多彩なシートアレンジで利便性が大きく変わるが、その操作性能がうまくできないときもある。そこで今回は、誰でも簡単に操作できて、便利さが広がる、シートアレンジがしやすいクルマ厳選3台を紹介。
文/まるも亜希子、写真/HONDA、TOYOTA、SUZUKI
アルヴェル超えの使いやすさ!! ノア/ヴォクシーの3列目は数秒で格納!? シートアレンジが超絶便利なクルマ3選
■シートアレンジは便利だけど写真そのままに再現することは難しい
シートアレンジを行うことで、ロードバイクなどの長いものや、大きいものも載せることができる
クルマを使うシーンには、ゆったりと座りたいときもあれば、荷物をたくさん積みたいときや、停車してリラックスしたいときもあったり、さまざまです。
車種によっては、倒してテーブル代わりに使える機能や、ラゲッジフロアと同じ高さに沈み込む機能などもあり、クルマのシートは座るためだけにあるものではないことがわかります。
自動車メーカーが創意工夫をして実現した多彩なシートアレンジが、そうした幅広い使い方を可能としています。ただ、多くの車種でシートアレンジというのは、見るのとやるのとでは大違い。
「こんなに簡単にできますよ」「こんなことまで可能です」という、うたい文句をうのみにしていると、いざ自分でやってみたら重くて持ち上げられない。
また、レバーが硬くて引きにくい、いちいちヘッドレストを外す手間があって面倒、などなど、購入してから「こんなはずじゃなかった」となる車種もまだまだあるのです。
そこで今回は、誰でも簡単に操作できて、便利さが広がる、シートアレンジがしやすいクルマを3台ピックアップ。これなら後悔しない、開発者の想いが詰まったシートアレンジの数々をご紹介します。
■使いやすさが抜群!! 2023年上半期トップ「ホンダN-BOX」
ホンダN-BOXは、シートアレンジの豊富さや、使いやすさが魅力なクルマだ。2023年上半期で11万2248台を売り上げ、四輪総合でトップにたった
まず1台目は、スーパーハイトワゴン軽の販売台数トップを突き進む不動の人気モデル、ホンダ・N-BOX。
老若男女に好かれるシンプルでフレンドリーなデザインと、ちょうどいい道具感、ホンダらしいパワフルで安定感のある走りなどが魅力的ですが、シートアレンジにも人気の理由はたくさんあります。
グレード構成からすでに、一般的なベンチシート仕様のほかに、助手席が57cmも前後にスライドすることで、ミニバンのように前後のセンターウォークスルーが可能となる「助手席スーパースライドシート」仕様と、ラゲッジに折り畳みのスロープが仕込まれている「スロープ仕様」という3本柱。
自分のライフスタイルに合わせて選べるようになっています。そしてN-BOXの真骨頂は、センタータンクレイアウトというホンダ独自の低床技術を採用し、まずはラゲッジ開口部の地上高がわずか47cm(FF車)という低さを実現。
その低いフロアに、ヘッドレストを外すことなく、片手でレバーを引くだけで簡単にシートのダイブダウン(足元収納)ができるようになっており、ラゲッジスペースとほぼ段差のない空間を手に入れています。
高い天井で横幅も最大112cmという広々空間は、子どもがゴロンと寝転んでも余裕。27インチの自転車を積むこともでき、深夜や雨の日に自転車ごと駅や塾などへ送り迎えするシーンで大活躍しています。
さらに、N-BOXの後席は座面のチップアップ(跳ね上げ)ができるのも特徴的。
子どもが立ったまま着替えをしたり、片側だけチップアップして荷物置き場にしたり、ベビーカーをいちいち畳まずにそのまま積み込むこともできるので、子育て中のファミリーにも大助かりの機能です。
戻すときに、勢いよく下げて手や指を挟まないように気をつける必要はありますが、すべての動作が簡単なので、使いたいときにサッとシートアレンジできるのがN-BOXの美点です。
■3列目シートの跳ね上げ格納が簡単に!! 不満を大改善した「ノア/ヴォクシー」
トヨタノア/ヴォクシーのプラットフォームが進化したことにより、旧型モデルよりも利便性が高まった(2023年上半期5万489台/兄弟車ヴォクシーは4万8669
台)
2台目は、シートアレンジを使うシーンが多いと思われる3列シートミニバンの中から、トヨタ・ノア/ヴォクシー。
7人乗りと8人乗りがあり、久しぶりにプラットフォームが一新され、室内空間や走りが劇的な進化を遂げて登場しました。
7人乗りモデルでは、2列目のキャプテンシートにパッケージオプションでオットマンやシートヒーター、大型テーブルやUSBポートなどが装備され、もはやプチアルファード感覚となる贅沢さが話題に。
でもそうしたゴージャスな魅力ばかりではなく、ノア/ヴォクシーはこれまでのミニバンユーザーの「ここが不満」なポイントをことごとく改善したのが素晴らしいところです。
旧型ノア/ヴォクシーでは、3列目シートの跳ね上げ格納することが重かった。現行型モデルにフルモデルチェンジした以降、楽に格納できるように改良された
その大きな不満が、3列目シートの跳ね上げ格納操作が重くて複雑でやりにくいということ。
従来は、まず背もたれを倒し、左右に折り畳んでから、上にヨイショと持ち上げてフックで壁に固定するという手間が必要でした。
それが新しいノア/ヴォクシーでは、片手でレバーを解除するだけで、ものの数秒で固定までが完了。なんなら両手で左右同時に跳ね上げ格納を完了することさえ可能という優れものです。
しかも、薄型化された3列目シートは格納後の出っ張りが小さく、運転席からの後方視界を邪魔しないという点でも優秀です。
そしてもう1つの不満が、3列目まで乗ってしまうと荷物がぜんぜん積めない問題。
それを解決したのは、ラゲッジ開口部が地上高50cm(FF車)という低いフロアと、フロア下にも深さのあるスーパーラゲージボックスを設定したことでした。
このなかに隠したい荷物や転がりやすい遊具などを詰め込んでもいいし、デッキボードを外せば背の高い荷物を縦に積むこともできて、使い勝手が広がります。
またシートアレンジと合わせて、パワーバッグドアを開くときにもスイッチで好きな角度で止めることができ、狭い場所でも荷物の出し入れがスムーズ。手動のバックドアでも手で押すことで止める機能があるのも親切ですね。
■シンプルで簡単にアレンジできる軽クロスオーバー「ハスラー」
現行型ハスラーのシートアレンジは簡単にできる。ラゲッジボードの下には、ラゲッジアンダーボックスがあり、簡単に取り外しができる。また、防水加工されており、洗うことができる
3台目は、元祖“遊べる軽”として登場して以来、クロスオーバー軽の人気を牽引しているスズキ・ハスラー。
釣りやサーフィン、スキーなどのスポーツから、キャンプなどのアウトドアレジャーまで、アクティブな趣味を持つ人から引っ張りダコなのはもちろんのこと。
2代目となった現行モデルではシートの骨格を広げ、座面を3cm以上拡大し、クッションの厚みもAセグメントのコンパクトカー並みを実現して、ロングドライブでの快適性も手に入れているのが特徴です。
そんなハスラーのシートアレンジは、シンプルで簡単。日常的によく使う後席の前後スライド機能は、ラゲッジ側からもストラップを引いて動かすだけの操作です。
肩口のレバーを引いてパタンと倒せば、完全にフラットで広いラゲッジスペースが出現。5:5分割で別々に倒せるので、3名乗車でも荷物がたっぷり積み込めます。
汚れや傷がつきにくいフロア加工となっているのも、アクティブな使い方に嬉しいところです。
そして、スズキ独自のシートアレンジとしては、助手席がポイント。サーフボードなどの長い荷物を積みたいときには、助手席の座面を引き上げると、そのまま前に倒れて沈み込み、空いたスペースに背もたれが90度倒せるようになっています。
ラゲッジスペースからつながる奥行きのある空間が生まれ、長い荷物がスッと積み込めるようになるのです。
またラゲッジボードの下には、簡単に取り外しができるラゲッジアンダーボックスがあるのもポイント。
防汚タイプで丸ごと洗えるので、汚れたモノを入れておいてもいいし、ラゲッジボードは開けたまま固定でき、ベビーカーを縦に積めるほど深さのあるラゲッジとして使うことも可能です。
使いやすさに加えて、後片付けや掃除がしやすい工夫があるのも、ハスラーのシートアレンジの優秀なところでしょう。
■購入する前にシートアレンジの使いやすさをチェックすると良い
N-BOX、ノア/ヴォクシー、ハスラーそれぞれ、使う人のことをじっくりと考えて、課題を徹底的にクリアしたからこそ生まれた、あると嬉しいシートアレンジ。
どれも、華やかさがあるわけではないので見ただけでは魅力が伝わりにくいものかもしれませんが、使えばその優秀さはしっかり実感できるものです。
どのクルマでも、購入してから後悔しないために、実際に使いやすいかどうかをチェックしてみることをオススメします。
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なぜ両方ともあるの?