NDロードスター、長寿宣言
モデルライフが9年目を迎えるというと「次」が登場してもおかしくないタイミングである。
【画像】改良を受けたマツダ・ロードスター試乗の様子をみる 全101枚
ところが昨今はその「次」の動力源が純エンジンではなかったりするのでややこしい。だからだろうか、とりあえず延命というモデルも少なからずあるように思う。
今回マツダ・ロードスターに込められた改良はまるで長寿の宣言のようにも受け止められるものだった。見た目に大きな違いはないが、実はコストが掛けられ、走りの根幹に関わるような改良も施されていたのである。
マツダは普段からこと細かに改良を行っているが、今回は理由あってのこと。それがサイバーセキュリティー対策である。グローバルモデルに適用されるこのルールは、新型車のみならず2024年以降も継続して販売される既存の車輛も対象となる。
今回の場合、電装系の核となる部分が変更されることもあり、お値段据え置きとはいかない。もちろんADAS(マツダレーダークルーズコントロール)等も追加されることになるが、それだけではロードスターのファンは納得しないはず。ならばこの機会にできることをやってしまえ! ということらしい。
改変の起点はMX-60用を流用した電装系である。その結果として、EPAS(電動パワステ)も変更されており、フィードバックが豊かになることで知られる2ピニオン式のステアリングラックが、ブッシュを介さず直付けされているという。それ以外にも話題盛りだくさんの今回のロードスター改変なのである。
内外装の変更点、よりも重要なものは?
先に挙げた装備以外に、セキュリティ対策に端を発する電装系の刷新によってスマート・ブレーキ・サポート(SBS-RC)も追加されている。これは15km/h以下で後退中に作動可能なブレーキ制御の機能である。
一方見た目の部分にも決して大きくはないが変更が施されている。前後ランプは外枠の形状こそ同じだが、デイタイムランニングランプ等の意匠が変わっている。ホイールも16/17インチともに新デザインになった。ボディカラーは既存の6色に加え、新たにエアログレーメタリックが追加されている。
室内で目を引くのは8.8インチに拡大されたマツダコネクトのディスプレイで、スマホとの連携も強化されているという。またこれまでは樹脂成型のままだったセンターコンソールのパネルにステッチ入りの表皮が張り込まれた点も目新しい。これはタンのような明るい内装色を選んだ場合に特に上質さを感じさせる装備といえるだろう。
だがロードスター・ファンが何より重要視しているのは「人馬一体の走り」に違いないし、開発陣もそこを熟知している。走りの要となる改変ポイントは4つある。
先のEPASに加え、1.5Lエンジンは国内ハイオクに合わせたセッティングで4psの出力アップ。MTモデルのDSC(ダイナミックスタビリティコントロール)にはDSC-TRACKと呼ばれるサーキット・モードが追加される。そして最後が新型LSDの搭載。ニュルで徹底的に煮詰めたという新機構とはどのようなものか?
911と同じ? 減速側強めの新LSD
S以外のMTモデルに標準装備されるLSDはこれまでの円錐クラッチタイプから新開発のアシンメトリックLSDに変更されている。アシンメトリック=非対称というネーミングでも想像がつくように加速側と減速側で異なるロック率を特徴とする。
この手のLSDは珍しくないが、通常は加速側を強め、減速側は回頭性を考えて弱めにセットするのが常識といえる。だがLSDの製作を手掛けるGKNとマツダが共同開発した新型のLSDは減速側のロック率の方が高められているという特徴がある。
これは回頭性こそ高いが減速旋回時にリアが持ち上がって不安定になりやすいというロードスターのハンドリング特性を補完するようなセッティングといえる。このような減速側強めの特殊なLSDセッティングは、例えば空冷時代のポルシェ911が採用していたことでもわかる通り、リアのスタビリティ確保を最優先したものといえる。
試乗前の説明ではニュルブルクリンクでテストしたLSDの効きのデータを見せてもらうことができた。イニシャルトルクをコイルスプリングによって担保する旧型のLSDは急激にパワーが掛かった際に差動制限が甘くなっている領域が多く見受けられたが、新型は全域で効きが安定していたのである。
果たして今回の試乗ステージである箱根のワインディングでも新型LSDの効果は体感できるのだろうか?
後半へ続く。
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