあるクラウンがピッタリ

 クラウンセダンの開発では、先代クラウンやカムリをベースにするアイディアもあったが、燃料電池車のMIRAIを基本にした。そのために、パワーユニットも直列4気筒2.5リッターハイブリッドと併せて、燃料電池車が用意されている。

 クラウンセダンの価格は、ハイブリッドは730万円と高めだが、燃料電池車は830万円で100万円の上乗せに抑えた。しかも燃料電池車には経済産業省から136万3000円の補助金が交付される。これを差し引くと、クラウンセダンの燃料電池車はハイブリッドよりも安く手に入るのだ。自治体によっては、経済産業省とは別に補助金を交付するから、燃料電池車はますます安価になる。

 この価格について開発者に尋ねると、「クラウンでは燃料電池車を割安に設定している。積極的に販売していきたい」と返答された。

 この意図は、クラウンの燃料電池車(グレードはZのみ)とMIRAIの価格を比べるとわかる。両車の燃料電池ユニットやプラットフォームは基本的に共通だが、クラウンZは装備をさらに充実させた。MIRAI Z エクゼクティブパッケージ(817万2000円)に、ITSコネクト+ドライブレコーダー+リヤフォグランプをオプション装着した約825万円よりも、さらに多くの装備を採用するからだ。クラウン燃料電池車の価格が830万円であれば、むしろ割安と受け取られる。

 そして、クラウンセダンはホイールベース(前輪と後輪の間隔)が3000mmで、MIRAIを80mm上まわり、後席の足もと空間も広い。身長170cmの大人4名が乗車したとき、後席に座る乗員の膝先空間は、MIRAIは握りコブシふたつ分だが、クラウンセダンはふたつ半に達する。クラウンセダンはMIRAI以上にゆったりと座れる。

 運転感覚も異なり、動力性能はほぼ同等だが、走行安定性はクラウンセダンが優れている。カーブを曲がったり車線を変更する時に、クラウンセダンはMIRAIよりもボディの傾き方が抑えられ、4輪の接地性も優れている。

 以前の燃料電池車は、目新しい特別な技術だったことからMIRAIという専用車に搭載したが、いまの段階ではさらに普及させたい。そのためには、燃料電池車の需要が多い法人や自治体向けのクラウンセダンに搭載すると親和性も高まる。トヨタの燃料電池車は、早くも普及段階に入り、特別感ではなく馴染みやすいクラウンに搭載することになった。

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