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軽ければいいというものではない! 適材適所が必要なホイールのホントのところ

掲載 更新 79
軽ければいいというものではない! 適材適所が必要なホイールのホントのところ

 なぜホイールは軽いほうがいいと言われるのか? みんなが軽いほうがいいよ……と勧めてくるからと購入した人もいるのではないだろうか。しかし、この重さを気にしないと、実は乗り心地にも大きく影響する大切なアイテムなのだ。

 軽量化すると、どのようなメリット、デメリットがあるのか? また乗り心地を重視したい人は純正同等の重量のホイールを選んだほうがいいのか? 交換する際の適切な選び方のポイントなど、ホイール選びについて、レーシングドライバーであり自動車評論家の松田秀士氏が解説する。

今の時代の三種の神器か!? 必需品ともいえるドライブレコーダーはなぜ標準装備されない!?

文/松田秀士
写真/Adobe Stock(chihana©@Adobe Stock)、HONDA、編集部

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■ホンダZに履かせたアルミホイールの記憶

 最近のクルマ、ほとんどがアルミホイールを履いていますね。理由は軽量化です。

 その昔、筆者が若者だったころの1970年代は鉄チンと呼ばれた鉄ホイールが主流でした。お洒落なモデルだと、そのままでは無骨なデザインなので樹脂製のホイールカバーなるものが付いていました。

 しかし、ファッションの国イタリアなど欧州では、早くからお洒落なデザインのアルミホイールが売られていたのです。クロモドラ、コスミックといったブランドのアルミホイールが輸入されるようになり、国産メーカーも登場しアルミホイールバブルが日本を席巻しました。

 RSワタナベ、ハヤシのストリート(ハヤシレーシング)、SSR(スピードスターレーシング)などが国産代表例です。

 筆者は当時ホンダ『Z』という軽自動車に乗っていたのですが、当時の軽自動車はすべて10インチ。軽自動車用のアルミホイールはまだ普及しておらず、ハヤシレーシングが「FL500」というフォーミュラカー用に開発したレース用のアルミホイール(10インチ)を購入して履かせていました。これにダンロップ「G5」というセミレーシングタイヤ、今でいうSタイヤを組みあわせていました。

1970年に発売されたホンダ『Z』通称「Z360」。また、リアウィンドウの形状から「水中メガネ」という愛称でも呼ばれていた。筆者はこのクルマに当時としては時代を先取りしたアルミホイールを装着していた

 初めてそのホイール&タイヤで走り出した時の感動は今でも覚えています。ステアリングを切り込んだ瞬間にノーズが向きを変え、とにかく軽快でホンダ『Z』がまるでベツモノになったことが衝撃的でした。今思えば、これはバネ下の軽量化が吉と出た典型だったと思います。

 ダンロップ「G5」はラジアルではなくバイアスタイヤだったこともあり、ハヤシのアルミとの組み合わせで相当軽量化ができたのだろうと思うのです。それと乗り心地が悪くなることは覚悟していたのですが、意外にもかえってよくなっていたのです。まぁ、その頃は乗り心地のことはどうでもよくて、ハンドリングのステージが上がったことの喜びでイッパイ! 峠を走り回っていました。

 その後、レーシングドライバーとなり自動車評論家となった今、何も考えず走り回っていた頃の疑問に答えられるようになりました。

■ホイールの軽量化による影響

 まず、どうしてハンドリングがよくなったのか? バネ下の軽量化は軽くなったことでホイールトラベルの動きがよくなったこと、は容易に想像がつきますね。しかし、軽くなったことだけではないのです。

 タイヤ&ホイールは回転しています。付け加えるとディスクローターも回転物です。回転しているので、ここには遠心力が働きます。

 回転円の外側に行くほどに大きく、外側の重量が重いほど大きくなります。コマが回りながら直立から斜めになり、それでも倒れずグラグラしながら回り続けるジャイロ効果をご存知でしょうか? クルマのフロントタイヤはステアリングを切り込むことによって向きを変えます。高速で回転するタイヤ&ホイール&ブレーキローターは、まさに回り続けるコマと同じでジャイロ効果の影響を受けるのです。高速(高回転)になればなるほど大きな影響を受けます。

ホイールの軽量化はハンドリングや動力性能にプラスの効果がある。しかし、乗り心地やロードノイズなどには悪影響を及ぼす場合もある

 つまり、同じタイヤを履くと仮定して、ホイールの軽量化はハンドリングと乗り心地に、高速域でのそれに大きな影響を及ぼすのです。特にハンドリングには影響大で、以前スーパーGTの車両で薄く軽量なブレーキローターをテストしたのですが、驚くほどハンドリングが向上しました。ただ薄すぎて耐久性に疑問があり実戦採用するには至りませんでしたが。

■鉄ホイールにもメリットがある

 さて、本題に戻しましょう。ハンドリング面では軽量化は大きなメリットとなるでしょう。その意味でアルミホイールは大きな意味を持っています。ただし、軽ければです。

 アルミホイールは軽量ゆえ強度が重要です。そこで強度を重視するあまり鉄ホイールよりも重くなるケースが多々あります。これでは本末転倒ですね。

 例えば、スズキ『ハスラー』に採用される鉄ホイールはアルミよりも軽いのです。キチンと専用設計すればアルミよりも軽くて適性なものができるのです。また鉄のしなり方がアルミにはない独自なもので、それがタイヤのグリップ力に影響を及ぼすこともあります。

現行『ハスラー』ではGグレードが鉄チンホイール、Xグレードがアルミホイール標準装備となっている(左は旧型ハスラー。こちらのデザインが鉄チンだ)

 鉄であればそのしなり方のデザインも自由度が高いでしょう。しかし鉄=重い=錆びる、というイメージがあるのか、どのメーカーも開発する様子はありません。

 鉄ホイールを履いたクルマは、意外にロードノイズ的にも静かだったりします。室内静粛性はタイヤやボディの振動周波数を開発時にしっかりと管理した結果生まれるものですが、意外に鉄ホイールを履いたエントリーモデルなどに試乗すると耳障りなロードノイズがカットされていたりします。そのような経験から鉄は静かだ、という印象を持っています。

 実は鉄ホイールはクルマが前面衝突した際に、フロアを後ろにかかる力を鉄ホイールが潰れることで吸収する効果もあるのです。つまり衝突安全性。これがアルミだと硬いので潰れずフロアにそのまま衝撃を伝えます。これによる車体の変形がドアを開かなくしたりするのです。解決策として衝突時にホイール&タイヤが外を向く(トーアウト)ように設計されていたりします。

■ホイール交換する際の適切な選び方

 では、乗り心地(静粛性含む)のことを考慮しながらアルミホイールを交換してカッコよく見せたいならば、どんなホイールがいいのでしょうか?

 アフターのホイールと交換する場合に車体との振動数がどうのこうの、ということが事前にわかるわけがありません。したがって、この部分に関してはギャンブルですね。ただ、しっかりしたアフターメーカーであればOEMで自動車メーカーに納入していたりするので、ある程度のデータを基に設計していることが考えられそれほど心配しなくてもよいと思われます。

 選定する時の目安にしているのが、リム側に重量が集中していないか? ということ。つまり、リム半径の外に向かって重いホイールはジャイロ効果の面から敬遠しています。しっかりしたメーカー品であればリム周りの強度もしっかりしているはずですから、やはり安心の大手メーカー品を選びたいものです。

 それと、乗り心地にはやはりタイヤが重要です。静粛性も含めた音振対策が施されたタイヤも最近多くリリースされるようになってきました。

乗り心地やロードノイズはタイヤによって大きく影響される。タイヤに求める性能と目的をハッキリさせて銘柄を選ぼう

 また、交換後に空気圧を変えて好みのレベルにセットするのもいいと思います。超扁平タイヤでない限り、内圧2.2以上で2.6(車種によっては2.8)ぐらいまでは問題ないでしょう。前後輪を異設定にするのもやってみる価値があります。超扁平タイヤであれば2.4以上で試したいです。

 内圧(空気圧)はタイヤの縦バネにもろに影響するので、サスペンションやボディとの固有振動数との相性とも関係します。 また夏場など、気温が上昇するとタイヤ空気内の湿度に影響し、内圧が上昇します。冬場はこの逆ですね。交換したホイールのメリットを生かすためにも、内圧チェックはこまめに行いましょう。

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みんなのコメント

79件
  • 街乗りメインなら性能だの静粛性だの考えないでルックス一択でしょ
    純正に満足出来ない人が社外品に換えればよい
  • TE37だとリセールバリューがいいから。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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