■日産は「あくまでも将来に向けた純粋なコンセプトカー」だと説明
2023年10月28日より一般公開が始まった「ジャパンモビリティショー2023」で世界初公開された、日産のコンセプトカー「ニッサン ハイパーツアラー」。いかにもコンセプトカーという風貌で現実離れをしているように見えますが、意外とそうではないようです。
次期型エルグランドともウワサされるハイパーツアラーを出展した真意について、日産に聞きました。
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ハイパーツアラーは、3列シートをもつプレミアムミニバンのコンセプトカーです。
日産のデザイン担当者は次のように説明します。
「ハイパーツアラーは、全個体電池などによるテクロジーの進化によって将来のプレミアムミニバンがどうなっていくのか、また完全自動運転とクルマはどうなるのかを具現化したコンセプトカーです」
エクステリアでは、フロントからリアまでを一本のラインで繋いだウエストラインが特徴的です。
面を多用してクルマを大きく見せており、シンプルながらモダンな印象で、実に未来的なデザインとなっています。
ボディサイズは公表されていませんが、明らかに現行のエルグランドよりも全高があり、アルファードやヴェルファイアといった流行のラージミニバンと並んでも、おそらく見劣りすることはないでしょう。
ただ、ハイパーツアラーの最大の魅力はインテリアにあります。
サイドドアは、前後に大きく開く観音開きタイプが採用されており、車内には、宙に浮いたシートが4つ設置されています。
完全自動運転モードでは、1列目を180度回転させることができ、後席乗員と向かい合うことができるレイアウトです。
日産のデザイナーによると、ドライバーを含めた乗員全員が、一緒に旅をしている雰囲気を出したかったと話します。
また移動をより楽しむことができるよう、フロア全体に敷いた液晶パネルには、ナビの地図のほか様々な映像を流すことができるなど、ちょっとした遊びも取り込まれているようです。
東京湾を渡るレインボーブリッジのような大きな橋を渡るとき、道路を透かしてちょっとしたスリルを味わったりするのも面白いかもしれません。
■高級ミニバンが盛り上がったタイミングでの登場は「偶然」ではない!?
インテリア全体からは、和の雰囲気が存分に感じられます。デザイナーは次のように話します。
「センターコンソールは木でつくられており、漆塗りのような艶のあるパーツを使ったことで、床の光を反射させ、間接的にインテリアを照らすように工夫しています。
時間の移ろいや光の移ろいを大切にする、日本の美学を表現しました」
レクサス 新型LMではシャンパンが冷やせるボトルクーラーが備わっていましたが、ハイパーツアラーでは日本の茶器を設置するなど、日産が得意とする「和モダン」の世界がふんだんに盛り込まれています。
ハイパーツアラーは、エネルギー密度が高く薄型化が可能な全固体電池を走行用バッテリーに使用することで、BEVの航続距離を伸ばしながらも、これまでよりも低いフロアを実現したといいます。
後ろ向きになってクルマに乗るとクルマ酔いしないか心配ですが、ドライブトレーンに採用する電動4輪制御技術の「e-4ORCE」を組み合わせることでクルマの揺れを抑制し、クルマ酔いを起こしにくくしていると日産の担当者はいいます。
こうして内外装を見てみると、そこまで非現実的なものでもない気がするから不思議です。
担当者は「次期型エルグランドを示しているものではない」としていましたが、次期エルグランドを考えるデザインチームがここからアイディアを取り込む可能性は大いにあるといえます。
もちろん、実現ができていない技術もあり、このままの姿と性能で登場することは考えにくいですが、ハイパーツアラーで表現したデザインは、いずれ次期エルグランドへと反映されることでしょう。
直近で発売するとすれば、e-POWERとe-4ORCEを組み合わせたハイブリッドラージミニバンとして登場することが現実的ですが、今のところ日産から具体的な発表はありません。
※ ※ ※
トヨタは新型「アルファード/ヴェルファイア」を発売し、レクサスからも「LM」を発表。そしてホンダも今冬に「オデッセイ」を復活させる予定があるなど、国産高級ミニバンの世界がにわかに盛り上がりをみせています。
このタイミングで、元祖「キング・オブ・ミニバン」である日産が長い沈黙を破り、次期エルグランドをイメージさせるハイパーツアラーを出したことは決して偶然とは思えず、むしろ他社へのけん制とも受け取れます。
2024年1月の東京オートサロンで、さらに具体化された次期エルグランドのプロトタイプが登場することを、大いに期待したいところです。
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