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ハードすぎず、クセもなく、質の高い走りを堪能できるルノーのスポーツハッチバック「メガーヌR.S.」

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ハードすぎず、クセもなく、質の高い走りを堪能できるルノーのスポーツハッチバック「メガーヌR.S.」

 スポーツカーと、太く長く付き合うなら、あまりハードすぎず、クセも強すぎないモデルがいい、という考え方もある。実用性も無視できないけれど、一方で走る性能も諦めたくないという欲張りな欲望を満たしてくれそうなのが「メガーヌR.S」だ。

“R.S”モデルはルノーのF1をはじめとするモータースポーツに係わる“R”enault “S”port(ルノー ・スポール)の技術やノウハウ、そしてパッションが注ぎ込まれた1台だ。エンジニアや開発ドライバーらがルノーのスポーツモデルに注ぐセンスやこだわりのような、スペックでは表せない部分にこそ、そのブランドの“らしさ”をパッションとして感じ、楽しまなければもったいない。

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勿体ないという点では、ルノーも動力の電動化を進めている。そんな中「メガーヌR.S.」は内燃機関(エンジン)だけでタイヤを駆動するという点でも貴重な存在だ。一方のハンドリングを司る性能=テクノロジーではハイテクさも併せ持つ。

参考までに「メガーヌ」は、スタンダートモデルの5ドアハッチバックモデルとワゴンタイプのスポーツツアラー、そしてルノー・スポールが開発を手がけた「メガーヌR.S.」さらに現在は販売が行われていないが本格的なサーキット走行も視野に入れたよりパフォーマンス重視の「メガーヌR.S.トロフィー」というモデルがある。

実用性を諦めたくない方々にとって「メガーヌR.S.」は後席やラゲッジのパッケージングにも優れるハッチバックモデルである点はベースモデルと同様。また個人的にはエクステリアデザインはスポ魂ぶり=ハードさが控えめな印象を受け、むしろそれがいいと思ったのだ。デザインの特徴は後ほどお伝えするとして、控えめとはいうものの街中で見かければなんだかタダモノではないオーラを感じ、目を引く。写真のようなビタミンカラーを纏った「メガーヌR.S.」であれば、さらに気分を上げてくれることは間違いない。

 現行型の「メガーヌR.S.」は2018年に登場し、昨年小規模なマイナーチェンジが行われた。その主となるのが、エンジン性能の向上だった。1.8Lターボエンジンである点は変らぬものの「R.S.トロフィー」と同じ最高出力300PS/420Nmの高出力エンジンを搭載し、これに6速EDC(AT)が組み合わされる。

 このエンジンはルノー・スポールカーズとルノー・スポールレーシング、ルノー テクノセンターの中からエンジン開発エキスパートが集められ、特別開発チームによって開発が行なわれたそうだ。電動化が進む中、本気で高性能なガソリンエンジン開発が行なわれているというワケだ。ちなみに以前のモデルのスペックは279PS/390Nm。スペック的には圧倒的な性能アップとは言わないまでも、今回はアクセルレスポンスの向上を主眼に置き、タービンに取り付けられたボールベアリングシステムをスチールからセラミックに変更。これが軽くて硬く、滑らかにターボの応答性を向上させ、走行性能を洗練させていると想像できる走行フィールに実際、ニヤニヤが止まらなかった。

 同時に排気系にも手が加えられ、アクティブバルブ付きスポーツエキゾーストが採用されている。これはドライブモードで“スポーツ”を選ぶとよりアグレッシブなサウンドとなるだけでなく、排気システムが切り替わることでエンジン性能をより引き出すことにも繋がっている。

 デザイン的にはスポ魂ぶりは控えめと言っても、パフォーマンスの高さを漂わせているのは間違いない。スタンダードな「メガーヌ」に対し、前後のフェンダーはフロント60mm/リヤ45mm広げられ、19インチの大径ホイールを履き、フロントバンパーにはF1のようなエアインテークを組み込み(F1ファンなら特にF1ルノー=R.S.モデルという連想がしやすいだろう)、LEDヘッドランプにはチェッカーフラッグ型のデザインが採用されている。

 斜め45度くらいの角度から「メガーヌR.S.」を眺めると、そんなフロントマスクとワイド化した前後のフェンダーを繋ぐサイドシルによって立体感を強めたサイドビューも同時に視界に入り、そのサイドにはF1マシンのアンダートレイをイメージしたブラック仕上げのブレードや大径ホイール&タイヤが一塊のハッチバックに力強さを与えているように見える。ちなみにマイナーチェンジでルーフアンテナがシャークフィン型に変更されている。

 インテリアにも目を向けてみよう。ダッシュボード周辺の造形も含めシンプルな中にスポーティーさが伝わってくる。そんな雰囲気を機能性とともに演出しているのが、軽量化にもこだわったRECARO製のスポーツシート(シートヒーター付き)やレザー貼りのシフトノブ、マイナーチェンジで採用された操作性に配慮したナッパレザー/アルカンターラを組み合わせたステアリングだ。

 スポーツドライビングに配慮したデザインの統一感がシンプルなインテリアの中では映える。ステアリングボトム部のイエローのR.Sマークのさり気ない主張もアクセントになっているし、フロントシートは座り心地は重厚でサポート性に優れており、リヤシートもフラットながら座り心地の良さは感じられる。ちなみに後席用のUSBポート2つが新たに追加されたこともさり気なくも朗報と思う方もきっといるはず。

 直観的に操作したいスイッチを配置する配慮が感じられるセンターパネル。タッチスクリーンで選択や変更を行う方法は他ブランドでもポピュラーであり、少々慣れが必要なのも同様の印象あり。ドライブモードの変更などもここで行なう。ドライビングポジションを合わせ、エンジンをスタートさせると、わずかな振動とエキゾースト音に思わずニヤッとしてしまった。1.8Lターボエンジンの軽快な目覚めを「よし!」と確かめ、シフトレバーを“D”にセットし走り出す。

日常の使い勝手を犠牲にできない派にとって「メガーヌR.S.」の街中の乗り心地はやや硬めながらサスペンションの伸び縮みに不快な余韻を残すタイプではないため、路上の凹凸を通過した際にアタリがやや硬めな印象を抱く程度。ドライブフィールは低~中速のスピード域で加減速を繰り返すだけトルク(=速度)コントロールのし易さが軽快さとともに感じられる。交差点を曲る軽く素直な動きからもスポーツモデルらしい素性は感じられるだろう。

 高速道路では、加速時のエキゾーストサウンドと加速のグラブが並行して右上がりに上昇していくような加速感が味わえるが、こちらもドライバーのアクセルペダルの踏み込み量や速さに応じてゆるやかにスッキリと・・・であったり、期待通りのダッシュ感が頼もしく思えたりと、レスポンスのリニアさの精度もに万能なスポーツカーぶりを実感できるだろう。エンジン開発エキスパートたちが特別に集められ開発されたことは日常のドライブシーンでも動力の扱いやすさは極めてポジティブに働くものだ。乗り心地や静粛性のレベルは走り好きが選ぶドイツ車の常用モデルと同等と言っても言い過ぎではない。マイナーチェンジを行なった「メガーヌR.S.」はエンジン以外、メカニズムに変更はないがもちろんエンジンスペックの向上に合わせ、もっと言えばせっかくマイナーチェンジを行うのだから改めてトータルパフォーマンスは見直されているはずと想像できる。

 そこでワインディングでは、 このモデルが登場した当初からコーナリングマシンぶりに興奮すら覚えたほどだった。マイナーチェンジを行なったモデルは軽快な走りにも磨きがかかったようで、スポーツカー特有のしなやかさも得ているようだった。ひとつのコーナーを普通に曲るだけでも満足度は高い。FFの「メガーヌR.S.」はフロントタイヤで走行ラインを決めそれをタイヤのグリップ感覚とともにドライバーに伝達し、スカッと曲る。その時、リヤタイヤの存在を忘れそうなほどなのに、お尻のほうの安定感は私のお尻に伝えてくれる。リヤタイヤの追従性も抜群だ。

 加えて、さらにステアリングを切り返してまた次の連続するコーナーに向かっても、ひとつ目のコーナーに入るときのような姿勢で“オン・ザ・レール”でクリアしていく。正確なラインで走らせることができるおかげで、よりコンパクトなモデルを走らせているような感覚にすらなった。このモデルはコーナリングスピードの安定した走りと向上だ。セカンダリーダンパーを内容するダンパーが路面から大きな入力を受けてもタイヤのグリップを保ち、サスペンションのよりリニアな制御を可能にし、乗り心地を高めている。

 また「4コントロール」という4輪操舵システムの採用による効果も大きい。FFの「メガーヌ」のリアタイヤを速度やステアリングの回転速度などのアルゴリズムで動かす。基本の設定は60km/h以下でリヤタイヤがフロントタイヤと逆の方向に向くことで回転半径を小さくして曲りやすくすし、それ以上の速度域ではリヤタイヤはフロントタイヤと同一方向に向き、安定性を高める方に働く。

 コーナーでボディがひとまわり小さく感じるほどの走行ラインの意のままぶりはこの制御やサスペンション、そしてエンジンのリニアさ、ブレーキ性能らの協調ぶりの成せる技だ。山岳部の温泉地などへのドライブでもスポーツドライブを意識しないでワインディング走らせる場合、疲れにくく苦手意識も軽減される方に一役買ってくれるだろう。ハード過ぎず、クセのない良質なスポーツモデルである「メガーヌR.S.」は万能だ。

 現在、半導体の問題もあり、納車時期については「かなり待つ」、と関係者は言うが、これは今、多くのブランドが全世界的に生産調整に苦しんでいる状況。優れたハート=エンジン(内燃機関)でエモーショナルなドライビング体験が得られるモデルは今後消えていくだろう。そこにこだわるなら、今のうちに楽しんでおいたほうがいいし、飽きずに長く付き合えそうなバランスを高いレベルで保っているのもこのモデルの魅力だ。この楽しさを知らないのは勿体ない、と本音で思えるモデルだった。

◆関連情報
https://www.renault.jp/car_lineup/megane_rs/

文/飯田裕子(モータージャーナリスト)

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